
民間企業で働く人の平均給与が、また過去最高を更新した。国税庁が2026年9月に公表した2025年分の民間給与実態統計調査によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は487万円で、前年より1.9%増えた。増加は5年連続となる[1]。
平均給与487万円、伸びを支えたのは給料・手当
487万円の内訳は、毎月の給料・手当が412万円(前年比2.2%増)、賞与が75万円(同0.4%増)だった[1]。賞与は2年続けて増えたものの、金額で見れば74.6万円から74.9万円へのわずかな伸びで、平均給与の増加はほぼ給料・手当の上昇によるものだ[1]。
調査の対象となった1年勤続の給与所得者は5163万人。年末時点の民間の給与所得者は6080万人で、民間の事業所が1年間に支払った給与の総額は247兆6479億円と2.6%増えた[1]。この調査は1949年分から毎年行われ、今回で77回目になる[1][2]。
業種で分かれた明暗
業種別の平均給与(千円単位)を見ると、増えた業種と減った業種がはっきり分かれた[1]。
- 電気・ガス・熱供給・水道業:854万4000円(2.6%増)
- 金融業、保険業:725万6000円(3.3%増)
- 情報通信業:681万9000円(3.4%増)
- 建設業:590万3000円(4.4%増)
- 運輸業、郵便業:482万5000円(1.0%減)
- 医療、福祉:424万円(1.2%減)
- 宿泊業、飲食サービス業:275万8000円(1.3%減)
人手不足が深刻とされる運輸、医療・福祉、宿泊・飲食の3業種がいずれも前年を下回った点は見過ごせない。もともと平均が低い業種で給与が伸び悩めば、業種間の差はさらに広がる。
男女と雇用形態の差
男性は597万円(1.7%増)、女性は342万円(2.6%増)、正社員は559万円(2.6%増)、正社員以外は210万円(1.6%増)だった[1]。率でみれば女性の伸びが大きいものの、金額の開きは255万円と依然として大きい。正社員とそれ以外では、正社員の伸び率のほうが高く、差はむしろ開いた。
納税者の割合が8割に
税の面でも変化が出た。1年勤続の給与所得者のうち、源泉徴収で所得税を納めた人は4175万人で、割合は80.9%と前年から7.8ポイント上がった。給与所得者全体の源泉所得税額は13兆1262億円で、17.4%増えた[1]。前年の2024年分は所得税の定額減税が適用されていたため[3]、その反動も大きいとみられる。
物価を差し引くと
同じ2025年の消費者物価指数は、総合で前年比3.2%、生鮮食品を除く総合で3.1%上昇した[4]。平均給与の伸び1.9%はこれを下回り、物価の上昇を差し引いた実質では目減りした計算になる。そのうえ、所得税の負担も前年より重くなっている。
「5年連続で過去最高」という見出しは、賃金がようやく上向いたことを示す一方で、暮らしの手応えとは別の数字でもある。人手が足りない業種ほど給与が伸びていない現状をどう変えるか。賃上げを広げるには、価格転嫁が進みにくい業種や非正規で働く人に、上昇の流れを届ける仕組みが欠かせない。
脚注
- 国税庁「令和7年分民間給与実態統計調査結果について」(2026年9月) https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2026/minkan_2026/pdf/01.pdf
- 国税庁「民間給与実態統計調査」(調査の概要) https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/top.htm
- 国税庁「定額減税特設サイト」(令和6年分所得税の定額減税) https://www.nta.go.jp/users/gensen/teigakugenzei/index.htm
- 総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)平均」(2026年1月23日) https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/nen/index-z.html

