
こども家庭庁は11月に、「オレンジリボン・児童虐待防止推進キャンペーン」を全国で実施する[1]。家庭や学校、地域で児童虐待への関心と理解を深めてもらうため、期間中に広報や啓発の取り組みを集中して行う。2026年10月30日の閣議では、中司大臣がキャンペーンについて発言した[2]。今年度の標語は「189(いちはやく) 気づいたあなたに できること」に決まった[1]。
児童虐待防止キャンペーン、今年の主な取り組み
キャンペーンは、11月の「秋のこどもまんなか月間」の取り組みの一つと位置づけられている[1]。2004年度から2022年度までは厚生労働省が「児童虐待防止推進月間」として行い、こども家庭庁の発足後は同庁が引き継いだ[3]。
- 標語:「189(いちはやく) 気づいたあなたに できること」(5〜7月に募集し、最優秀作品を選定)
- 全国フォーラム:11月3日(祝)、岐阜市で「こどもの虐待防止推進 全国フォーラム with ぎふ」。標語の表彰式やパネルトークを予定[4]
- 各地でのイベント:栃木県小山市の商業施設などで親子向けの催しを予定[1]
標語にある「189」は、児童相談所の虐待対応ダイヤルの番号だ[1]。虐待かもしれないと感じたときに、迷わずかけてほしいという思いが込められている。
虐待相談の対応は22万5509件、過去最多
こども家庭庁の資料によると、全国233か所の児童相談所が2023年度に対応した児童虐待相談は22万5509件で、前年度より1万666件(5.0%)増えた[5]。資料のグラフが始まる1990年度は1101件で、その後ほぼ一貫して増えてきた。
この件数は、児童相談所が相談を受け、虐待と判断して指導や措置をとったものを数えている[5]。主な傾向として、資料は次の2点を挙げる。
- 心理的虐待の対応が12万8114件から13万4948件に増えた
- 警察などからの通告による対応が11万2311件から11万6649件に増えた
件数の増えた自治体への聞き取りでは、関係機関の児童虐待への意識が高まったことなども理由に挙がっている[5]。
歴代の標語は「気づく」「知らせる」を重ねる
毎年の標語を並べると、周囲の大人の気づきと通報を呼びかける言葉が続いている[3]。2025年度は「知らせよう あなたが あの子の声になる」、2024年度は「189(いちはやく) 気づいてあげて そのサイン」だった。
虐待は家庭の中で起きるため、外からは見えにくい。近所や学校、保育所などで「いつもと様子が違う」と感じた人の連絡が、児童相談所が動くきっかけになる。標語が毎年同じ方向の言葉を繰り返すのは、それだけ「知らせる」一歩のハードルが高いことの裏返しでもある。
相談件数の増加を、支援の拡充につなげられるか
相談件数が増えていることは、虐待そのものが増えたというより、気づいて知らせる人が増えた面もある。一方で、件数が増えるほど児童相談所の職員一人ひとりの負担は重くなり、一件ごとに十分な対応ができるかが課題になる。
キャンペーンで通報をためらわない社会を目指すのと同時に、通報を受け止める児童相談所や市区町村の体制を厚くすることが欠かせない。11月の集中的な啓発が、地域の見守りの輪を広げる契機になるかが問われる。
脚注
- こども家庭庁「オレンジリボン・児童虐待防止推進キャンペーン」(児童虐待防止推進特設サイト) https://kodomoshien.cfa.go.jp/no-gyakutai/orangeribbon/
- 首相官邸「令和8年10月30日(金)午前 官房長官記者会見 閣議の概要について」 https://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/202610/30_a.html
- こども家庭庁「標語」 https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/keihatsu-katsudou/slogan/
- こども家庭庁「こどもの虐待防止推進 全国フォーラム with ぎふ」 https://kodomoshien.cfa.go.jp/no-gyakutai/forum2026/
- こども家庭庁支援局「全国こども政策関係部局長会議」資料(2026年1月) https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/bb154365-f640-428b-ac52-641829379935/2546ca17/20260408_councils_kodomoseisaku-bukyokuchokaigi_bb154365_04.pdf

