
政府は2026年10月27日、中国と台湾から輸入されるニッケル系ステンレス冷延鋼帯・冷延鋼板に不当廉売関税(反ダンピング関税)を課す政令を閣議決定した[1][2]。政令は30日に公布され、10月31日から2031年10月30日までの5年間、3.6〜42.1%の関税が上乗せされる。
7月9日から暫定的にかけていた関税を、調査を終えて正式な措置に切り替える。税率は暫定措置と同じ水準に据え置いた[1]。
ステンレス冷延鋼板の反ダンピング関税、決定の中身
- 対象:中国(香港・マカオを除く)と台湾を原産地とする、または両地域から日本に輸出されたニッケル系ステンレス冷延鋼帯・冷延鋼板
- 税率:3.6〜42.1%(暫定措置と同率)
- 期間:2026年10月31日〜2031年10月30日の5年間
- 手続き:10月19日に関税・外国為替等審議会の特殊関税部会が5年間の課税を答申し、27日に閣議決定
対象の鋼材は、クロムを10.5%以上、ニッケルを0.6%超含む合金鋼で、さびにくさと見た目の美しさから幅広い用途に使われる[1]。台所用品や建材、機械部品などが代表的な使い道だ。
国内4社の申請から1年あまり
手続きの発端は、日本製鉄、日本冶金工業、ナス鋼帯、日本金属の4社が2025年5月12日に財務大臣へ出した課税の申請だ。4社の生産高は、国内の総生産高の5割を超える[3]。財務省と経済産業省は同年7月22日に合同調査を始め、2026年6月19日に不当廉売と国内産業への損害を推定する「仮の決定」をした[2]。調査期間は一度延長されている。
申請書の概要によると、中国産の輸入量は2022年の5万3767トンから2024年に7万5481トンへ増えた。台湾産は5万2307トンから4万7932トンに減ったが、国内需要に占める割合はどちらも上がったという[3]。申請者は、輸入品の国内販売価格が国産品を大きく下回り、需要家が輸入品に切り替えたことで、国産品の販売量と価格が押し下げられたと主張していた。
鉄鋼で相次ぐ反ダンピング調査
反ダンピング関税は、輸出国の国内価格などより不当に安く輸出された製品が国内産業に損害を与えている場合に、その差額の範囲で上乗せする関税だ。財務省の一覧を見ると、2026年は鉄鋼製品での動きが目立つ[4]。
- 6月1日:韓国・中国・台湾産の熱延鋼板と冷延鋼板の調査を開始
- 7月3日:今回のステンレス冷延鋼板に暫定措置を決定
- 8月4日:韓国・中国産の溶融亜鉛めっき鋼板に暫定措置を決定
10月16日には、塗料などに使う中国産の二酸化チタン顔料の調査も始まった[4]。鉄鋼にとどまらず、素材全般で安値輸入への対抗措置が広がっている。
需要家のコスト増と国内生産の維持をどう両立するか
今回の決定で国内メーカーは価格競争の圧力が和らぐ一方、輸入品を使っていた加工業者などはコストが上がる可能性がある。経産省は需要家向けの相談窓口を設けている[1]。
申請書は、中国の生産能力が増え続け、台湾も余剰能力を抱えていると指摘していた[3]。行き場を失った鋼材が、価格の高い日本市場に向かう構図は続いている。6月に始まった熱延・冷延鋼板の調査で課税が決まれば、鉄鋼の輸入に占める関税対象の範囲はさらに広がる。その調査の行方が次の節目になる。
脚注
- 経済産業省「中華人民共和国産並びに台湾、澎湖諸島、金門及び馬祖から成る独立の関税地域産ニッケル系ステンレス冷延鋼帯及び冷延鋼板に対する不当廉売関税の課税を決定しました」(2026年10月27日) https://www.meti.go.jp/press/2026/10/20261027001.html
- 財務省「ニッケル系ステンレス冷延鋼帯及び冷延鋼板に対する不当廉売関税の課税を決定しました」(2026年10月27日) https://www.mof.go.jp/policy/customs_tariff/trade/plan/futou/ka20261027.html
- 財務省「申請書の概要」(2025年7月22日、調査開始時の資料1) https://www.mof.go.jp/policy/customs_tariff/trade/plan/futou/ka20250722a.pdf
- 財務省「不当廉売関税」(報道発表の一覧) https://www.mof.go.jp/policy/customs_tariff/trade/plan/futou/index.html

