日立エナジー、米ミシシッピ州に820億円で変圧器工場

日立製作所の子会社でスイスに本社を置く日立エナジーは9月15日(米国時間)、米南部ミシシッピ州に変圧器を製造する新工場を建設すると発表した[1]。投資額は5億2800万ドル(約820億円)で、米国での単独の投資として同社最大となる[1]。米国での製造拡大の投資の総額は、ペンシルベニア、バージニア、テネシー各州の案件を合わせて約15億ドルに達する[1]。

既存工場の2倍超、生産能力も2倍以上に

新工場は同州ギャルマンに建設する。同社がすでに変圧器を生産しているクリスタルスプリングス工場から約6.5マイル(約10キロ)の場所で、敷地は既存工場の2倍を超える[1]。電力網向けの電力用変圧器や配電用変圧器を生産し、現地の生産能力を2倍以上に引き上げる[1]。

今年後半に着工し、2029年に生産を始める予定で、700人以上の新たな雇用を見込む[1]。

AIが押し上げる電力需要

投資の背景にあるのは、急拡大する米国の電力需要だ。日立エナジーは、先端製造業や産業の電化、データセンターなどの拡大で急増する電力需要と、電力網の近代化・拡張への対応を挙げている[1]。データセンターの建設が相次ぎ、電力網の増強が急務になる中で、送配電に欠かせない変圧器は世界的に品薄が続いている。

日立エナジーは発表で、日米両政府が推進する戦略的投資の取り組みを支えるものだと説明した[1]。

日立エナジーのアンドレアス・シーレンベック最高経営責任者(CEO)は、米国での過去最大の投資であり、米国での製造への長期的な関与を示すものだと述べた[1]。日立製作所の徳永俊昭社長も、重要な社会インフラを支える信頼できるパートナーとしての取り組みを一段と強めると語った[1]。

「作れる場所」を押さえる競争

変圧器は受注から納品まで数年かかることも珍しくない。発電所やデータセンターを建てても、電気を届ける設備が足りなければ稼働できない。その意味で、変圧器の生産能力は電力インフラの「ボトルネック」そのものになっている。

日立エナジーが米国内での生産を大きく増やすのは、需要地に近い場所で作ることが、納期でも通商政策の面でも有利に働くからだ。関税や調達規制が強まる米国では、国内で生産していること自体が受注の条件になりやすい。

一方で、生産開始は2029年と、まだ3年先だ。AI向けの投資ブームがその時まで続くのか、電力需要の伸びが想定通りになるのかには不確実性もある。それでも、電力網の更新は景気の波にかかわらず避けて通れない。日立にとってこの投資は、AIブームへの賭けというより、長期的な社会インフラ需要を取り込むための布石といえる。

脚注

  1. Hitachi Energy "Hitachi deepens commitment to U.S. manufacturing with $528 million Mississippi transformer factory"(2026年9月15日) https://www.hitachienergy.com/news-and-events/press-releases/2026/09/hitachi-deepens-commitment-to-u-s-manufacturing-with-528-million-mississippi-transformer-factory
おすすめの記事