
日中関係の改善を探る日本国際貿易促進協会(国貿促)の会長として中国を訪れた岩屋毅前外相が9月28日、北京で中国外交を統括する王毅・共産党政治局員(党中央外事工作委員会弁公室主任)と会談した[1]。中国外務省の発表によると、王氏は日中関係が再び厳しい局面にあるとの認識を示し、台湾問題をめぐる日本の指導者の言行を早く正すよう求めた[1]。
岩屋前外相と王毅氏の会談、何が語られたか
発表によると、王氏は国貿促を日中友好に取り組んできた民間団体と位置づけ、前会長の河野洋平元衆院議長を、日本の過去の歴史に向き合った政治家だと評価した。そのうえで、来年の日中国交正常化55周年を前に、日本側に求めることとして、台湾問題での指導者の誤った言行の是正、歴史問題での正しい態度、中国に対する客観的で理性的な認識の三つを挙げた[1]。
岩屋氏は、日中関係の現状は憂慮すべきだと述べ、河野前会長の遺志を継いで、両国関係を日中間の四つの政治文書の原点に立ち返らせるよう努めると応じた。日本は過去の教訓を忘れず、平和的発展の道を歩み続けるべきだとも述べたという[1]。いずれも中国側の発表で、会談の全容を示したものとは限らない。
国貿促は日中の経済交流を担ってきた団体で、2025年6月3日には、当時会長だった河野氏が率いる訪中団が北京の人民大会堂で李強首相と会談している[2]。今回は、河野氏の後を継いで会長となった岩屋氏による訪中となる[1]。
台湾有事答弁から続く日中関係の冷え込み
日中関係が悪化したきっかけは、2025年11月7日の衆院予算委員会での高市早苗首相の答弁だった。首相は台湾をめぐる事態について、武力の行使を伴うものであれば「存立危機事態になり得るケースである」との認識を示した[3]。中国は強く反発し、中国外務省は11月15日、日本の指導者による台湾をめぐる発言で人的交流の雰囲気が悪化したなどとして、自国民に当面日本への渡航を避けるよう呼びかけた[4]。
その後も緊張は続いている。中国商務省は2026年6月29日、防衛省防衛研究所など日本の20の団体や企業を輸出管制の管理リストに加え、軍事にも民生にも使える品目(両用品目)の輸出を禁じると発表した[5]。
民間の往来は糸口になるか
政府どうしの対話が細るなかで、経済界や議員外交の往来は、関係をつなぎ止める数少ない回路になる。岩屋氏は石破茂前政権で外相を務め、中国との対話を重視する姿勢で知られてきた。前回の訪中団が李強首相と会談したのに対し、今回中国外務省が発表したのは王毅氏との会談で、その内容も日本側への要求が前面に出ている。関係改善の条件として、中国が日本政府の対応を求めていることがうかがえる。
日本企業にとって、中国は今も最大級の貿易相手である。輸出規制や交流の停止が長引けば、個々の企業の努力では越えられない壁が積み上がる。一方で、民間の訪問だけで政治の対立がほどけるわけではない。訪中団が持ち帰る感触を、政府が関係改善の具体的な手立てにどうつなげるかが問われることになる。
脚注
- 中国外交部「王毅会見日本国際貿易促進協会会長岩屋毅」(2026年9月28日、中国語) https://www.mfa.gov.cn/wjbzhd/202609/t20260928_12032785.shtml
- 中国政府網「李強会見河野洋平率領的日本国際貿易促進協会訪華団」(2025年6月3日) https://www.gov.cn/yaowen/liebiao/202506/content_7026326.htm
- 衆議院「第219回国会 予算委員会 第2号」会議録(2025年11月7日) https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/001821920251107002.htm
- 中国外交部「提醒中国公民近期避免前往日本」(2025年11月15日) https://www.mfa.gov.cn/wjbzwfwpt/kzx/tzgg/202511/t20251115_11753921.html
- 中国商務部「商務部公告2026年第27号 公布将20家日本実体列入出口管制管控名単」(2026年6月29日) https://www.mofcom.gov.cn/zwgk/zcfb/art/2026/art_df87be1437044874a35f85cf6e076f3d.html

