75歳以上の運転技能検査、厳格化へ 「方向変換」追加で合格率は8割程度に

警察庁の有識者検討会は9月3日、75歳以上で一定の違反歴がある人が運転免許の更新時に受ける「運転技能検査」について、内容を厳しくする見直し案をまとめた[1]。

柱は新しい課題「方向変換」の追加だ。ハンドルを切りながら後退していったん止まり、逆方向にハンドルを切って発進する動作で、アクセルとブレーキのペダル操作の正確さを確かめる狙いがある[1]。後方や側方に注意を払いながら、ハンドルとアクセル・ブレーキを同時に操作する必要があり[2]、高齢ドライバーの事故で問題となってきたペダルの踏み間違いを意識した課題である。

採点基準も改める。減点項目に新たに「安全不確認」を加える[1]。一時停止をせずに交差点に進入する「一時不停止(大)」の減点は、20点から40点に引き上げる[1]。

警察庁が7月に4県の受検者147人を対象に行った実証実験では、見直し案の基準で評価した合格率は81.6%で、現行の基準による評価(93.9%)を12.3ポイント下回った[1]。2025年中の検査では受検者の93%が合格しており、見直し後は合格率が80%程度に下がるとみられる[1]。警察庁は報告書を踏まえ、道路交通法施行規則の改正などを進める[1]。

現行の検査の仕組み

運転技能検査は、75歳以上で、過去3年間に信号無視や速度超過、携帯電話使用など11類型のいずれかの違反歴がある人が、免許更新の際に受けなければならない。コースで実際に普通自動車を運転し、100点からの減点方式で採点する。合格基準は第一種免許で70点以上、第二種免許で80点以上である[3]。合格しなければ、免許は更新されない。

きっかけは「合格者の事故は2倍以上」

見直しのきっかけは、警察庁の追跡調査だった。2023年5月15日〜8月31日に検査に合格した5270人と、検査の対象ではなく高齢者講習の実車指導を受けた75歳以上の8233人について、その後の事故を調べた。その結果、合格者10万人当たりの交通事故件数は講習受講者の2倍以上、交通違反件数も約2倍だった[1]。

合格者の事故83件のうち26件は「安全不確認」が原因だった[2]。今回、安全確認の怠りを新たな減点項目に加えたのは、この結果を踏まえたものだ。検討会では、一時不停止を信号無視と同じく直ちに不合格とするべきだという意見も出た[2]。

「落とすための検査」ではなく

ただ、2倍以上という数字の読み方には注意がいる。比較の相手は違反歴のない人たちで、もともと違反を重ねてきた人の事故リスクが高いのは、ある程度は予想できることでもある。そのうえで、検査に合格した人の事故がこれだけ多いという結果は、現行の検査が「危ない運転」を十分に見分けられていないことを示している。検査を厳しくする方向性そのものは妥当だろう。

一方、合格率が1割以上下がれば、免許を失う高齢者は確実に増える。公共交通が乏しい地方では、車が通院や買い物の生命線になっている世帯も多い。検討会は、対象者の拡大や、衝突被害軽減ブレーキなどを備えた車に限って運転を認める「サポカー限定免許」との連携についても、引き続き検討するとしている[2]。

検査の目的は、高齢者から免許を取り上げることではなく、事故を減らすことにある。厳しくした基準が事故の減少につながったのかを、今回と同じように追跡して検証すること。そして、運転を続けられなくなった人の移動手段を地域でどう支えるかを、検査の見直しと並行して考えることが欠かせない。

脚注

  1. 警察庁「運転技能検査の見直しに関する有識者検討会の報告書等について」(広報資料・報告書、2026年9月3日) https://www.npa.go.jp/news/release/2026/20260903_kouhou.pdf
  2. レスポンス「高齢者の運転技能検査を強化、『方向変換』テストを追加へ 警察庁報告書」(2026年9月5日) https://response.jp/article/2026/09/05/416184.html
  3. 警察庁「運転技能検査について」 https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/ginoukensa.html
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