
富士通は2026年9月16日に開いた投資家向け説明会「IR Day 2026」で、提供する価値を基準に価格を決める「Value Pricing(価値起点のプライシング)」を売上の柱に据える方針を示した。売上に占めるValue Pricingの比率を、2025年度の20%から30年度に60%、35年度には80%へ高める目標を掲げた[1][3]。
富士通がValue Pricingに転じる理由
説明に立った大西俊介執行役員副社長(CRO)の資料は、これまで多くのITサービスが、エンジニアの人数と期間、開発費や工数を積み上げて価格を決めてきたと指摘した。そのやり方では、AI時代に顧客が求める価値や事業成果の経済的な価値を価格に十分反映できない、という問題意識だ[1]。
資料は、顧客がAIに期待する価値を「スピード」「事業貢献」「持続可能性」の3つに整理し、それぞれに見合った値付けが必要だとしている[1]。
成果に連動する課金と、利用量に連動する課金
新しい価格モデルは大きく2つに分かれる[1]。
- 成果連動(Outcome Base):AIの適用で納期が短くなった効果を価値として課金する「エクスプレスサービス」、固定料金と成果KPIに連動する料金の組み合わせ、事前に決めたユースケースごとの課金、一定期間の開発成果量を保証する「Pod型」の契約、共同事業での収益の分配など
- 利用量連動(Usage Base):AIエージェントが扱った業務データの量に応じた課金、ソースコードの量に応じた課金、削減したGPUなど計算資源の量に応じた課金、チケットの販売量に応じた収益分配など
資料には具体例も並ぶ。古いシステムのソースコードから設計書を自動生成するサービスは、対象のコード量に応じた料金体系とし、作業時間を約30分の1に縮めたという。プロ野球の北海道日本ハムファイターズなどに提供するチケット販売基盤では、販売実績に応じて収益を分け合う[1]。価値の評価や価格設計の統制を担う組織として、CRO直下に「AI Pricing CoE」を置いた[1]。
事業ごとの目標と収益への効果
Value Pricingの比率の目標は、事業によって差をつけた。従来型のシステム構築(SI)は30年に30%、35年に40%、古いシステムの刷新(モダナイゼーション)は30年に50%、35年に60%、AIを軸とする事業ブランド「Uvance」は30年に70%、35年に90%とした[1]。富士通は、この転換で粗利益率を数ポイント押し上げられるとみている[1]。
同じ説明会では、高橋美波執行役員副社長(COO)がUvanceの拡大策を説明した。サービスソリューション事業の売上に占めるUvanceの比率は2025年度に30%に達しており[2]、CFOの資料は、Uvanceの売上を25〜30年度に年平均20%超で伸ばし、比率を30年度に50%超へ高める目標を示した[3]。
値付けを変えるのは売り手だけではない
AIが開発の工数そのものを減らしていけば、人数と期間を売る仕組みのままでは、効率化が進むほど売上が減る。富士通の資料も、従来型SIでは値下げの圧力がかかる一方、工期の短縮で案件の回転率を上げて補うと説明している[1]。価値を基準にした値付けは、この矛盾から抜け出すための答えといえる。
ただ、成果や時間短縮に値段を付けるには、発注する側がその価値を測り、合意できなければならない。何人が何カ月働いたかは数えられるが、「AIで工期がどれだけ縮んだか」は、縮まなかった場合と比べて初めて分かる。目標の達成は、富士通の営業力だけでなく、顧客企業がIT投資を事業の成果で評価する体制を持てるかにも左右される。途中経過として、どの価格モデルでどれだけの契約が結ばれたかの開示が待たれる。
脚注
- 富士通「IR Day 2026 テクノロジー・ドリブンビジネスと価値起点のプライシング」(2026年9月16日) https://resources.global.fujitsu/prir/2026/09/2026-IRDay-03-ja.pdf
- 富士通「IR Day 2026 AI Transformationを、Uvanceの次の成長へ」(2026年9月16日) https://resources.global.fujitsu/prir/2026/09/2026-IRDay-04-ja.pdf
- 富士通「IR Day 2026 持続的な企業価値向上に向けて」(2026年9月16日) https://resources.global.fujitsu/prir/2026/09/2026-IRDay-06-ja.pdf

