
内閣府は2026年10月27日、10月の月例経済報告を公表し、景気の基調判断を「緩やかに回復しているが、中東情勢の影響を注視する必要がある」として前月から据え置いた[1]。9月の報告にあった「自然災害の影響」の文言は外した。個別項目では輸出の判断を「このところ持ち直しの動きに足踏みがみられる」に引き下げた一方、企業の業況判断は引き上げた[1]。
月例経済報告は、政府が毎月まとめる景気の公式見解だ。今回は総括判断を変えずに、中身の項目で上方修正と下方修正が入れ替わる形になった。
10月の月例経済報告、何が変わったか
9月と比べて表現が変わったのは、基調判断の文言と次の4項目だ[1]。
- 輸出:「持ち直しの動きがみられる」→「このところ持ち直しの動きに足踏みがみられる」(下方修正)
- 業況判断:「おおむね横ばい」→「全体としては改善の動きがみられる」(上方修正)
- 国内企業物価:「このところ上昇テンポが鈍化」→「このところ横ばい」
- 消費者物価:「緩やかに上昇」→「このところ上昇」
個人消費(持ち直しの動き)、設備投資(持ち直し)、生産(総じてみれば持ち直しの動き)、雇用情勢(改善の動き)などは前月の表現のままだった[1]。
輸出はアジア・米国・EU向けがそろって足踏み
報告によると、地域別ではアジア、米国、EU向けの輸出がいずれも「このところ持ち直しの動きに足踏み」となり、その他の地域向けだけが持ち直している[1]。8月の貿易収支は、輸出金額の減り方が輸入金額の減り方を上回り、赤字幅が広がった。先行きについても、中東情勢などによる下押しリスクに留意が要るとした。
財務省が10月21日に公表した9月分の貿易統計(速報)では、輸出金額は前年同月比16.7%増と9月として過去最大だった一方、貿易収支は5カ月連続の赤字だった[3]。金額は価格や為替の動きでも膨らむため、金額の伸びと景気判断の「足踏み」は必ずしも矛盾しない。政府は、地域別にみた輸出の勢いが鈍ってきたと判断した形だ。
業況判断は短観を受けて引き上げ
反対に引き上げた業況判断は、日銀短観(9月調査)が根拠になった。全規模全産業の業況判断DIは前回から3ポイント上がり、製造業が5ポイント上昇、非製造業は1ポイント低下した[1]。ただし12月時点を見通す「先行き」はやや慎重で、報告は中東情勢の影響を「引き続き注視する必要がある」と添えた。
企業収益の面では、法人企業統計(4〜6月期)の経常利益が前年比24.6%増と伸びた[1]。一方、短観の2026年度計画では、経常利益が上期の9.4%増から下期は4.8%減に転じる見込みとなっている[1]。足元は好調でも、企業は年度後半を慎重にみている。
物価の表現は「上昇」へ、企業物価は横ばい
消費者物価は「緩やかに上昇」から「このところ上昇」に改めた。生鮮食品とエネルギーを除く総合は9月に前月比0.5%、前年比2.4%上がった[1]。生鮮食品を除く総合(コア)も前月比0.5%上昇している(9月の消費者物価2.1%上昇 9カ月ぶり2%台)。一方、9月の国内企業物価は前月比0.3%下がり、判断は「横ばい」になった[1]。
家計の物価見通しも高いままだ。内閣府の消費動向調査(9月)では、1年後に物価が10%以上上がるとみる世帯の割合が19.4%と、前月の18.1%から増えた[1]。
外需の鈍化が年末の景気を左右する
今回の報告では、総括判断を保ったまま、外需の弱さと国内企業の改善が打ち消し合った。完全失業率が2.5%と低く、人手不足感も強い中で、雇用と賃金が消費を下支えする構図は続いている[1]。
気がかりなのは、輸出の足踏みと企業の慎重な下期計画が重なっている点だ。政策面では、電気・都市ガス料金の負担軽減策が政策の基本的態度の記述から外れ、燃料油の激変緩和措置だけが残った[1]。外需の鈍化が生産の持ち直しを止めるかどうかは、10月以降の輸出と鉱工業生産の数字で確かめることになる。11月の月例経済報告の公表日は、まだ決まっていない[2]。
脚注
- 内閣府「月例経済報告(令和8年10月)」(2026年10月27日) https://www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei/2026/1027getsurei/main.pdf
- 内閣府「月例経済報告」(資料一覧) https://www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei/getsurei-index.html
- 財務省「報道発表 令和8年9月分貿易統計(速報)」(2026年10月21日) https://www.customs.go.jp/toukei/shinbun/trade-st/2026/2026094.pdf

