
環境省は2026年10月23日、釧路湿原国立公園の公園区域と公園計画の変更案を公表し、11月21日まで意見募集を始めた[1]。釧路市や鶴居村などの湿原や森林を新たに編入し、釧路湿原国立公園の区域を約2444ヘクタール拡張する内容だ[2]。
変更後の公園面積は約3万1098ヘクタールとなる[2]。湿原周辺では、法律の規制が及ばない土地で太陽光発電施設の設置が進んだことを受け、地元の釧路市が区域の拡張に期待を寄せていた[3][4]。
釧路湿原国立公園の拡張区域と面積
環境省の変更書(原案)によると、拡張するのは次の6か所で、釧路町の一部154ヘクタールは土地利用の変化で質が下がったとして区域から外す[2]。
- 釧路市北斗・鶴野・安原・北園・昭和の各一部(1202ヘクタール):既存区域に隣接する低層湿原で、主要な展望地からの眺望を一体的に守る
- 釧路市広里の一部(57ヘクタール)と釧路町トリトウシの一部(172ヘクタール):既存区域に隣接する低層湿原
- 鶴居村雪裡・久著呂の各一部(407ヘクタール):ツルワシナイ川の上流域を含み、湿原の富栄養化や土砂流入を減らすために保全する。村営鶴居牧野はホーストレッキングの拠点
- 鶴居村雪裡・雪裡原野の各一部(623ヘクタール):展望地からの眺望を守る
- 鶴居村幌呂・幌呂原野の各一部(137ヘクタール):かつて農地開発された土地で、再湿原化などの湿原再生が進む
拡張部分の内訳は国有地252ヘクタール、公有地721ヘクタール、私有地1471ヘクタールで、6割を私有地が占める[2]。最も広い釧路市北斗などの区域は、1202ヘクタールのうち1129ヘクタールが私有地だ[2]。
第1次点検から15年、利用の変化も反映
釧路湿原国立公園は1987年に指定され、2011年の第1次点検で一度区域が広げられた[2]。環境省は、それから10年以上がたち、自然的・社会的条件が変わったことを今回の見直しの理由に挙げる[2]。近年はカヌーやホーストレッキングといった体験型の利用が増えており、乗馬施設や舟遊場などの施設計画、自然体験活動計画も見直す[1][2]。
意見は、e-Govの意見募集ページ、郵送、電子メールで受け付ける[1]。環境省は12月ごろに意見を取りまとめ、2027年2月ごろに中央環境審議会に諮問し、3月ごろに官報で告示する予定だ[1]。
太陽光発電の広がりと「ノーモア メガソーラー宣言」
今回の拡張の背景には、湿原周辺での太陽光発電施設の増加がある。釧路市は2025年6月1日に「ノーモア メガソーラー宣言」を出し、自然環境と調和しない太陽光発電施設の設置を望まない姿勢を示した[3]。さらに、希少な野生生物の生息地での事業者の調査や保全策を義務づける条例を設けている[4]。
釧路市長は2026年1月の記者懇談会で、政府の対策パッケージに盛り込まれた国立公園の区域拡張について、自然環境が豊かな場所への「太陽光パネルの設置を抑制する効果が見込まれる」と期待を示した[5]。国から拡張区域が示された後は、地域との調整に協力するとも述べていた[5]。
私有地が6割、規制の線引きが試される
国立公園の区域に入ると、特別地域などでは工作物の設置に許可が必要になり、開発に一定の歯止めがかかる。ただ、今回の拡張部分は6割が私有地で、土地所有者にとっては利用が制約されることになる[2]。意見募集では、保護を強めたい側と、土地の利用を続けたい側の双方から声が寄せられるだろう。
拡張で守れるのは公園区域に入った土地に限られる。区域の外側で太陽光発電の計画が移るだけにならないよう、市の条例や国の対策と組み合わせて運用できるかが重要になる。2027年3月ごろの告示までに、どこまで地域の合意を固められるかが次の焦点だ。
脚注
- 環境省「釧路湿原国立公園の公園区域及び公園計画の変更[第2次点検]に関する意見の募集(パブリック・コメント)について」(2026年10月23日) https://www.env.go.jp/press/press_05727.html
- 環境省「釧路湿原国立公園 公園区域及び公園計画変更書[第2次点検](環境省原案)」 https://www.env.go.jp/content/000437320.pdf
- 釧路市「釧路市は『ノーモア メガソーラー宣言』をしました」 https://www.city.kushiro.lg.jp/machi/kankyou/1004263/1004289/no-more-mega-solar.html
- 釧路市「大規模太陽光発電施設(メガソーラー)に関するよくある質問」 https://www.city.kushiro.lg.jp/machi/kankyou/1004327/1004328/1018237.html
- 釧路市「令和8年1月 定例市長・市政記者懇談会の結果について」(2026年1月9日) https://www.city.kushiro.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/016/233/r801kekka.pdf

