
日銀は9月17〜18日に開いた金融政策決定会合で、政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を1.0%程度から1.25%程度へ引き上げることを決めた[1]。日銀の基準貸付利率(かつての公定歩合)も1.5%に上がる。この水準を上回っていたのは1995年4月までで、政策金利の1.25%は1995年以来、31年ぶりの水準となる[1][2]。
採決は賛成7・反対2
採決は賛成7、反対2だった[1]。日銀の公表文によると、反対したのは浅田委員と佐藤委員である。浅田委員は、生鮮食品を除く消費者物価の上昇率が2%を下回るなか「経済の状況も必ずしも強いとはいえない」として、据え置きを主張した。佐藤委員は、経済・物価情勢が「現時点ではこれまでと比べて大きく加速している状態にあるわけではない」として、「このタイミングでの利上げは適切ではない」と反対した[1]。
利上げは6月会合以来3カ月ぶりで、2024年3月にマイナス金利を解除して以降の利上げ局面では最も短い間隔となった[2]。日銀は公表文で、原油高や円安などを背景に、基調的な物価上昇率が2%の目標を超えて上振れていくリスクがあると説明している[1]。
植田総裁「政策の局面が変化した」
植田和男総裁は18日の記者会見で、基調的な物価上昇率が2%に近づくなか、それを2%程度で安定させる観点が重要になったとして「政策の局面が変化したと考えています」と述べた。0.25%を上回る幅の利上げがあり得るかを問われると、物価情勢次第でいろいろな可能性があるとし、「特定のやり方を排除するということを前もって決めるということはできない」と答えた[7]。
企業物価と消費者物価の開き
判断が割れた背景には、企業の段階と消費者の段階で物価の伸びが大きく異なることがある。日銀が公表した8月の国内企業物価指数は前年同月比7.6%上昇した[6]。一方、9月18日に公表された8月の全国消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合が前年同月比1.7%の上昇で、前月から伸びが縮んだ。電気・ガス料金の支援策が始まり、エネルギー価格が再び下落に転じたことが主な要因である[4]。
つまり、企業のコストは大きく上がっているのに、消費者物価の統計には2%を超える形で表れていない。反対した2人の委員が据え置きを主張した根拠はここにある。一方で日銀が動いたのは、原油と為替という上流の圧力が消費者物価に遅れて波及するリスクを重く見たからだろう。政府のエネルギー関連の対策が指数を抑えている面もあり、統計の数字をそのまま基調と読むのは危うい。
市場の反応は、日銀の意図とは逆方向に出た面がある。利上げ決定後、円相場は1ドル157円台まで円安に傾き、日経平均株価は前日比882円高の6万5018円で引けた[3]。利上げ自体は織り込み済みだったうえ、反対票がいずれも据え置きを求める側から出たことや、次の利上げ時期が示されなかったことで、利上げペースの加速観測が後退したと受け止められた[3]。物価の上振れを抑えるために利上げをしたのに、円安が進んで輸入物価の押し上げ要因が残るという皮肉な結果になった。
米国では9月15〜16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)が政策金利の誘導目標を3.75〜4.00%に引き上げ、約3年ぶりの利上げに踏み切っており[5]、日米で同時に金利が上がる局面に入っている。内外の金利差がどう動くかは、為替を通じて日本の物価に直結する。植田総裁が連続利上げを排除しなかったのは、この環境で日銀の姿勢が甘いと見られることを避ける必要があったからだと考えられる。次回会合までの為替と原油の動きが、次の判断材料になる。
脚注
- 日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026年9月18日) https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2026/k260918a.pdf
- 日本銀行「基準割引率および基準貸付利率(従来「公定歩合」として掲載されていたもの)の推移」 https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/discount/discount.htm
- OANDA証券「日銀は0.25%利上げで1.25%へ、賛成7・反対2 『政策の局面は変化した』植田総裁会見の要点」 https://www.oanda.jp/lab-education/market_news/boj-2026-sep-review/
- 大和総研「2026年8月全国消費者物価」(2026年9月18日) https://www.dir.co.jp/report/research/economics/japan/20260918_026079.html
- 米連邦準備制度理事会(FRB)「Federal Reserve issues FOMC statement」(2026年9月16日) https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20260916a.htm
- 日本銀行「企業物価指数(2026年8月速報)」 https://www.boj.or.jp/statistics/pi/cgpi_release/cgpi2608.pdf
- 日本銀行「総裁定例記者会見(9月18日)」(会見要旨) https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2026/kk260924a.pdf

