国立映画アーカイブ、寄付1億5000万円余り 資金難で募る

資金難で業務の継続が危ぶまれるとして、6月からクラウドファンディングを行っていた国立映画アーカイブ(東京・京橋)に、9月23日の締め切りまでに1億5000万円を超える寄付が集まった[1]。当初の目標だった1億円を上回り、5500人以上が支援した[1]。

国立映画アーカイブのクラウドファンディング、経過は

クラウドファンディングは6月25日に始まり、9月23日午後11時に締め切られた[2]。目標の1億円を達成した後は「ネクストゴール」として1億5000万円を掲げ、最終的に5522人から1億5405万円の支援を集めた[1]。

集まった資金は、資料の収集・保存・修復・復元や、上映・展示などの公開事業を含む運営費全般に充てる[1]。

約9万本を守る「唯一の国立機関」

国立映画アーカイブは、映画を専門に扱う国内唯一の国立機関だ。1952年に国立近代美術館で始まった映画事業を源流とし、1970年に東京国立近代美術館フィルムセンターとして開館、2018年に独立行政法人国立美術館の6番目の館として現在の形になった[3]。2026年3月末時点で、日本映画7万9750本を含む約9万本のフィルムを所蔵している[3]。

フィルムの保存には費用がかかる。劣化を防ぐため、保存庫は室温2〜10度、湿度35〜40%に保つ必要があり、年間を通じて多くの光熱費がかかる。専門の技術を持つ人材の確保や技術の継承も欠かせない[1]。

資金難の背景に予算配分

美術手帖によると、2026年度の映画の収集、保存、復元、新たなプリント作製などの予算は1億2300万円で、前年度から大幅に削られた[3]。

クラウドファンディングの開始後、国が予算を減らしたとの受け止めが広がったため、文化庁は事実関係を説明する文書を公表した。それによると、国立美術館全体への2026年度の運営費交付金は84.6億円で、物価高騰への対応などで前年度から約3.2億円増えている。一方で、法人の中での国立映画アーカイブへの配分は前年度から大きく減った。文化庁は、各館への配分は法人が自主的に決めるものだとしたうえで、適切な配分を求める考えを示している[4]。

寄付の成功を「解決」としないために

1億5000万円余りの寄付は、映画の遺産を守りたいと考える人がこれほど多いことを示した。

ただ、クラウドファンディングは一度きりの資金だ。フィルムの保存や修復は何十年も続く仕事で、毎年の光熱費や人件費は寄付で賄い続けられるものではない。国立美術館は9月、所蔵作品展や上映会の料金を引き上げる方針も発表しており、国立映画アーカイブの上映会の一般料金は2027年1月から520円が1000円になる[5]。

国の機関が寄付や入館料に頼らざるを得ない構図が続けば、文化を守る仕事は景気や話題性に左右されかねない。今回の寄付を、映画を保存する費用を社会全体でどう支えるかを考え直すきっかけにする必要がある。

脚注

  1. 国立映画アーカイブ「使命は人類の記憶を繋ぐこと。国立映画アーカイブの活動にご支援を」 https://www.nfaj.go.jp/support/crowdfunding/2026-06/
  2. 国立映画アーカイブ「クラウドファンディング実施についてのお知らせ(9/23更新)」 https://www.nfaj.go.jp/topics/20260625/
  3. 美術手帖「国立映画アーカイブが1億円を目標としたクラウドファンディングを開始。予算削減が迫る『唯一の国立機関』の現在地」(2026年6月26日) https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/32709
  4. 文化庁「国立映画アーカイブのクラウドファンディング実施に関する報道について」 https://www.bunka.go.jp/bunkacho/shokan_hojin/94400501.html
  5. 独立行政法人国立美術館「独立行政法人国立美術館の所蔵作品展における観覧料金の改定について」(2026年9月) https://www.artmuseums.go.jp/2026/09/13310.html
おすすめの記事