
政府は2026年10月23日、2025年度の「エネルギーに関する年次報告」(エネルギー白書2026)を閣議決定した[1]。2月から続くホルムズ海峡の通航難について、白書は4月に中東からの原油調達量が前年同月の約3割まで落ちたものの、備蓄の放出と中東以外からの代替調達で、5月以降の原油処理量は前年並みに戻ったと分析した[2]。量の確保は果たした一方、価格の高止まりと中東依存という課題が残ったことも浮かび上がる。
エネルギー白書2026の要点、量は確保・価格は高止まり
白書によると、ガソリンの全国平均小売価格は、補助がなければ1リットル221.2円まで上がるところを、緊急的な激変緩和措置で170円程度に抑えた[2]。この補助は首相が出口を含めた見直しを指示している(首相、燃料油補助の見直し指示 170円抑制の出口焦点)。内閣府の10月の月例経済報告も、中東情勢への当面の措置として燃料油の激変緩和措置を挙げている[3]。
貿易統計を見ると、量と値段のずれがはっきりする。9月の原油及び粗油の輸入額は前年同月比51.1%増の1兆1102億円だったが、輸入量は3.1%増にとどまった[4]。調達量はほぼ戻っても、1単位あたりの値段が高いままであることを示している。白書も、原油価格は一時事態前の水準に近づいたが、液化天然ガス(LNG)を含めて上昇傾向が続いているとする[2]。
一度下がった中東依存が再上昇
白書は弱点も率直に認めている。日本は2度の石油危機の後、調達先の多角化や省エネを進め、原油の中東依存度を下げてきた。だが近年は、アジアの産油国が経済成長で国内消費を増やして輸出余力が細り、ロシアのウクライナ侵略も重なって、中東依存度が再び高まっていたという[2]。
アジアは欧米に比べ、ホルムズ海峡を経由する原油の輸入が多い。白書によると、フィリピンやタイでは3月以降、燃料価格の上昇などで消費者物価が相対的に大きく上がった[2]。日本は石油危機の時のような節電要請や営業制限には至っておらず、白書は備蓄制度などの積み重ねが効いたと評価している。
2月から10月までの経過
- 2月:米国・イスラエルとイランの攻撃の応酬をきっかけに、ホルムズ海峡の通航が困難に
- 3月11日:高市首相が石油備蓄の放出方針を表明、16日に民間備蓄15日分の放出を開始
- 4月:中東からの原油調達量が前年同月の約3割に
- 5月以降:米国などからの代替調達拡大で、原油処理量は前年並みに
- 6月:戦闘終結の覚書に署名し停戦状態に。ただし海峡の通航隻数は戻っていない
- 10月1日時点:一部で起きた流通の目詰まりや供給の偏りは、9月受付分を除き解消
(いずれも白書の概要資料による[2])
備蓄頼みから調達の分散へ
白書は今後の対策として、化石燃料の調達先の多角化と、エネルギー転換への投資拡大を2本柱とする総合パッケージを掲げた。ホルムズ海峡を通らない代替パイプラインの建設支援、ナフサの利用を前提にした国家備蓄、原油輸送の保険の確保などが含まれる[2]。
備蓄の放出と補助金は、いずれも時間を稼ぐ手段だ。補助の見直しが進めば価格の下支えは細り、取り崩した備蓄は積み戻す必要がある。白書が掲げた調達の分散策が来年度予算でどこまで具体化するかが、次の危機への備えの実効性を左右する。
脚注
- 資源エネルギー庁「令和7年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2026)」(2026年10月23日) https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2026/
- 資源エネルギー庁「エネルギー白書2026について(概要)」(2026年10月) https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2026/pdf/whitepaper2026.pdf
- 内閣府「月例経済報告(令和8年10月)」(2026年10月27日) https://www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei/2026/1027getsurei/main.pdf
- 財務省「令和8年9月分貿易統計(速報)」(2026年10月21日) https://www.customs.go.jp/toukei/shinbun/trade-st/2026/2026094.pdf

