自民がサイバー対策提言、官邸に「対処本部」を要求

自民党の国家サイバーセキュリティ戦略本部は2026年10月23日、首相官邸で高市早苗首相に、サイバー対策の抜本的な強化を求める提言を申し入れた[1]。官邸主導の「サイバー対処本部(仮称)」の設置を柱に、防御へのAIの活用や専門人材の待遇改善、国内通信情報の利用の検討などを盛り込んだ[2]。

自民党のサイバー提言、「有事前夜」の危機感

提言の題は「サイバーセキュリティ対策の抜本的強化に関する提言〜サイバー有事前夜/AIのサイバー飽和攻撃に備えよ!〜」で、10月20日付で取りまとめられた[2]。22日の党政調審議会で了承され、党の正式な提言になった[3]。本部長は平将明衆院議員が務める[3]。

提言は冒頭で、企業へのサイバー攻撃による個人情報の流出が急増していると指摘し、今の状況を「サイバー有事前夜」と表現した[2]。生成AIの普及で攻撃が自律化・高度化しつつあるとして、重要インフラ企業だけでなく、大量の重要情報を持つ企業でも対策の強化が必要だとしている[2]。

政府全体への3つの基本提言

政府全体に向けては、次の3点を基本提言とした[2]。

  • サイバー対処能力強化法に基づく取り組みの強化(自衛隊・警察の能力構築、通信情報の利用、同盟国との連携など)
  • 企業の経営層の意識改革と、有価証券報告書などでの情報開示の充実
  • 高度な人材の育成・確保(「トップガン」人材に向けた公務員の新たな人事・給与制度など)

そのうえで、官邸主導で「サイバー対処本部(仮称)」を立ち上げ、司令塔として迅速に本部会議を開くよう求めた[2]。政府に対しては、必要な予算措置と法制化の検討に直ちに着手するよう迫っている[2]。

国内通信情報やマイナカード義務化も検討対象に

提言は、国家サイバー統括室(NCO)やデジタル庁、経済産業省、金融庁、警察庁、総務省、防衛省など、省庁ごとに具体策を並べた[2]。主なものは次のとおりだ[2]。

  • 防御側でもAIを使う「Project YATA-Shield」の推進と、米国のAI事業者との連携
  • 量子コンピューターでも破られにくい暗号(耐量子計算機暗号)への移行の加速
  • 情報漏えいの被害者に安全に連絡する方法の確立と、2次被害対策の徹底
  • 中小企業向け「サイバーお助け隊サービス」の拡充など、取引先を含めた供給網の防衛
  • 国際共同捜査による犯罪インフラの無害化と、攻撃者を特定する能力の強化

目を引くのは、踏み込んだ検討項目だ。提言は、10月に運用が始まった能動的サイバー防御で認められた外国関連の通信情報の利用にとどまらず、「国内通信情報の利用の検討」も求めた[2]。デジタル庁向けには、本人確認の徹底に向けて「マイナンバーカードの取得の義務付けの検討等」を挙げている[2]。

防御の強化と、通信の秘密・任意取得との兼ね合い

個人情報の流出が相次ぐなかで、司令塔の一本化や人材の確保を急ぐべきだという点は、与野党を問わず理解を得やすいだろう。予算措置や人事・給与制度の見直しは、年末の予算編成で具体化するかどうかが最初の分かれ目になる。

一方、国内通信情報の利用は、能動的サイバー防御の法整備で議論になった通信の秘密との関係が改めて問われる。マイナンバーカードは現在、取得するかどうかを本人が選べる。どちらも「検討」の段階だが、政府が法制化に踏み出すなら、対象の範囲や歯止めをどう設けるかの説明が欠かせない。

脚注

  1. 首相官邸「自由民主党・国家サイバーセキュリティ戦略本部による提言申入れ」(2026年10月23日) https://www.kantei.go.jp/jp/105/actions/202610/23teigen.html
  2. 自由民主党政務調査会 国家サイバーセキュリティ戦略本部「サイバーセキュリティ対策の抜本的強化に関する提言 概要」(2026年10月20日、平将明衆院議員公式サイト掲載) https://www.taira-m.jp/サイバーセキュリティ対策の抜本的強化に関する提言 概要.pdf
  3. 平将明衆院議員公式サイト「サイバーセキュリティ対策の抜本的強化に関する提言」(2026年10月22日) https://www.taira-m.jp/2026/10/post-372.html
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