日銀金融システムレポート、AI期待縮小も点検

日本銀行(日銀)は2026年10月23日、金融システムの安定性を半年ごとに点検する「金融システムレポート」の10月号を公表した[1]。日本の金融システムは全体として安定性を維持していると評価した一方、AI関連投資の収益期待が縮んだ場合の影響を想定したストレステストを精緻化し、株価や不動産価格の動向に引き続き注意が必要だとした[1]。

日銀の金融システムレポート、評価の要点

レポートは、原則として2026年9月末までの情報をもとに作成された[1]。分析の対象は、3メガバンクなど大手行10行、地方銀行61行と第二地方銀行34行、日銀の取引先の信用金庫247庫だ[1]。

日銀は、企業の資金需要が増え続け、金融機関も積極的に融資しているとして、金融仲介は円滑に行われていると判断した[1]。そのうえで、日本の金融機関は、リーマン・ショックのような大きな調整に加え、原油高などの地政学リスク、AIの将来性への期待の縮小、金利の大幅上昇が同時に起きるような複合的なストレスにも耐えられる資本と資金調達の基盤を持つとした[1]。

AI関連投資と海外ファンドへの目配り

今回のレポートが重点を置いたのは、AI関連投資を巡るリスクだ。米国を中心に、巨大なクラウド事業者(ハイパースケーラー)がデータセンターへの投資を大きく増やしており、社債などの外部資金や長期リースへの依存も高まっている[1]。自己資金で賄えない部分では、プライベートファンドなど海外のノンバンクが資金の出し手として存在感を増しているという[1]。

日銀は、AIの将来性への期待が縮んだ場合、こうした海外ノンバンクが保有資産を一斉に組み替えることでショックが増幅され、日本にも波及する可能性があるとみる[1]。大手行は、利ざやが厚いことから海外のファンドやデータセンターへの貸出に力を入れている。現時点で海外貸出に占める比率は小さいが、日銀は貸出の質の管理に気を配るよう求めた[1]。こうした状況を想定したストレステストでも、金融システムは安定性を維持できると評価している[1]。

株価と不動産、上振れが続く資産価格

株価は、日銀が金融活動の過熱を点検する「ヒートマップ」で「赤」がつき、トレンドから上振れした状態が続いている[1]。ただし、予想利益に対する株価の倍率(PER)は、おおむね2008年以降の平均並みだという[1]。日本株の上昇は電機や精密、非鉄、機械などAI需要の恩恵を受けやすい業種がけん引しており、AI投資に見合う収益が実現しなければ調整圧力が生じうるとした[1]。

不動産価格は全体として上がっており、とくに首都圏など三大都市圏で値上がりが加速している[1]。建設コストの高騰による供給制約のほか、投資用マンションや海外投資家による商業用不動産の取引も寄与している可能性があるとした[1]。

超長期の住宅ローンと預金の「粘着性」

金利上昇の影響について、企業は実質無借金の企業が増えるなど全体として金利への耐性が高まっていると分析した[1]。家計では、住宅ローンの大部分を占める変動金利型の適用金利が上がっているが、賃金の上昇が返済負担を和らげているとみる[1]。

一方で、物件価格の上昇で借入額が大きくなり、毎月の返済額を抑えるために35年を超える超長期の住宅ローンの利用が増えていると指摘した[1]。返済期間が長いぶん、途中で返済能力が落ちるおそれもあるとして、金融機関に利用者への十分な説明とリスク管理を求めた[1]。

金融機関の収益は、金利上昇もあって本業のもうけを示すコア業務純益の改善が続いている[1]。ただ、円建て債券を多く持つ地域金融機関では評価損が膨らんでいる[1]。預金を増やすために定期預金の金利を高めに設定する地域金融機関もあり、高い金利で集めた預金は他行に移りやすい可能性があると注意を促した[1]。

利上げ局面の「次の弱点」はどこか

日銀は9月に政策金利を1.25%程度へ引き上げた。今回のレポートは、金利が上がる局面でも銀行の収益力はむしろ改善していると示す一方、そのひずみが出やすい場所として、超長期の住宅ローン、高金利で集めた預金、AI関連の海外投融資を挙げた形だ。

いずれもすぐに金融システムを揺るがす規模ではないと日銀は見ているが、どれも金利と資産価格が同時に動いたときに表面化しやすい。次の金融政策決定会合は10月29〜30日に開かれる[2]。追加利上げの議論が進むほど、今回挙げられた弱点の点検はより重い意味を持つことになる。

脚注

  1. 日本銀行「金融システムレポート(2026年10月号)」(2026年10月23日) https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr261023.htm
  2. 日本銀行「金融政策決定会合の運営」(会合日程) https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/index.htm
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