
政府は2026年10月9日の閣議で、国家公務員の給与改定を8月7日の人事院勧告どおり実施する方針を決定した[1]。国家公務員給与の改定は、月給を平均1万5056円(3.51%)引き上げ、ボーナス(期末・勤勉手当)を年間4.65月分から4.70月分に増やす内容で、月給とボーナスがそろって上がるのは5年連続となる[2][3]。
国家公務員の給与改定、閣議決定の中身
閣議決定は、一般職の国家公務員の給与を人事院勧告どおり改定するとし、勤務時間・休暇についても勧告どおり2027年度に「年次無給休暇」や時間単位の代休制度を新設すると定めた[1]。木原官房長官は談話で、人事院勧告制度は労働基本権が制約されている公務員への代償措置であり、財政や経済社会の情勢を考慮したうえで勧告どおり実施すると判断したと説明している[4]。
人事院がまとめた勧告のポイントによると、主な改定内容は次のとおりだ[3]。
- 月給:民間との差1万5056円(3.51%)を解消。内訳は俸給1万1179円、新設の手当分2376円など。2026年4月にさかのぼって実施
- 俸給表(行政職)の平均改定率は全体で3.3%。中堅層以上の改定幅を昨年より大きくした
- 初任給:一律9500円引き上げ。総合職(大卒)は25万1500円、一般職(高卒)は20万9800円
- ボーナス:年間4.70月分(0.05月分増)。民間の支給割合4.72月分に合わせる
人事院は、定期昇給分のモデル試算を加えると月収ベースで約4.9%の給与改善になるとしている[3]。
転勤の負担軽減と働き方の見直し
今回の勧告の特徴は、転勤への対応に踏み込んだ点にある。単身赴任かどうかを問わず、一定距離以上の転居を伴う転勤をした職員に手当を新設する。支給期間は異動から3年間で、2027年4月から実施する[3]。人事院の例示では、東京から大阪へ転勤した場合の手当は年約22万円(単身赴任者は約49万円)になる[3]。
広域異動手当の支給割合も、60キロ以上300キロ未満で5%から8%へ、300キロ以上で10%から16%へ引き上げる[3]。働き方の面では、取得理由を問わない年7日の無給休暇を設ける[2]。
対象は約28.6万人、地方公務員にも波及
人事院勧告の直接の対象は、給与法が適用される一般職の国家公務員約28.6万人だ[3]。閣議決定は、首相や閣僚など特別職の給与も一般職の改定の趣旨に沿って扱うとしたうえで、国会議員を兼ねる閣僚などが行政庁から受け取る給与は引き続き支給しないとした[1]。
約275.4万人いる地方公務員の給与は、各自治体が地方公務員法の趣旨に沿って判断する[3]。閣議決定は自治体に対し、財政状況や地域の給与事情を踏まえて適切に対応するよう求めた[1]。総務省も同じ日に、自治体あてに給与改定の取り扱いを通知している[5]。実際の改定には給与法の改正が必要で、今後、法案の国会審議に移る[3]。
昨年より1カ月早い決定、背景に人材確保
内閣官房の給与関係閣僚会議の記録を見ると、2025年の勧告の取り扱いは11月11日に決まっていた[6]。今年は臨時国会が召集された10月5日の4日後に決まり、昨年より1カ月ほど早い。
人事院の総裁談話は、地政学的リスクや自然災害など課題が増すなか、公務に優秀な人材を確保することが「急務」だと強調した[2]。総合職試験の申込者は前年より約10%増えたものの、民間との人材獲得競争は続いている[2]。今回の勧告が若手だけでなく中堅層以上にも厚く配分したのは、組織の中核を担う職員の流出を防ぐ狙いがあるとみられる。
財政への負担と次の給与体系
月給3.51%の引き上げは、民間の賃上げの流れを公務に反映させたものだ。一方で、人件費の増加は国と自治体の財政に跳ね返る。特に地方では、勧告どおりの改定に財源が追いつかない自治体も出てくる可能性があり、各地の人事委員会勧告と議会での判断が注目される。
人事院は、本府省の事務次官級から課長級を対象にした新しい給与体系や、転勤関連手当の再編について、2027年夏に具体案を報告するとしている[3]。今回の改定は「待遇の底上げ」だが、次は「職責に見合った処遇」をどう設計するかが問われる。
脚注
- 内閣官房「公務員の給与改定に関する取扱いについて」(2026年10月9日閣議決定) https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kyuyo/pdf/r8_toriatsukaihoshin.pdf
- 人事院「人事院総裁談話」(2026年8月7日) https://www.jinji.go.jp/content/000017809.pdf
- 人事院「本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み」(2026年8月) https://www.jinji.go.jp/content/000017812.pdf
- 首相官邸「内閣官房長官談話」(2026年10月9日) https://www.kantei.go.jp/jp/tyokan/105/20261009danwa.html
- 総務省「地方公務員の給与改定等に関する取扱いについての総務副大臣通知」(2026年10月9日) https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei12_02000168.html
- 内閣官房「給与関係閣僚会議」 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kyuyo/index.html

