
JR東日本の運賃の上限を引き上げた国の認可について、その取り消しを求める審査請求が出され、国土交通省の運輸審議会が2026年10月8日に審議を始めた[1]。運輸審議会は11月26日に東京・霞が関で公聴会を開き、一般の公述人から意見を聴く[2]。JR東日本の運賃をめぐり、値上げの実施後に改めて意見を聴く場が設けられることになる。
JR東日本の運賃、何が審査請求の対象か
審査請求の対象は、2つの認可処分だ。国交相が2025年8月1日に出した運賃の上限変更の認可と、関東運輸局長が同年9月26日に出した運賃の計算方法などの変更の認可で、個人の請求人がそれぞれの取り消しを求めている[2]。国交相は10月7日付で運輸審議会に諮問した[1]。
審査請求は、行政の処分に不服がある人が、その見直しを行政に求める手続きだ。運輸審議会は国交相の許認可について諮問を受け、各方面の意見を踏まえて答申する常設の機関で、今回は審査請求に対する裁決について審議する[1][2]。
認可された値上げの中身
国交省の2025年8月の発表によると、認可された値上げの概要は次のとおりだ[3]。値上げは2026年3月14日に実施された[4]。
- 全体の改定率:7.1%
- 普通運賃:7.8%。初乗り運賃は幹線で150円から160円に。山手線内などの割安な運賃区分は廃止
- 定期運賃:通勤定期12.0%、通学定期4.9%(幹線・地方交通線の通学定期は据え置き)
- 新幹線の特急料金:据え置き
JR東日本は1987年の会社発足以来、消費税の引き上げに伴う改定を除いて運賃を維持してきた[3]。申請の理由として、新しい生活様式の定着による利用の減少、エネルギー価格や物価の上昇による経費の増加、沿線人口の減少を挙げた[3]。
国交省は、値上げをしない場合、2026〜28年度の鉄道事業の収支率が95.5%と赤字になり、改定後は99.8%になると試算していた[3]。認可には2031年3月末までの期限が付けられ、国交省は改定後3年間の収入と原価、設備投資の実績を確認するとしている[3]。
公聴会の日程と参加方法
運輸審議会の発表によると、公聴会の概要は次のとおりだ[2]。
- 日時:11月26日午前10時30分から
- 会場:中央合同庁舎4号館(東京都千代田区霞が関)
- 公述:一般公述人は10人以内。公述申込書と公述書を10月29日正午必着で提出
- 傍聴:オンライン(Microsoft Teams)で300人以内。10月29日正午までにメールで申し込み
公聴会以外の審議は非公開だが、配付資料と議事概要は答申後に公表される[1]。
公聴会で問われる運賃負担のあり方
運賃の上限認可は、適正な原価に適正な利潤を加えた額を超えないかどうかを審査して行われる[3]。審査請求で問われるのは、その判断が妥当だったかどうかだ。すでに値上げは実施されており、手続きの結論がすぐに運賃を変えるとは限らないが、公聴会は利用者が国の判断に直接意見を述べられる数少ない機会になる。
特に通勤定期の12%の値上げは、通勤費を負担する企業や、定期を自費で買う人の家計に影響している。人口が減る中で鉄道網と安全投資の費用を誰がどれだけ負担するのかという問いは、JR東日本に限らず、全国の鉄道に共通する。公聴会でどのような意見が出るかに注目したい。
脚注
- 国土交通省「東日本旅客鉄道株式会社への旅客運賃上限変更認可に係る審査請求事案について審議を開始します」(2026年10月8日) https://www.mlit.go.jp/report/press/unyu00_hh_000343.html
- 国土交通省 運輸審議会審理室「東日本旅客鉄道株式会社への旅客運賃上限変更認可に係る審査請求事案に関する公聴会の開催概要について」(2026年10月9日) https://www.mlit.go.jp/common/002026386.pdf
- 国土交通省「東日本旅客鉄道株式会社の旅客運賃の上限変更認可について」(2025年8月1日) https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001903042.pdf
- 東日本旅客鉄道「運賃改定の詳細について ~2026年3月14日に運賃改定を実施します~」(2025年10月8日) https://www.jreast.co.jp/press/2025/20251008_ho03.pdf

