
米国産の生鮮ジャガイモの輸入解禁をめぐり、手続きが前に進み始めている。農林水産省は8月28日、病害虫のリスク評価の結果を公表し、米国とリスク管理措置を協議する必要がある病害虫として21種を特定した(案)[1]。
2020年の要請から手続きが前進
日本は病害虫のリスクから、米国産ジャガイモの輸入をポテトチップスの加工用に限り、2006年に閉鎖系での管理を条件に解禁していた[1]。米国は2020年、一般流通用としての解禁を改めて要請した[1]。その後、解禁に向けた手続きが加速している[2]。
特定された21種には、コロラドハムシやジャガイモシロシストセンチュウなどが含まれる[1]。農水省は9月18日、関係者向けの説明会をオンラインで開いた[2]。今後は「病害虫リスク管理」の段階に入り、リスク管理措置の策定に必要な資料の収集や現地調査を経て措置の案をまとめ、学識経験者らの意見を聴いたうえで輸入解禁の条件を定める流れになる[1]。
検疫は貿易交渉の道具ではない
この問題の本質は、ジャガイモの値段ではなく、手続きの性格にある。植物検疫は本来、科学的なリスク評価にもとづく制度であり、相手国との力関係で結論が変わってはならない。米国の要請から6年近くを経て手続きが前に進み始めたいま、その原則が守られているかどうかを確かめながら見ていく必要がある。
病害虫の侵入は、関税や補助金と違って後から取り消せない。シロシストセンチュウの例が示すように、いったん土壌に定着すれば、その畑では長期にわたり作付けが制限される。被害は輸入業者ではなく、その土地で作り続ける生産者が負う。リスクの引き受け手と、解禁の利益を得る側が一致していないという非対称がここにある。
解禁そのものを否定する必要はない。検疫措置が十分なら、選択肢が増えることは消費者にとって利益になる。問われているのは、21種それぞれについて、どの措置でどの程度リスクが下がるのかを公開の場で示し、産地が反論できる時間を確保することだ。手続きの速さではなく、透明さで評価されるべき案件である。
脚注
- 農林水産省「米国産一般流通用生鮮ばれいしょ 輸入検疫協議 関連資料」(2026年8月) https://www.maff.go.jp/j/press/syouan/syokubo/attach/pdf/260828_1-1.pdf
- マイナビ農業「米国産生鮮ジャガイモの輸入解禁協議めぐり、明日18日に説明会開催」(2026年9月16日) https://agri.mynavi.jp/2026_09_16_593184/

