ガソリン補助、12月から毎月5円縮小 電気・ガス支援は前倒し

高市早苗首相は2026年10月29日、首相官邸で記者会見し、ガソリンなどの燃料油に対する補助について、12月以降、価格を抑える基準となる価格を春先に向けて毎月5円ずつ引き上げていく方針を示した[1]。ガソリン補助の段階的な縮小に踏み出す。一方、冬場の電気・ガス料金の支援は、前の冬より1か月早い12月から始めると表明した。

ガソリン補助の縮小、決まったこと

会見で示された主な内容は次のとおり[1]。

  • 燃料油の補助:12月以降、原油価格の動向を見ながら、基準価格を毎月5円ずつ引き上げることを基本にする
  • 当面の財源:基金の規模を確保するため、「中東情勢等対応予備費」の使用を指示
  • 電気料金の支援:1キロワット時あたり12月1円、1月4.5円、2月4.5円
  • ガス料金:あわせて支援
  • 効果:標準的な家庭で12〜2月の3か月間に、電気・ガスあわせて7000円程度の負担減
  • 灯油:価格の高い輸入灯油への財政措置など、流通を円滑にする対策を強化

3月の電気・ガス支援は、気候やエネルギー価格の動きを見て判断するとした[1]。

補助は1リットル50円超、1日100億円以上

現在の補助は、2026年3月に中東情勢を受けて始めた「緊急的激変緩和措置」で、ガソリンの全国平均小売価格を1リットル170円程度に抑えるよう、それを超える分を補っている[2]。軽油や重油、灯油にも同じ額を出している。

首相は会見で、ガソリンの補助単価が足元で1リットル50円を超え、2022年1月に燃料油の補助を始めて以来の最高水準に達したと説明した[1]。首相によれば、補助に回る国費は1日で100億円を上回る。燃料油支援の基金への支出は、2022年の開始以来の累計で約9.6兆円、高市内閣の発足後だけで約1.4兆円にのぼる。

10月23日に首相が経済産業相に見直しを指示した時点では、10月22日からの補助は1リットル42.8円だった(見直し指示を伝えた記事)。1週間ほどで、補助の額はさらに膨らんだことになる。

基準価格5円上げで、店頭価格はどう動くか

基準価格を毎月5円上げると、補助の額はその分だけ減る。原油価格が今の水準のままで、12月から引き上げが始まると仮定すると、店頭の全国平均価格は170円程度から175円程度、180円程度と、毎月5円前後ずつ上がっていく計算になる。

ただし首相は、引き上げをいつまで続けるか、補助を完全にやめる時期や、価格の上限の目安について問われても「予断をもって申し上げることはいたしません」と述べ、明らかにしなかった[1]。原油価格が上がれば補助の額は再び増えうるため、実際の店頭価格は原油相場に左右される。

首相は縮小の理由として、日本のガソリン価格がフランスやドイツの半分以下で、産油国の米国も下回るなど、国際的に低い水準にあると説明した[1]。財政負担が限界に近いからかと問われると、「そういう判断ではございません」と否定した。

与野党の「出口」論、減税とセットの物価対策

首相は、自民党と日本維新の会の与党に加え、国民民主党や立憲民主党などの野党からも、補助の段階的な見直しや出口戦略を求める意見が出ていたと述べた[1]。10月28日には自民党と維新がそれぞれ、エネルギーや物価高への対策の提言を首相に届けている[3]。

政府は燃料油補助を縮める一方で、年末調整での所得税の負担軽減(納税者1人あたり3万〜6万円)や、来年4月以降の飲食料品の消費税率の引き下げを、切れ目のない物価高対策として位置づける[1]。ガソリンという一部の品目への補助から、所得や食料への支援に重心を移す形だ。

地方と物流への影響をどう抑えるか

車が欠かせない地方の家計や、軽油を大量に使う運送業にとって、毎月5円の値上がりは小さくない。灯油の需要が増える冬に縮小を始めることになり、首相が灯油の流通対策を別に打ち出したのも、寒冷地への配慮とみられる。

補助の縮小は、財政規律の面では前進だが、物価全体を押し上げる方向に働く。日本銀行は10月30日の展望レポートで、政府の燃料油補助などが2026年度の消費者物価の上昇率を押し下げていると指摘した[4]。補助が細るにつれてこの押し下げは小さくなる。毎月の縮小幅を原油価格に応じてどこまで柔軟に変えるのかが、年明け以降の家計負担を左右する。

脚注

  1. 首相官邸「中東情勢を踏まえた『緊急的激変緩和措置』の今後の対応についての高市内閣総理大臣記者会見」(2026年10月29日) https://www.kantei.go.jp/jp/105/statement/2026/1029kaiken.html
  2. 経済産業省 資源エネルギー庁「中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置」 https://nenryo-teigakuhikisage.go.jp/
  3. 首相官邸「新着情報」(2026年10月28日の総理の一日) https://www.kantei.go.jp/jp/news/index.html
  4. 日本銀行「経済・物価情勢の展望(2026年10月)基本的見解」(2026年10月30日) https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2610a.pdf
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