
環境省は2026年10月20日、クマ対策の知見や経験が少ない自治体に専門家チームを派遣する「令和8年度クマ出没対策コンサルティング実証事業」の参加先として、11の地方公共団体を選んだと発表した[1]。人の生活圏へのクマの出没に備え、自治体と専門家が一緒に対策案をつくり、一部を試して効果を確かめる[1]。
クマ出没対策の実証に選ばれた11自治体
募集には13件の応募があり、審査を経て次の11団体が選ばれた[1]。
- 北海道登別市
- 宮城県
- 福島県福島市
- 埼玉県横瀬町
- 富山県小矢部市
- 山梨県甲府市
- 長野県小布施町
- 三重県尾鷲市
- 滋賀県彦根市
- 和歌山県みなべ町
- 岡山県新庄村
選考では、クマ対策の知見・経験が比較的少ないこと、生活圏での出没対策の強化を検討していること、専門家と協働して現地調査や対策の試行に取り組めること、期間中に担当者を置けることを考慮した[1]。
専門家チームは何をするのか
事業は3つの段階で進める[1]。
- 課題の整理:事務局が自治体と打ち合わせ、地域の課題やニーズを集めて対策案を提案する。課題に合った専門家を加え、2〜3人程度のチームを編成する[1]
- 対策案の具体化:専門家チームが自治体と打ち合わせや現地調査を重ね、対策案を磨き上げる[1]
- 試行と検証:具体化した対策の一部を必要に応じて試し、効果を確かめる[1]
この事業は、環境省が設けた「市街地クマ出没対策チーム(アーバンベア対策チーム)」の取り組みの一つだ[1]。2026年3月に関係閣僚会議が決めた「クマ被害対策ロードマップ」は、出没時の緊急対応、生活圏への出没防止、個体数管理の強化を柱にしており、なかでも出没の未然防止と出没時の対応を急ぐべき課題としている[1]。
今年度の人身被害は9月までに64件
環境省がまとめた速報値では、2026年度のクマによる人身被害は4〜9月で64件、被害者は68人で、このうち6人が亡くなった[2]。月別では6月が19件と最も多く、9月も6件あった[2]。
都道府県別では岩手県が12件と最も多く、秋田県8件、福島県7件と東北が目立つ[2]。一方で、長野県で4件、和歌山県や静岡県、奈良県、京都府でも被害が出ている[2]。
「慣れていない地域」から備える意味
今回選ばれた自治体には、東北の被害多発地域だけでなく、埼玉県横瀬町、三重県尾鷲市、滋賀県彦根市、和歌山県みなべ町、岡山県新庄村など、各地の自治体が並ぶ。選考の条件が「知見・経験が比較的少ないこと」である以上、これまでクマ対策を主な業務としてこなかった自治体が、専門家の手を借りて仕組みを一からつくる場になる。
出没が少なかった地域ほど、担当職員も、通報を受けたときの手順も、住民への周知の方法も、まだ十分に整っていない場合がある。被害が出てから体制を整えるのでは遅いという考え方が、この事業の背景にある。実証で得た手順を、選ばれなかった多くの自治体がまねできる形でまとめられるかどうかが、事業の成果を測る目安になるだろう。
脚注
- 環境省「令和8年度クマ出没対策コンサルティング実証事業に参加する地方公共団体の決定について」(2026年10月20日) https://www.env.go.jp/press/press_05739.html
- 環境省「R08年度人身被害件数(速報値)」(2026年10月14日更新) https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/r08injury-qe.pdf

