
環境省は2026年10月30日、2024年度(令和6年度)末時点のニホンジカとイノシシの全国の推定個体数を公表した[1]。イノシシは中央値で約157万頭と、4月に公表した2023年度末の推定(約122万頭)から3割近く増えた[1][2]。ニホンジカは北海道を含む全国で約310万頭と推定された。国は2011年度の水準から2028年度までに半減させる目標を掲げているが、その達成は遠い状況だ。
イノシシとシカの個体数、推定の結果
今回と前回の推定(いずれも中央値)は次のとおり[1][2]。
- イノシシ:約157万頭(2023年度末の推定は約122万頭)
- ニホンジカ(北海道を含む全国):約310万頭(同約303万頭)
- ニホンジカ(本州以南):約236万頭(同約230万頭)
推定には幅がある。90%の確からしさで実際の数が入るとされる範囲(信用区間)は、イノシシが約91万〜270万頭、全国のニホンジカが約114万〜843万頭と広い[1]。捕獲数などのデータから統計手法で推定しており、新しいデータを加えるたびに過去の数字もさかのぼって計算し直される[3]。前回からの増減は目安として見る必要がある。
イノシシは「高い水準に戻った」
環境省の資料は、イノシシの個体数は一時期減っていたものの、高い水準に戻っていると説明している[4]。2023年9月に環境省と農林水産省がまとめた資料では、イノシシは2011年度の約121万頭から、捕獲の強化と豚熱の影響が重なって2021年度には約72万頭まで減ったとしていた[3]。
今回の約157万頭は、半減目標の基準となる2011年度の水準も上回る。イノシシは繁殖力が強く、資料では2024年度の自然増加率を中央値で1.187〜1.522と推定している[4]。捕獲の手を緩めれば、短い期間で数が戻りやすい動物だ。
シカは横ばい圏、北海道の増加も
ニホンジカは、本州以南で約236万頭と、前回の推定から大きくは変わっていない[1][2]。2023年の資料では、本州以南のシカは2014年度の約263万頭をピークに減る傾向にあるとしつつ、減り方が遅く、生息地が東北や北陸を中心に広がっていると指摘していた[3]。北海道のエゾシカについても、2019年度以降は増える傾向に転じたとしていた。
今回からは、これまで別に扱っていた北海道を含めた全国の推定も示した[1]。全国で約310万頭という数字は、農林業の被害や交通事故など、シカが人の暮らしに与える影響の大きさを改めて示している。
2028年度までに半減、目標は2度目の期限
環境省と農水省は2013年に、シカとイノシシの個体数を10年後の2023年度までに半減させる目標を立てた[1]。しかし達成が難しくなり、2023年9月に期限を2028年度まで延ばした。延長後の目標では、シカは2011年度の水準から半減を目指し、イノシシは半減を早く達成したうえで捕獲を続けるとしていた[3]。
延長から3年がたち、期限まで残り4年あまりとなった。イノシシが基準年を上回る推定となったことで、目標の前提は大きく揺らいでいる。
捕獲の担い手をどう確保するか
2023年の資料は、わな猟の免許を持つ若い世代は増えている一方、熟練した銃猟の免許を持つ人は減っていくと見込み、ICT(情報通信技術)を使った効率的な捕獲や、技術力の高い事業者の育成が必要だとしていた[3]。環境省は今回、引き続き捕獲を強化すると表明した[1]。
推定の幅が大きいとはいえ、イノシシが前回より3割近く多いと推定された意味は軽くない。農作物の被害や市街地への出没を抑えるには、捕獲の数を増やすだけでなく、県境をまたいだ捕獲や雌の捕獲の強化など、資料が挙げてきた課題に実際に手を打てるかが問われる。
脚注
- 環境省「全国のニホンジカ及びイノシシの個体数推定等の結果について」(2026年10月30日) https://www.env.go.jp/press/press_05772.html
- 環境省「全国のニホンジカ及びイノシシの個体数推定等の結果について」(2026年4月23日) https://www.env.go.jp/press/press_04062.html
- 環境省・農林水産省「シカ・イノシシの捕獲強化対策と捕獲目標について」(2023年9月1日) https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort9/kyouka_taisaku.pdf
- 環境省「全国のニホンジカ及びイノシシの個体数推定の結果について(資料2)」(2026年10月30日) https://www.env.go.jp/content/000436475.pptx

