
環境省は2026年10月30日、市街地に出没するクマへの対策技術を試す「市街地等におけるクマ対策に係る技術導入実証事業」に、AIカメラやドローン、四足歩行ロボットなどを使う10件を選んだと発表した[1]。9月8日から10月7日までの公募に56件の応募があり、事業の有効性や実現できるかどうかなどを審査した[2]。1件あたりの事業規模は1000万円程度で、選ばれた団体は自治体と組んで実際の地域で効果を確かめる。
ドローンなどクマ対策の技術実証、選ばれた10件
選ばれた事業と、連携する自治体は次のとおり[2]。
- 秋田県秋田市:アプリとAIカメラを使った予防的な環境管理と遭遇回避(秋田県立大学木材高度加工研究所)
- 北海道当別町:森林での放牧や3Dのデジタル空間を組み合わせた市街地への侵入阻止(インターリージョン)
- 北海道斜里町:ヒグマ出没時の対応の人的負担を減らすデータ分析とドローン活用(NTT東日本)
- 青森県青森市:先手の対策と、人とクマのすみ分けを進める仕組み(NTTドコモビジネス)
- 岩手県盛岡市:赤外線ドローンによる早期発見と追跡、侵入経路の可視化(SOARREC)
- 福島県下郷町・北海道標津町:クマを判別するAIカメラによる早期検知(ダイトク)
- 福島県会津坂下町・湯川村:ドローンを遠隔で共用する基盤と、警報の即時共有(TOPPAN)
- 宮城県富谷市:AI監視カメラとドローンによる早期発見・追跡(富谷市農作物有害鳥獣対策協議会)
- 栃木県那須町:四足歩行ロボット、AIカメラ、ドローンによる検知と安全な追い払い(パーソルビジネスプロセスデザイン)
- 京都府南丹市:AIとドローンを組み合わせた大学施設での接近監視(Fujitaka)
監視・警報から追い払いまで、技術で補う
環境省は、対策を大きく2つに分けている[2]。1つは市街地にクマが出たときの対応で、監視やパトロール、警告、追跡、避難誘導、追い払い、捕獲などが当たる。もう1つは出没そのものを抑える対策で、クマを引き寄せる物の管理や、やぶなど隠れ場所や移動経路の把握が含まれる。
選ばれた10件をみると、AIカメラやドローンでクマを早く見つけ、情報を素早く住民や関係者に届ける仕組みが多い。夜間や見通しの悪い場所での発見には、赤外線を使ったドローンも試す。那須町では、四足歩行ロボットでクマを安全に追い払う方法を検証する。
「アーバンベア対策チーム」の一環
住宅地などへの出没とけが人の発生が続くなか、環境省は「市街地クマ出没対策チーム(アーバンベア対策チーム)」をつくった[1]。チームは、出没に備えた安全対策の強化と、被害対策技術の導入促進を柱としており、今回の事業は後者を進めるためのものだ。
政府の関係閣僚会議が2026年3月に決めた「クマ被害対策ロードマップ」も、出没時の緊急対応、生活圏への出没防止、個体数管理の強化を総合的に進めるとしている[1]。環境省は10月20日には、対策の経験が少ない11の自治体に専門家チームを送る実証事業の参加先も選んでいる(専門家派遣の実証事業の記事)。
人手に頼る対応を、どこまで技術で置き換えられるか
クマが市街地に出ると、自治体の職員や警察、猟友会が見回りや追い払いにあたる。出没が続く地域では、こうした人の負担が重くなっている。斜里町の事業が「人的負担の軽減」を掲げているのは、その課題を正面から扱うものだ。
審査の観点には、実証が終わった後もビジネスとして続けられるか、他の地域に広げられるかが含まれていた[1]。1件1000万円程度の実証で効果が確かめられても、全国の自治体が導入できる費用に収まらなければ広がらない。来年のクマの活動期までに、どの技術が実用に耐えるかの手がかりを示せるかが、事業の評価を左右する。
脚注
- 環境省「令和8年度市街地等におけるクマ対策に係る技術導入実証事業の実施団体の決定について」(2026年10月30日) https://www.env.go.jp/press/press_05783.html
- 環境省「令和8年度市街地等におけるクマ対策に係る技術導入実証事業の概要及び参加団体一覧」(2026年10月30日) https://www.env.go.jp/content/000438903.pdf

