
米連邦準備制度理事会(FRB)は2026年10月14日(米国時間)、全米12地区の連邦準備銀行がまとめた地区連銀経済報告(ベージュブック)を公表した[1]。物価の伸びを「力強い(robust)」と表現した地区は3つで、4地区は前回より物価の上昇ペースが速まったと報告した[1]。原油高の影響は、すべての地区の報告に表れたという[1]。
ベージュブック10月版のポイント
- 景気:「緩やかな(moderate)」拡大が2地区、「小幅な(modest)」拡大が3地区、「わずかな(slight)」拡大が4地区、横ばいが3地区[1]
- 雇用:多くの地区で全体の雇用水準にほとんど変化がなかった[1]
- 物価:「力強い」伸びが3地区、「緩やか」が8地区、「小幅」が1地区。前回より上昇ペースが速まったのは4地区[1]
- 先行き:多くの地区で企業は前向きな見通しを保つが、期待は製造業中心のわずかな成長にとどまる[1]
原油高が全地区に、燃料サーチャージで波及
報告によると、企業は軽油価格の高止まりを挙げ、燃料サーチャージ(燃料費の上乗せ料金)を通じてコストの上昇がサプライチェーン全体に広がっているという[1]。原油以外の商品や関税、保険料による価格の押し上げも複数の地区で指摘された[1]。
消費者向けの企業は、値上げに敏感な客が多く、利益率が圧迫されていると答えた[1]。いくつかの地区の企業は、エネルギーや関税をめぐる不確実さから、既存の契約の更新時などに今後さらに値上げが進むとみている[1]。
消費は高所得層頼み、AIで採用を絞る動きも
消費支出は、多くの地区で全体としてほとんど変化がなかった[1]。半数を超える地区が、消費を支えているのは高所得世帯だと報告した[1]。自動車販売は、報告した6地区のうち5地区で横ばいから小幅な減少だった[1]。
雇用面では、5地区が、AIへの投資で生産性を高めた企業の一部が、自然減による人員削減や採用の先送りをしたり、雇用の伸びが鈍ると見込んだりしていると報告した[1]。専門職や技術職、熟練の技能職の人手不足は続いている[1]。
9月の前回報告との比較
9月2日公表の前回報告と並べると、変化がはっきりする[1][2]。
- 景気:前回は10地区が拡大、2地区が横ばい → 今回は9地区が拡大、3地区が横ばい
- 物価が「力強い」地区:1地区 → 3地区
- 物価の上昇ペースが速まった地区:1地区 → 4地区
景気の広がりはやや鈍る一方、物価の上振れを訴える地区は増えた。景気が伸び悩みながら物価が上がる組み合わせは、金融政策にとって難しい局面を意味する。
10月27〜28日のFOMCへの材料
ベージュブックは、米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合の約2週間前に公表され、政策判断の材料の一つになる。次回のFOMCは10月27〜28日に開かれる[3]。
今回の報告で重いのは、物価の上振れを示す地区が増えたことだ。景気の勢いが弱まるなかで、原油高と関税によるコストの上昇が続けば、FRBは利下げにも利上げにも動きにくくなる。日本にとっても、米国の物価と金利の行方は円相場を通じて輸入物価に響く。FOMCで物価の上振れリスクがどう評価されるかが焦点になる。
脚注
- Federal Reserve Board "Beige Book - October 2026"(2026年10月14日) https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/beigebook202610-summary.htm
- Federal Reserve Board "Beige Book - September 2026"(2026年9月2日) https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/beigebook202608-summary.htm
- Federal Reserve Board "Meeting calendars and information" https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomccalendars.htm

