中東予備費1.1兆円を使用 ガソリン補助の基金を積み増し

政府は2026年10月30日の閣議で、2026年度一般会計の「中東情勢等対応予備費」から約1兆1481億円の使用を決めた[1]。このうち約1兆1459億円は、ガソリンなど燃料油の価格を抑える補助事業の財源にあてる。高市早苗首相が前日の記者会見で、当面のガソリン支援に必要な基金の規模を確保するため予備費の使用を指示しており[2]、それを閣議で正式に決めた形だ。

予備費の使い道、9割超がガソリンなど燃料油の補助

財務省が公表した閣議決定の資料によると、今回の使用額の内訳は次のとおり[1]。

  • 経済産業省所管「燃料油価格激変緩和対策事業」:約1兆1458億6202万円
  • 国土交通省所管「タクシー事業者に対する液化石油ガス価格激変緩和対策事業」:約22億5139万円
  • 合計:約1兆1481億1341万円

燃料油の補助は、石油元売りなどに補助金を出してガソリンや軽油、灯油などの小売価格を抑える仕組みで、国は基金を通じて支出している。タクシーの多くはLPガスを燃料にしているため、別枠で価格対策を講じている。

予備費2.5兆円、残りは7359億円に

中東情勢等対応予備費の予算額は2兆5000億円だ。財務省の資料では、前回までの使用累計が約6160億円で、今回の約1兆1481億円を差し引いた残額は約7359億円となった[1]。今回の決定で、予算額の約7割を使ったことになる。

首相は29日の会見で、燃料油支援の基金への支出額が2022年1月の措置開始以来の累計で約9.6兆円、高市内閣の下で約1.4兆円に達したと説明した[2]。足元の補助単価は1リットルあたり50円を超えて過去最高の水準にあり、税金を「1日あたり100億円を超えるペース」で使っているとも述べている。今回の約1兆1459億円を1日100億円で割ると約115日分にあたる。積み増し分だけで見れば、いまの支出ペースが続いた場合は来年2月ごろまでの分という計算だ。

12月から補助を縮小、出口への道筋

政府は同じ会見で、12月以降、補助の基準となる価格を毎月5円ずつ引き上げていく方針を示した[2]。基準価格が上がれば、その分だけ補助単価は小さくなる。首相は日本のガソリン価格がフランスやドイツの半分以下で、米国も下回る水準だと説明し、「持続可能な制度」への移行を掲げた。縮小の詳しい中身は当サイトの記事「ガソリン補助、12月から毎月5円縮小 電気・ガス支援は前倒し」で伝えている。

一方、電気・ガス料金は冬の需要期に合わせて12月から支援を始め、標準的な家庭で12月から2月までの3か月間に7000円程度の負担を減らすとしている[2]。予備費の残り約7359億円は、こうした対策や今後の情勢の変化に備える財源になる。

予備費頼みの対策、国会の関与が課題に

予備費は、使い道を決めずに予算に計上し、内閣の判断で支出できる仕組みだ。急な情勢の変化に素早く対応できる反面、国会は事後に承諾するだけで、個々の支出を事前に審議できない。1回で1兆円を超える支出が閣議決定だけで決まったことは、この仕組みの重さを示している。

補助単価が50円を超えた状態で毎月5円ずつ基準を上げても、補助がなくなるまでには時間がかかる。原油価格が下がらなければ、残りの予備費だけでは足りず、補正予算で追加の財源を手当てする場面も考えられる。12月以降の価格の動きと、補助単価がどこまで下がるかが、次の財源判断の材料になる。

脚注

  1. 財務省「令和8年度一般会計中東情勢等対応予備費使用(閣議決定)」(2026年10月30日) https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2026/r81030kakugikettei.pdf
  2. 首相官邸「中東情勢を踏まえた『緊急的激変緩和措置』の今後の対応についての高市内閣総理大臣記者会見」(2026年10月29日) https://www.kantei.go.jp/jp/105/statement/2026/1029kaiken.html
おすすめの記事