
ロシアのウクライナ侵攻後、学校で進む「愛国教育」の実態を内側から記録したドキュメンタリー映画「プーチンの愛国教室」(原題 Mr. Nobody Against Putin)が、10月3日から東京のシアター・イメージフォーラムほか全国で順次公開される[1][6]。今年のアカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を受けた作品だ[1]。
「プーチンの愛国教室」はどんな映画か
舞台は、ロシア・ウラル山脈のふもとにある小さな町カラバシュの学校だ[6]。学校で行事の企画や撮影を担当していたパベル・タランキン氏が、子どもたちの日常をビデオカメラで記録していた。子どもたちから慕われる存在だった同氏のカメラは、2022年2月の侵攻を境に、学校が変わっていく様子を映し出していく[6]。
侵攻後、プーチン政権は子どもたちに祖国への愛と戦争への参加を使命として教え込む教育を学校に求めるようになった。和やかだった学校には、戦時下の緊張が持ち込まれる[6]。作品には、子どもが銃を手にする場面や、手りゅう弾投げのコンテスト、射撃の体験といった学校行事の様子も収められている[2][3]。
- 監督:デビッド・ボレンスタイン、パベル・タランキン[6]
- 製作:2025年、デンマーク・チェコ合作、90分[6]
- 配給:トランスフォーマー[6]
極秘の撮影、国外の監督へ映像を送り続けた
戦争を批判する人が投獄されるロシアで、撮影は極秘のうちに約2年間続けられた[1]。米国人のボレンスタイン監督によると、タランキン氏は映画監督ではなく学校の職員で、当初は登場人物として撮られる側だった。政治的な締めつけが強まるにつれ、同氏自身が撮影を担う場面が増えていったという[4]。
タランキン氏は、学校から撮影を命じられた宣伝用の映像のコピーをひそかに保存し、国外にいたボレンスタイン監督に送り続けた[4]。同氏はその後ロシアを離れ、アカデミー賞の授賞式に出席するなど、各地で発言を続けている[4]。プロパガンダを長く研究してきたボレンスタイン監督と、現場の当事者であるタランキン氏の協力が、作品を形にした。
背景にある学校の「愛国授業」
ロシアでは侵攻から半年あまりたった2022年9月から、学校で週1回、「大切なことについての対話」と呼ばれる愛国教育の授業が導入された[5]。授業では祖国への愛や誇りを育むことが掲げられ、国旗の掲揚や国歌の演奏も行われる[5]。映画は、こうした国の方針が一つの学校の日常にどう入り込んでいったのかを、教室の目線で映している。
見どころと、日本の観客への問いかけ
この作品の力は、遠い国の出来事を、子どもたちの表情という具体的な姿で見せる点にある。国家の方針が変わったとき、学校の現場では何が起き、教師や子どもはそれをどう受け止めるのか。作り込まれた劇映画ではなく、当事者のカメラがとらえた記録だからこそ、その問いは重みを持つ。
教育とプロパガンダの境目は、どこにあるのか。それはロシアだけの問いではない。ロシア国内では9月の下院選で与党が議席を伸ばし(ロシア下院選、与党が349議席 3分の2超す)、プーチン政権の基盤は揺らいでいない。戦争を支える社会がどのようにつくられていくのかを考えるうえで、見ておきたい1本だ。
脚注
- CULA「アカデミー賞受賞『プーチンの愛国教室』10月3日公開決定 ウクライナ侵攻後のロシア学校教育を教師のカメラで記録する衝撃作」(2026年7月6日) https://cula.jp/2026/07/06/putins-patriotic-classroom-release-date/
- 映画ナタリー「ロシアの教育を映す記録映画『プーチンの愛国教室』公開日決定、子供が銃持つ場面写真到着」 https://natalie.mu/eiga/news/679371
- ぴあ映画「『プーチンの愛国教室』手榴弾投げコンテスト、射撃体験…ロシアの学校現場を捉えた新映像」 https://lp.p.pia.jp/article/news/513951/index.html
- WWDJAPAN「ドキュメンタリー映画『プーチンの愛国教室』デヴィッド・ボレンスタイン監督が語る『教育とプロパガンダ』」 https://www.wwdjapan.com/articles/2513835
- Interfax "Weekly patriotic and civil education lessons to be introduced in Russian schools" https://interfax.com/newsroom/top-stories/81842/
- トランスフォーマー「プーチンの愛国教室」作品ページ(配給会社) https://transformer.co.jp/movie/mrnobody

