首相、燃料油補助の見直し指示 170円抑制の出口焦点

高市早苗首相は2026年10月23日、首相官邸で記者会見し、ガソリンや軽油、重油、灯油などの燃料油補助の見直しに向け、今後の支援の在り方を検討するよう経済産業相に指示したと明らかにした[1]。全国平均小売価格を1リットル170円程度に抑えている「緊急的激変緩和措置」の支援単価や出口が検討対象になる[1]。

首相は同時に、当面の燃料油支援に必要な基金の規模を確保するため、財務相と調整するよう経産相に指示した[1]。見直しの時期について首相は「いきなり来月から変わるということではなく」と述べ、結論は「できるだけ早く」出してもらうとした[1]。

燃料油補助の見直し、首相会見のポイント

  • 見直しの理由:与党に加え、国民民主党、中道、立憲民主党などの野党からも、財政負担への懸念から段階的な見直しや出口戦略を求める指摘があった[1]
  • 検討の範囲:支援単価や措置の出口を含め「柔軟に検討」する。首相は「まだ何も決まったものではございません」と述べた[1]
  • 当面の対応:現在の補助を続けるのに必要な基金を、財務相と調整して確保する[1]
  • 結論の時期:具体的な日付は示さず、「できるだけ早く」とした[1]

会見では、与党案として11月から補助を縮める案が報じられていることについて質問が出たが、首相は「予断はいたしません」と答えるにとどめた[1]。

170円を超える分を全額補助、10月は42.8円

現在の措置は、イラン情勢を受けた2026年3月11日の首相指示で始まり、3月19日出荷分から適用されている[2][3]。ガソリンの全国平均小売価格が170円程度を超えそうな場合、超える部分を全額(10分の10)補助する仕組みだ[3]。軽油・重油・灯油にはガソリンと同じ額を出し、航空機燃料には当初ガソリンの4割相当、9月3日からは8割相当を出している[4]。

資源エネルギー庁によると、10月19日時点のレギュラーガソリンの全国平均価格は170.2円で、補助が無い場合の価格は213.2円と試算されている[5]。10月22日から28日までの支給単価は、ガソリン・軽油・灯油・重油が1リットル42.8円、航空機燃料が34.2円だ[2][5]。軽油は159.7円、灯油は142.9円で、こちらも40円余りの補助で価格が抑えられている[5]。

2022年からの累計予算は9兆5804億円

燃料油への補助は2022年1月に始まり、仕組みを変えながら続いてきた[4]。資源エネルギー庁の資料では、2021年度から2026年度までの予算の累計は9兆5804億円に達する[4]。今回の緊急的激変緩和措置には、2025年度予備費の7948億円と2026年度第1次補正予算の6136億円が充てられている[4]。

首相は21日の就任1年の記者会見でも、ガソリン価格を170円前後に抑えているのは燃料油補助の効果だと強調していた[6]。23日の会見では、欧州には1リットル400円を超える国もあるとしたうえで、補助は軽油や重油、灯油にも適用されるため、輸送や産業のコストを通じて物価を抑える役に立ってきたと説明した[1]。

補助を縮めた場合、家計への影響は

補助をなくした場合の価格との差は、ガソリンで約43円ある[5]。仮にこの差を一度に戻せば、ガソリン価格は2割以上上がる計算になる。過去にも補助を縮めるときは、2023年に補助率を段階的に下げたり、2024年末から2025年1月にかけて補助率を3割、ゼロへと下げたりと、少しずつ縮める方法が取られてきた[4]。

物価高対策としては、所得税減税(1人3万〜6万円)の年末調整での還付が12月に予定され、飲食料品の消費税減税は2027年4月からの実施を目指して法案を審議中だ[1]。首相は会見で、これらと切れ目なく物価高に対応していく考えを示した[1]。

単価の下げ方と原油価格が分かれ目

見直しの論点は、基準の170円を引き上げるのか、支給額を毎月一定額ずつ減らすのか、という縮め方にある。灯油は冬に使う量が増え、軽油は物流コストに直結するため、油種ごとの影響の差も無視できない。

もう一つの不確定要素は原油価格だ。資源エネルギー庁のグラフでは、円建てのドバイ原油は10月中旬の週平均で1リットル107円台と高い水準が続いている[5]。首相自身が原油価格や補助の使用額を見通すのは「大変困難」と認めており、縮小の道筋を示しつつ、価格が急に上がったときの備えをどう残すかが、制度設計の分かれ目になりそうだ[1]。

脚注

  1. 首相官邸「中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置等についての会見」(2026年10月23日) https://www.kantei.go.jp/jp/105/statement/2026/1023kaiken.html
  2. 経済産業省 資源エネルギー庁「中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置」 https://nenryo-teigakuhikisage.go.jp/
  3. 資源エネルギー庁「イラン情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置について」(2026年3月11日) https://nenryo-teigakuhikisage.go.jp/assets/pdf/20260311_説明資料(緊急的な激変緩和措置).pdf
  4. 資源エネルギー庁「燃料油価格に関する支援策の推移」 https://nenryo-teigakuhikisage.go.jp/assets/pdf/燃料油価格支援の支援策の推移.pdf
  5. 資源エネルギー庁「ガソリン全国平均価格の推移」ほか(2026年10月19日時点) https://nenryo-teigakuhikisage.go.jp/current_graph.pdf
  6. 首相官邸「総理就任1年の節目を迎えての会見」(2026年10月21日) https://www.kantei.go.jp/jp/105/statement/2026/1021kaiken.html
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