
自民党外国人政策本部の安全保障と土地法制に関するプロジェクトチーム(PT、座長・北村経夫参院議員)は10月1日、高市早苗首相に提言を申し入れた[2]。提言は、実需を伴わないマンションなどの投機的な取引は日本人、外国人を問わず抑制すべきだとして、税制上の措置を含めた対応を求めた[2][3]。
マンション投機の抑制、提言のポイント
提言は、安全保障の観点から土地取得などの新たなルールを整えるため、重要土地等調査法の改正案を来る臨時国会に提出するよう政府に求めた[2]。地下水の採取を把握する制度の新設や、国土利用計画法の全般的な見直しも盛り込んでいる[2]。マンション投機への対応は、外国人政策をめぐる一連の議論の一部として位置づけられている。
注目したいのは、抑制の対象を外国人に限らず、日本人か外国人かを問わないとした点だ。国籍で線を引く規制は、国際的な約束や差別の問題に触れかねない。取引の中身、つまり住むための購入か、値上がりを見込んだ転売目的かに着目する形にしたとみられる。
数字で見る短期転売と海外からの取得
国土交通省は9月15日、不動産登記の情報を使った新築マンションの取引調査の結果を公表した。2018年1月から2025年12月までに登記された三大都市圏と地方4市の新築マンション約57万戸などを分析したものだ[1]。
- 短期売買:購入から1年以内の転売は、東京都を中心に神奈川、大阪、兵庫の一部で割合が高く、中心部ほど高い傾向がある。東京都心6区(千代田、中央、港、新宿、文京、渋谷)では、2024年に購入後1年以内に売却された新築マンションが12.1%にのぼった[1]
- 大規模物件:東京23区の40平方メートル以上の物件では、1棟100戸以上の大規模マンションの短期売買割合が9.0%と、それ以外(2.9%)を大きく上回った[1]
- 海外からの取得:2025年に国外に住所がある人が取得した新築マンションの割合は、東京都で2.5%、東京23区で2.8%、都心6区では5.9%だった。大阪市は5.5%だった[1]
一方で国交省は、都心6区で国外に住所のある人が2億円以上の高額物件を活発に短期売買したり購入したりしている傾向は「特に見られない」ともしている[1]。投機の担い手を外国人だけに求めるのは、データの上でも正確とはいえない。
業界の自主規制では足りないのか
不動産大手が加盟する不動産協会は2025年11月25日、投機目的の短期転売を抑える取り組みを打ち出した[4]。購入や登録できる戸数の上限、契約や登記の名義の厳格化、引き渡しまでの売却活動の禁止を柱とする対策を、会員各社の判断で順次広げる内容だ[4]。一方で協会は、所有権が事業者の手を離れる引き渡し以降の取り組みには限界があるとしている[4]。提言も、業界の取り組みが導入される企業の拡大に期待しつつ、政府が業界任せにしないよう求めた[3]。
自主的なルールには、加盟していない事業者や中古市場には効かないという限界がある。今回の提言が税制に踏み込んだのは、取引そのものを禁じるのではなく、短期で売り抜ける利益を目減りさせることで投機の旨みを減らす狙いがあるとみられる。どの期間の転売を対象にするか、相続や転勤などやむを得ない売却をどう扱うかなど、制度の設計は政府に委ねられる。
価格は下がるのか、残る課題
投機を抑えれば住宅価格が落ち着く、と単純には言えない。不動産協会自身も、価格上昇の主な要因は土地代や建築費といった「原価の高騰」と、供給が減るなかでの実需の強さにあり、投機的な取引の影響は「ごく限定的」との認識を示している[4]。
それでも、住むための住宅が値上がり益を狙う商品として回転し、地域に暮らす人が住めなくなる事態は避けるべきだ。大切なのは、国籍への不安をあおることではなく、実態に基づいて「住む人が買える市場」を取り戻すことだろう。まずは調査で分かってきた事実を土台に、効果と副作用を見極めた制度を示せるかが問われる。
脚注
- 国土交通省「不動産登記情報を活用した新築マンションの取引の調査結果を公表」(2026年9月15日) https://www.mlit.go.jp/report/press/content/002022651.pdf(別紙 https://www.mlit.go.jp/report/press/content/002022647.pdf)
- 自由民主党「外国人政策本部 安全保障と土地法制に関するPTが提言を申し入れ」(2026年10月1日) https://www.jimin.jp/news/policy/214274.html
- 自由民主党「外国人政策本部 安全保障と土地法制に関するPT提言」(2026年10月1日) https://storage.jimin.jp/pdf/news/policy/214274_2.pdf
- 不動産協会「分譲マンションの投機的短期転売問題にかかる取組みについて」(2025年11月25日) https://www.fdk.or.jp/k_etc/pdf/tankitenbai_2511.pdf

