「106万円の壁」撤廃 パートの社保加入は週20時間で

パートやアルバイトが勤め先の厚生年金と健康保険に加入する条件から、「月額8.8万円以上」という賃金の要件がなくなった。年収に直すと約106万円にあたり、「106万円の壁」と呼ばれてきた要件だ。厚生労働省は2026年10月にこの要件を撤廃する予定としていた[1]。2025年6月に成立した年金制度改正法に盛り込まれた見直しである[2]。

「106万円の壁」撤廃後の加入要件

厚労省の社会保険適用拡大の特設サイトによると、短時間で働く人が加入の対象になる要件は次のとおりだ[1]。

  • 勤め先の従業員数が51人以上(2027年9月まで)
  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 2カ月を超えて雇われる見込みがある
  • 学生ではない(夜間・通信制や休学中の人などは対象)

賃金の要件について、厚労省はもともと、最低賃金以上で週20時間以上働く人はこの要件も満たすため「収入を意識する必要はありません」と説明していた[1]。2026年度の最低賃金は全国平均で時給1177円に上がり(最低賃金改定の記事)、金額の線引きは実質的な意味を失いつつあった。

企業規模の要件も2035年までに撤廃

従業員数の要件も、段階的に下がっていく。特設サイトが示す日程は次のとおりだ[1]。

  • 2027年10月から:従業員36〜50人の企業
  • 2029年10月から:21〜35人の企業
  • 2032年10月から:11〜20人の企業
  • 2035年10月から:10人以下の企業

最終的には、勤め先の規模にかかわらず、週20時間以上働くかどうかが加入の分かれ目になる。

手取りの急減を和らげる仕組み

新たに加入する人の手取りが一気に減らないよう、国は「保険料調整制度」を用意した。事業主が従業員の健康保険料と厚生年金保険料の一部を一時的に肩代わりし、従業員の負担を通算3年間軽くする仕組みだ。軽減の割合は月収に応じて決まり、3年目は半分になる。事業主の肩代わり分は3カ月後の保険料から差し引かれるため、事業主が最終的に納める保険料は増えず、従業員が将来受け取る年金額にも影響しないという[3]。

パートを新たに社会保険に加入させ、労働時間の延長や賃上げに取り組んだ事業主には、キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース)もある。社会保険労務士などを無料で派遣して、従業員向けの説明会を開く支援も受けられる[3]。

残る「130万円の壁」

一方、会社員の配偶者として健康保険の扶養に入るための「年収130万円未満」という収入要件は変わっていない。日本年金機構は、年収が130万円未満でも、週20時間などの要件を満たせば勤め先の厚生年金・健康保険の加入者になると説明している[4]。

壁は「金額」から「時間」へ

今回の見直しで、働き方を決める目安は年収の金額から、週の労働時間に移る。週20時間を少し超えるか、少し下回るかで、社会保険に入るかどうかが変わる。手取りを守るためにシフトを週20時間未満に抑える、という新しい「働き控え」が生まれる余地はある。

加入すれば保険料を負担する代わりに、老後の厚生年金が増え、病気やけがで働けない期間の傷病手当金の対象にもなる。保険料調整制度の3年間は、その損得を本人がじっくり見極めるための猶予期間ともいえる。企業の側には、保険料の負担に加え、短時間で働く人に新しい仕組みを丁寧に説明する役割が求められる。

脚注

  1. 厚生労働省「社会保険適用拡大 特設サイト 社会保険加入の要件」 https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/jugyouin/taisho
  2. 労務SEARCH「【2026年以降】社会保険の加入条件の改正点」(2026年9月8日更新) https://romsearch.officestation.jp/news/51047
  3. 厚生労働省「社会保険適用拡大 特設サイト 支援制度について」 https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/jigyonushi/shienseido
  4. 日本年金機構「健康保険の被扶養者として認定されるための要件の一つに、年収が130万円未満であることという収入要件がありますが、この要件に変更はありますか。」 https://www.nenkin.go.jp/section/faq/kounen/tekiyoukakudai/tanjikan/fuyounintei.html
おすすめの記事