
日米両政府は、日本が米国に最大5500億ドルを投じる「戦略的投資イニシアティブ」の下で、初めての半導体事業を実施することで一致した。経済産業省・財務省・外務省が2026年10月15日に同時発表した[1][2]。米ニューヨーク州に半導体工場を建てる計画で、事業総額は約100億ドル(約1.6兆円)規模、2026年内に着工する予定だ[1]。
日米の投資枠組みで初の半導体案件
経産省によると、日米は米国時間10月14日に合意した。将来、生産設備を増やせば事業規模は約210億ドルまで拡大する可能性がある[1]。作るのは、自動車や産業機械、スマートフォン、AIデータセンターなどに使われる「成熟ノード」と呼ばれる世代の半導体だ[1]。
工場を運営するのは米半導体受託製造大手のグローバルファウンドリーズ(GF)で、同社は同じ日に、ニューヨーク州マルタの自社拠点に2つの工場を新設すると発表した[3]。発表の要点は次のとおり。
- 第1工場:投資額は約100億ドルで、2029年の稼働を見込む。300mmウエハーの年間生産能力を約90万枚分増やす[3]
- 第2工場:さらに約100億ドルを投じれば、同程度の能力を持つ工場を建てる[3]
- 雇用:建設関連などで約2万7000人、製造の専門職で1000人超の雇用を見込む[3]
- 着工:用地の許認可は済んでおり、第1工場は年内に着工する[3]
日本企業はどう関わるのか
経産省は、日本企業が関連設備や部素材を供給することで事業を広げられると説明している。例として、製造装置で東京エレクトロンとSCREENホールディングス、部素材で東京応化工業、製品の購入でルネサス エレクトロニクスが関心を示しているとした[1]。中小企業でも、フジキンや草川精機が装置・部素材の供給に関心を示しているという[1]。
GFの発表には、ルネサスの柴田英利社長が、新工場の生産能力を自社の生産拠点の延長として計画しているとのコメントを寄せた[3]。米アップルも、GFと組んで自社製品向けの半導体を米国で生産しているとしている[3]。
資金と利益はどう配分されるか
戦略的投資イニシアティブは、日米の関税交渉の合意にもとづいて2025年9月に発表された枠組みだ[1]。内閣官房の資料によると、仕組みは次のようになっている[4]。
- 日米で構成する「協議委員会」が案件を協議し、米商務長官が議長を務める「投資委員会」が米大統領に案件を推薦、大統領が選ぶ
- 資金は国際協力銀行(JBIC)の出融資と、日本貿易保険(NEXI)の保証が付いた民間金融機関の融資で賄う
- 事業から得た資金は、日本が出した資金の元利返済分を確保するまで日米で半分ずつ分け、その後は米国90%、日本10%で分ける
つまり日本側にとっては、まず投じた資金を回収できるかが最初の関門になる。工場の稼働は2029年の見込みで、回収にはその後の長い期間がかかる。GFの発表によれば、米商務省はこれとは別の合意で、GFの株式の約4%を取得する[3]。
日本企業の受注と2029年の市況
5500億ドルの枠組みは、これまで個別案件の中身が見えにくかった。初の半導体案件で、運営企業・規模・稼働時期・日本企業の関わり方が具体的に示されたことで、枠組みの実際の運用を確かめる材料ができた。
次に見えてくるべきは、日本企業の「関心」が実際の受注にどこまで結びつくかだ。経産省は装置・素材・製品購入の企業名まで挙げており、米国の工場建設を国内企業の売り上げにつなげたい政府の意図がうかがえる。成熟ノードの半導体は中国勢も生産を増やしている分野で、2029年の稼働時点で採算が取れる市況かどうかも、資金回収の行方を左右しそうだ。
脚注
- 経済産業省「日米政府の『戦略的投資イニシアティブ』において半導体製造プロジェクトを実施します」(2026年10月15日) https://www.meti.go.jp/press/2026/10/20261015001.html
- 外務省「日米政府の『戦略的投資イニシアティブ』における半導体製造プロジェクトの実施」(2026年10月15日) https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/pressit_000001_04299.html
- GlobalFoundries "GlobalFoundries selected to operate two new semiconductor fabs in New York under landmark U.S.-Japan initiative"(2026年10月14日) https://gf.com/news-and-events/news/globalfoundries-selected-to-operate-two-new-semiconductor-fabs-in-new-york-under-landmark-us-japan-initiative/
- 内閣官房「日米政府の戦略的投資イニシアティブの概要」 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/tariff_measures/houmon/pdf/initiative.pdf

