
2026年7月、家庭で使う食品の値上げが再び広がっている。帝国データバンクが6月30日に公表した調査によると、7月に価格改定される飲食料品は主要メーカー195社で2566品目に上り、単月で2000品目を超えるのは4月(2838品目)以来3カ月ぶりとなった[^1]。値上げ1回あたりの平均改定率は11%。7月単月としては、大規模な値上げが相次いだ2023年(3595品目)に次ぐ多さで、夏場の家計に重くのしかかる。
何が上がるのか
分野別では、即席めんや缶詰を中心とする「加工食品」が1084品目で最も多く、次いで食パン・菓子パン・総菜パンなどの「パン」が1078品目と続いた。パンは大手メーカーが足並みをそろえる形で一斉に値上げに踏み切った[^1][^3]。
店頭に並ぶ具体的な商品でみると、ヤマザキ製パンの食パン「ロイヤルブレッド」、サンヨー食品の即席カップめん「サッポロ一番カップスター」、伊藤ハムのロースハム、霧島酒造の芋焼酎「黒霧島」など、日常的に手に取る顔ぶれが対象に並ぶ[^2]。パンや即席めん、加工食品は「毎日の買い物かご」に直結するだけに、値上げの体感は品目数の数字以上に大きくなりそうだ。
値上げの「主役」が入れ替わった
今回の局面で見逃せないのは、価格を押し上げている要因が昨年までとは様変わりしている点だ。2025年の値上げは9割超が原材料高で占められ、円安と重なって進行した[^5]。これに対し2026年7月は、原材料高が92.5%と最大要因である一方で、その割合は3月以降むしろ低下傾向にある[^1]。
代わって存在感を増したのが物流費(71.9%)と「包装・資材」(69.8%)だ。とりわけ資材コストは前年同月から10.5ポイントも上昇した[^1]。背景にあるのは中東情勢の悪化である。原油やナフサ(石油化学製品の原料)の価格が上がり、食品トレーやフィルムといった包材のコストが跳ね上がった。中東情勢を直接の要因に挙げた値上げは全体の24.7%に達する[^1]。これまで「中身」である原材料が主役だった値上げに、今年は「容器・包装」という新たな押し上げ役が加わった構図といえる。
追い打ちをかけるのが円安だ。6月30日の外国為替市場では一時1ドル=162円台と、約39年半ぶりの円安水準を付けた[^2]。輸入に依存する原材料やエネルギーの調達コストは一段と膨らむことになる。
「一服」から一転、年末まで続く見通し
帝国データバンクは、8月に1898品目、9月には2026年内で最多となる3029品目の値上げを見込む。9月に単月3000品目を超えれば、2025年10月以来11カ月ぶりだ[^1][^3]。同社は今回の調査で、飲食料品については「今夏以降に広範囲な値上げラッシュが続き、年間の値上げ品目数は2万品目台での着地が想定される」との見通しを示した[^2]。
注目したいのは、2026年が年初こそ前年を大きく下回るペースで推移し、値上げは一服したかにみえていたことだ。それが中東発のコスト高で流れが一変した。物価高への抵抗感が強まり、値上げ後に販売数量が落ちたり、プライベートブランドなど割安な商品へ需要が移ったりする動きは2025年から鮮明になっている[^5]。表示価格を据え置いたまま内容量を減らす「ステルス値上げ」も広がっており[^2]、消費者の「値上げ疲れ」がにじむなかでの再燃といえる。
家計はどう身構えるか
家計にとって、わずかな救いもある。政府は電気・ガス料金の負担軽減策を7〜9月に再開した。電気は低圧で7月・9月使用分が1kWhあたり3.5円、猛暑が予想される8月使用分は4.5円を値引きし、都市ガスも7月・9月が14.0円/㎥、8月が18.0円/㎥を割り引く[^4]。政府の試算では標準的な家庭で3カ月合計5000円程度の軽減が見込まれる[^4]。
ただし、これは光熱費に限った支援であり、食品そのものの値上げを直接和らげるものではない。食料は削りにくい支出だけに、値上げの痛みを光熱費補助で相殺しきれないというのが実情だろう。
値上げが「一時的な波」から「常態」へと移りつつあるなか、消費者にできるのは、まとめ買いや冷凍保存、改定前の買い置きといった地道な工夫の積み重ねだ。とりわけ賞味期限の短いパンは冷凍を活用するなど、値上げのタイミングを意識した買い物が家計防衛の鍵になる。企業側も、価格転嫁と消費者の節約志向のはざまで、内容量やブランド構成の見直しを迫られる展開が続きそうだ。
出典:
[^1]: 帝国データバンク「『食品主要195社』価格改定動向調査 ― 2026年7月」(2026年6月30日発表)。https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260630-neage26y07/
[^2]: nippon.com「7月の食品値上げ2566品目―帝国データの食品195社調査:中東情勢と円安のダブルパンチ」(2026年7月)。https://www.nippon.com/ja/japan-data/h02828/
[^3]: 流通ニュース「帝国データバンク/7月の食品値上げは2566品目、中東情勢によるコスト増響く」(2026年7月)。https://www.ryutsuu.biz/strategy/s070149.html
[^4]: 経済産業省 資源エネルギー庁「電気・ガス料金支援」。事業概要は https://denkigas-gekihenkanwa.go.jp/ 、値引き単価は事業者向けページ https://denkigas-gekihenkanwa.go.jp/business を参照。
[^5]: 帝国データバンク「『食品主要195社』価格改定動向調査 ― 2025年通年/2026年見通し」(2025年12月26日発表)。2025年の値上げ要因および消費者動向について参照。https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251226-neage25y12/
