定形郵便の上限110円を撤廃 12月から原価で審査

総務省は2026年10月30日、定形郵便物の料金の上限額(110円)を省令から削除する改正省令と、上限額を認可する際の審査基準を公布した[1]。12月1日に改正郵便法が施行された後は、日本郵便が自ら算定した上限額を申請し、総務省が原価に照らして審査する仕組みに変わる。手紙の料金を経営環境に応じて変えやすくする狙いだ。

定形郵便の料金上限、何が変わるのか

これまでは、定形郵便物の料金について、省令が上限額を110円と定めていた[2]。上限を超えて値上げするには、総務省が省令そのものを改める必要があった。

6月に成立した改正郵便法は、この上限の決め方を見直した[1]。施行後は、日本郵便が上限額を算定して総務大臣に認可を申請する。総務省が10月30日に定めた審査基準では、上限額が「能率的な経営の下における適正な原価を償い、かつ、適正な利潤を含む」料金の水準を超えないこと、決められた算定要領に沿って計算されていることを認可の条件にした[3]。

審査は3年間の総括原価方式

総務省の概要資料によると、上限額の算定方法は次のとおり[2]。

  • 郵便の役務全体で収支を見る「総括原価方式」を続ける
  • 原価計算期間は3年間。3年間の収入の合計が総括原価を超えないかを審査する
  • 物流など日本郵便のほかの事業と区分し、郵便事業の分だけを計上する
  • 原価は過去の実績を基に、公的統計で人件費や物価の変動を考慮して算定する
  • 郵便物の減少幅や、会社の効率化策による削減可能額を差し引き、上げ幅を抑える
  • 利潤は、配当や支払利息など資金調達のコストを、事業資産の価値に報酬率をかけて算定する

効率化の削減可能額には、各支社を独立した事業体とみなし、最も効率的な支社を基準にほかの支社の非効率を測る「包絡分析法(DEA)」などの手法を使うことを想定している[2]。算定方法は、総務省が2025年9月から2026年7月まで開いた有識者検討会の議論を踏まえて決めた。

電気料金に近い仕組み、利点と懸念

原価に適正な利潤を上乗せして料金の水準を決める考え方は、電気やガスなど公益事業の料金規制と同じ系統にある。料金の根拠を数式で示すことになるため、これまでのように省令改正の議論の中で上げ幅が決まるよりも、算定の過程が追いやすくなる利点がある。

一方で、郵便物の数は減り続けており、固定費の大きい郵便網を維持する限り、1通あたりの原価は上がりやすい。原価から効率化の分を差し引くとはいえ、仕組みの上では、利用が減るほど上限額を引き上げる理由が積み上がる。総務省の審議会は郵便のユニバーサルサービスの維持策について11月20日まで意見を募集しており、配達の頻度や速さをどこまで保つかの議論も並行している。この点は当サイトの記事郵便の持続策、11月20日まで意見募集 配達水準も論点で伝えている。

最初の申請の時期と、算定の公開度が焦点

12月以降、日本郵便がいつ、どの程度の上限額を申請するかはまだ示されていない。上限額は料金そのものではなく、実際の料金は上限の範囲内で会社が決める。利用者にとっては、上限額を算定した根拠の数字がどこまで公開され、審査の過程で第三者の検証を受けるかが、値上げを受け入れられるかどうかの判断材料になる。

原価の見積もりや報酬率の取り方ひとつで、上限額は大きく変わりうる。仕組みを整えた後の最初の申請と審査が、新しい料金規制の信頼性を左右するだろう。

脚注

  1. 総務省「郵便法施行規則等の一部を改正する省令案等に対する意見募集の結果等」(2026年10月30日) https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu14_02000181.html
  2. 総務省「郵便法施行規則等の一部を改正する省令等の概要」(別添1) https://www.soumu.go.jp/main_content/001098475.pdf
  3. 総務省「郵便法第67条第3項の規定による認可に係る審査基準」(令和8年総務省訓令第49号、別添4) https://www.soumu.go.jp/main_content/001098481.pdf
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