
サンマルクホールディングスは9月17日、うどん専門店「麺匠の心つくし つるとんたん」などの事業を取得すると発表した。譲渡元はカトープレジャーグループの完全子会社であるケー・エキスプレス(大阪市)で、対価は128億円。飲食店事業や製麺、ギフト商品の販売事業を、サンマルクHDが新設する子会社が吸収分割の方式で承継する[1]。
16店舗の事業を128億円で取得
承継の対象は、「つるとんたん」などのうどん専門業態の国内直営13店舗と海外フランチャイズ2店舗に、和食業態「日本の旬の味 百膳」の国内直営1店舗を加えた事業で、製麺とギフト商品の販売も含む[1]。対象事業の2026年3月期の売上高は61億3500万円だった[1]。
承継先となる新設子会社「つるとんたん」(仮称)は9月30日に設立し、効力発生日は12月1日を予定している[1]。承継する資産は店舗の棚卸資産や有形固定資産、敷金・保証金などで、帳簿価額は12億1600万円。負債は引き継がない[1]。2027年3月期の連結業績への影響は精査中としている[1]。
サンマルクHDは取得の狙いについて、インバウンド(訪日客)需要や海外展開の本格化を見据えると、和の専門業態の強化が成長に不可欠だと説明している[1]。グループのチェーン運営のノウハウや物件情報網を生かした国内主要都市圏への出店、物流網を使った調達コストの低減、ASEANを含む海外への展開を進める方針だ[1]。
カフェとパスタの会社が「和」を厚くする
サンマルクHDは「ベーカリーレストランサンマルク」「サンマルクカフェ」「鎌倉パスタ」「京都勝牛」「牛かつもと村」を中心に、国内外で871店舗(6月末時点)を展開している[1]。牛カツの業態はあるものの、主力はなお洋風・小麦系の業態に寄っている。今回の取得は、和の専門業態を一段と厚くする試みと言える。
128億円という金額は、売上高の約2.1倍、承継資産の帳簿価額の約10倍にあたる。外食のM&Aで買われているのは店舗数そのものではなく、ブランドと立地、そして価格決定力である。人件費と原材料費の上昇が続く局面で、高い価格帯でも客を集められるブランドの希少性は高い。サンマルクHDも、対象事業のブランド価値や希少性、商品力を維持しながら成長を図るとしている[1]。
インバウンド頼みにしない設計が問われる
買収の説明にはインバウンド需要と海外展開が並ぶ[1]。麺類は訪日客に説明のいらない日本食であり、海外でも受け入れられやすい。既に海外にフランチャイズ2店舗があることも、展開の足がかりになるだろう。
一方で、訪日客需要は為替と国際情勢に左右される振れの大きい収益源である。円安が反転すれば単価は落ち、地政学リスクが高まれば客足そのものが減る。国内の常連客をどこまで維持できるかという、地味だが土台となる部分の設計が、この買収の成否を決めるだろう。
会社分割という形を選んだ点にも意味がある。会社ごと株式を取得するのではなく、事業を切り出して新設子会社に承継させるため、引き継ぐ範囲を選べる。今回も負債は承継しない[1]。譲渡元のケー・エキスプレスは観光や飲食、宿泊、エンターテインメント事業などを手がけており[1]、外食ブランドの一つを手放して他の事業に資源を振り向ける判断をしたと読める。
外食業界では、単一業態の拡大から複数ブランドの組み合わせへと成長の軸が移りつつある。サンマルクHDにとって今回の取得は、これまで手薄だった価格帯と客層を手に入れる試みである。カフェとパスタを主力とする会社が、和の高価格帯をどう運営するのか。統合のうまさが試されるのは、むしろ12月の効力発生以降になる。
脚注
- サンマルクホールディングス「子会社の設立及び株式会社ケー・エキスプレスからの吸収分割による一部事業の承継に関するお知らせ」(2026年9月17日) https://static.saint-marc-hd.com/upload/irnews/384/%E5%AD%90%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E3%81%AE%E8%A8%AD%E7%AB%8B%E5%8F%8A%E3%81%B3%E6%A0%AA%E5%BC%8F%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%82%AD%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E5%90%B8%E5%8F%8E%E5%88%86%E5%89%B2%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E4%B8%80%E9%83%A8%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E3%81%AE%E6%89%BF%E7%B6%99%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B.pdf

