
預金や株式などをデジタル化し、ブロックチェーン(分散型台帳)の上で決済や売買を行う「オンチェーン金融」の実現に向けて、銀行などが参加する一般社団法人「デジタル通貨イノベーション機構」(DCIO)が9月25日に記者会見を開き、10月1日から本格的に活動を始めると発表した[1]。預金をデジタル化した「トークン化預金」を軸に、共通のルールづくりや標準化、政策提言に取り組む[2]。
オンチェーン金融をめざす新団体、顔ぶれは
DCIOは、2020年に発足した「デジタル通貨フォーラム」を発展的に改組した団体で、2026年7月1日に法人として設立された[2]。フォーラムには2026年3月末時点で約130の企業・団体が参加しており、新しい機構にはすでに40社以上が入会を決めたか、検討しているという[2][3]。
役員には金融行政や日銀の出身者が並ぶ[2]。
- 代表理事:勝栄二郎氏(元財務事務次官、弁護士)
- 副代表理事:山岡浩巳氏(元日本銀行決済機構局長)
- エグゼクティブアドバイザー:黒田東彦氏(前日本銀行総裁)
- 特別顧問:雨宮正佳氏(前日本銀行副総裁)、亀澤宏規氏(三菱UFJフィナンシャル・グループ取締役執行役会長)
理事には、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほフィナンシャルグループ、ゆうちょ銀行、SBI新生銀行、GMOあおぞらネット銀行から1人ずつが就いた[2]。今後、地方銀行や金融インフラを担うIT企業からも理事を迎える予定だ[2]。
軸は「トークン化預金」
機構は「銀行部会」「技術部会」「ユーザー部会」の3つの部会を設ける[3]。デジタル通貨や決済のインフラについて調べ、共通のガイドやルールをつくり、国際的な標準づくりにも加わる。物の流れや商取引、行政の手続きとお金の流れをつなぐ仕組みを整えることも掲げている[2]。
中心に据えるトークン化預金は、銀行が預金をブロックチェーン上のデジタルな形で発行するものだ。NADA NEWSによると、山岡氏は、本人確認やマネーロンダリング(資金洗浄)対策で銀行の知見を生かせる点や、企業間の大口の決済にも金額の上限なく対応できる点を特徴に挙げた[3]。ディーカレットDCPが手がけるトークン化預金の基盤「DCJPY」では、ゆうちょ銀行が2026年度中の発行を予定しているという[3]。
政府も後押し、問われる「つなぐ力」
オンチェーン金融は、政府も推進を掲げるテーマだ。自民党のプロジェクトチームは5月に構想の提言をまとめ[4]、政府は今年の「骨太の方針」に推進を盛り込んだ。想定されているのは、トークン化預金やステーブルコインによる支払いを、受発注や物流のデータとプログラムで自動的に連動させる仕組みである[5]。
たとえば、商品が届いたことが記録されると同時に代金が支払われるようになれば、企業の請求や入金確認の手間は大きく減る。証券の売買と代金の受け渡しを同時に済ませることも可能になる。
ただ、こうした効果は、多くの銀行や企業が同じルールの上でつながって初めて生まれる。銀行ごとに仕組みがばらばらでは、デジタル化しても使える範囲は限られる。メガバンクから地域の金融機関、利用する企業までを一つの枠組みに集め、互いにつながる仕組みを整えられるかどうか。新しい機構の役割は、まさにそこにある。技術の実験から実際の社会での利用へと進められるかが、今後の焦点となる。
脚注
- マイナビニュース「デジタル通貨イノベーション機構、10月から本格始動 - 黒田前日銀総裁やメガバンク役員らも参画」(2026年9月25日) https://news.mynavi.jp/article/20260925-5026256/
- デジタル通貨イノベーション機構(PR TIMES)「デジタル通貨イノベーション機構、10月に活動スタート」(2026年9月25日) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000190666.html
- NADA NEWS「トークン化預金の標準化へ──デジタル通貨イノベーション機構が始動、黒田前日銀総裁も参画」(2026年9月) https://www.nadanews.com/369419/
- 自由民主党 政務調査会 デジタル社会推進本部 次世代AI・オンチェーン金融構想PT「提言」(2026年5月19日) https://www.taira-m.jp/次世代AI・オンチェーン金融構想PT提言.pdf
- So & Sato「オンチェーン金融と日本法 ―骨太方針2026を踏まえた法的論点の全体像」 https://innovationlaw.jp/onchain-finance-japan-law/

