
公正取引委員会(公取委)は2026年10月29日、業務用厨房機器の製造販売を手がけるマルゼン(東京都台東区)に、30日にはボルトなどを製造販売する日工(大阪府八尾市)に、改正前の下請法に基づく勧告を行った[1][2]。両社は下請事業者に支払う代金から一定の割合の金額を差し引いており、合計は約7800万円にのぼる。両社とも差し引いた全額をすでに支払った。
公取委の勧告、2社の違反の中身
公取委の発表による違反の内容は次のとおり[1][2]。
- マルゼン(資本金31億6495万円):業務用厨房機器の製造や修理、運送・設置を委託した下請事業者385人に対し、2025年4月から2026年1月まで、代金に一定率をかけた額を「事務手数料及び金利」の名目で差し引いた。総額6088万8107円
- 日工(資本金3000万円):自社が販売するボルトなどの製造を委託した下請事業者16人に対し、2024年12月から2025年12月まで、自社の利益を確保するため、代金に一定率をかけるなどした額を差し引いた。総額1712万8945円
いずれも、下請事業者に落ち度がないのに代金を減らすことを禁じた規定(改正前の下請法第4条第1項第3号)に違反すると認定された[1][2]。勧告では、今後同じ減額をしないことを取締役会で決議して確認するよう求めた。
1月から「取適法」、旧法の事案も勧告
下請法は改正され、2026年1月から「中小受託取引適正化法(取適法)」に変わった[1]。2025年12月までに結ばれた委託には改正前の下請法が、2026年1月以降の委託には取適法が適用される。今回の2件は主に旧法の時期の取引が対象で、公取委は旧法の規定に基づいて勧告した。
公取委は10月22日にも、段ボール製造の王子コンテナーに対し、印刷用の版を無償で保管させていたとして勧告している[3]。10月に入って、取引の適正化をめぐる勧告が相次いでいる。
「手数料」名目の差し引き、見えにくい減額
マルゼンの事案のように、「事務手数料」や「金利」といった名目で代金から差し引く手法は、取引の慣行として続いてきた例が少なくない。発注側にとっては事務の対価のつもりでも、下請事業者が合意していたとしても、落ち度のない相手から代金を減らすことに変わりはなく、法律は認めていない。385人という対象者の多さは、こうした差し引きが個別の交渉ではなく、取引の仕組みとして組み込まれていたことをうかがわせる。
原材料費や人件費の上昇分を価格に反映させることが課題となるなかで、代金の目減りは中小企業の収益を直接削る。取適法では規制の対象や禁止行為が広がっており、旧来の慣行を見直さないまま新法の時期の取引に持ち込めば、同じ指摘を受けることになる。公取委の摘発が続くなか、発注側の企業には自社の支払いの仕組みを点検し直すことが求められる。
脚注
- 公正取引委員会「株式会社マルゼンに対する勧告について」(2026年10月29日) https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2026/oct/261029_maruzenn.html
- 公正取引委員会「株式会社日工に対する勧告について」(2026年10月30日) https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2026/oct/261030_kinki_toriteki.html
- 公正取引委員会「王子コンテナー株式会社に対する勧告について」(2026年10月22日) https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2026/oct/261022_ojicontainer.html

