補助金・租特の見直し本格化 賃上げ税制も検証へ

政府は2026年10月9日、租税特別措置・補助金・基金の徹底見直しに関する関係閣僚等及び副大臣会議の第3回会合を首相官邸で開いた[1]。補助金や租特(租税特別措置)の見直しをめぐり、木原官房長官は各府省が概算要求に反映させた自己点検の結果について「決して十分なものではない」と述べ、年末にかけて見直しをさらに深めるよう指示した[1]。

補助金見直し、各府省の自己点検は「第一段階」

見直しは2027年度の予算編成と税制改正の過程で、要求の段階から一貫して進める仕組みだ。片山租税特別措置・補助金見直し担当相が4月に各府省へ自己点検を指示し、各府省は8月末、その結果を反映した予算要求と税制改正要望を出した[2]。

会議に提出された資料には、反映の例が並ぶ。厚生労働省はテレワーク導入を支援する助成金のコースと相談センターの運営を2026年度限りで廃止する。2026年度当初予算で約1.6億円の事業だ[2]。

国土交通省は、都市公園の補助金が一部の人しか使わないスタジアムなどの整備に充てられているとの指摘を受け、補助対象の明確化を検討する[2]。農林水産省は、事業ごとに分かれていた交付金の申請窓口を一本化した[2]。

ただし資料は、こうした要求段階での見直しは「あくまで第一段階」だと明記している[2]。

補助金・基金の「見直しの着眼点」

片山担当相は会議に「基本的な考え方と見直しの着眼点」の案を示した[3]。補助金については、次のような観点で予算要求を精査するとしている[3]。

  • 費用対効果:外部有識者やEBPM(証拠に基づく政策立案)で効果を検証できるか
  • 出口戦略:段階的に融資など金融手法へ移る道筋があるか
  • 官民・国と地方の役割分担:民間が負うべきリスクまで公費に頼っていないか
  • 重複の排除:目的や手段が似た事業が並んでいないか

基金については、金利上昇で資金を寝かせておくコスト(機会費用)が増えている点を挙げ、滞留している資金を国庫に返し、複数年度にわたって支出を約束できる「国庫債務負担行為」への切り替えを検討するとした[3]。作業を進めるため、会議の下に関係府省でつくる「幹事会」も新設する[3]。

中小企業の賃上げ促進税制、効果をめぐり対立

租特では、年末の税制改正に向けて各府省の要望を精査し、特に中小企業向けの賃上げ促進税制や法人税の軽減税率について、政策効果が実際に出ているかを検証するとした[4]。政府税制調査会の専門家会合でも議論が続いており、10月9日には事業承継税制を取り上げ、11月上旬に再び中小企業関係の租特を扱う予定だ[4]。

9月1日の専門家会合では、賃上げ促進税制の効果をめぐって財務省と中小企業庁の見方が分かれた。財務省は約94万社の源泉徴収データを分析し、税額控除が受けられる賃上げ率(1.5%、2.5%)の前後に企業が集まる現象が見られず、税制が賃上げにつながっていないと主張した[4]。中小企業庁は約1200社へのアンケートをもとに、基準の前後で企業数が大きく増えていると反論した[4]。委員からは、大企業向けと同様に中小企業向けも廃止が適当だとの意見が出たという[4]。

背景にある「予算編成改革」

今回の見直しは、7月の「骨太の方針2026」が掲げた予算編成の転換と一体だ。一律に歳出を抑える方式をやめる代わりに、伸ばす歳出と見直す歳出を見極め、租特や補助金の点検で施策の優先順位を洗い直すとしている[2]。2027年度予算では、通常の歳出とは別に危機管理投資・成長投資のための「『強く豊かな日本』投資枠」も設ける[2]。

片山担当相の資料は、補正予算で毎年のように続いてきた補助金・基金について「これを前提とした予算編成と決別」すると書き込んだ[3]。補正予算への依存をやめ、恒常的な施策を当初予算に計上する方針と表裏の関係にある。

削減の総額と賃上げ税制の扱い

投資枠の新設で使う側の予算を厚くする以上、財源の面では見直しの成果を具体的な数字で示す必要がある。現時点で会議の資料に示された廃止例は1億円台の事業が中心で、削減の総額は明らかになっていない。年末までに「幹事会」がどこまで踏み込んだ整理・統合を打ち出せるかが試される。

賃上げ促進税制の扱いは、より政治的な判断になる。財務省の全数データは効果に否定的だが、賃上げを掲げる政権が中小企業向けの優遇を廃止すれば、税負担の増加と受け止められかねない。データに基づく検証を予算や税制に反映するという方針が、実際の改正でどこまで貫かれるかに注目したい。

脚注

  1. 首相官邸「租税特別措置・補助金・基金の徹底見直しに関する関係閣僚等及び副大臣会議」(2026年10月9日) https://www.kantei.go.jp/jp/pages/20261009choukan_hojyokin.html
  2. 内閣官房ほか「自己点検結果の要求・要望への反映状況について」(資料1) https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/sozei/dai3/shiryo1.pdf
  3. 租税特別措置・補助金見直し担当大臣「『補助金・基金の見直し』に向けた基本的な考え方と見直しの着眼点(案)」(資料2、2026年10月9日) https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/sozei/dai3/shiryo2.pdf
  4. 同「租税特別措置の見直しの進め方について」(資料3) https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/sozei/dai3/shiryo3.pdf
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