
総務省は2026年10月24日から、SNSなどを運営する大規模事業者に選挙の偽情報対策を求める指針案について、意見募集を始める[1]。7月に成立した改正法に基づくもので、偽情報を発信した利用者の収益化停止や、AI生成画像の検知・警告表示などを推奨する措置として例示した[2]。意見募集は11月24日までで、改正法は2027年3月1日に施行される[1][2]。
選挙の偽情報対策、収益化停止やAI画像の表示を例示
指針案が「推奨される措置」として例示したのは次のような内容だ[2]。
- 選挙期間中とその前後の対応体制の強化(法律の専門家の雇用など)
- 閲覧数に応じて発信者に報酬を払う「収益化」の審査の厳格化、対象者である旨の表示、偽情報を発信した場合などの収益化停止
- AI生成コンテンツである旨の表示機能の実装と、事業者自身による検知・警告表示
- 本人確認済みの表示や、発信者の所在国・地域の表示
- 選挙管理委員会や候補者本人の発信など、信頼性の高い情報を見やすい位置に表示する機能
- 偽情報など問題のある情報の表示順位を下げる仕組みと、アルゴリズムの透明性の確保
- プログラムや大量の端末を使った不正な大量発信の検知、関与したアカウントの停止
- ファクトチェック機関や選挙管理機関との情報共有、候補者や政党の相談窓口の設置
改正公職選挙法では、選挙運動などに使うAIで作成・加工した画像や動画を告示・公示から投票日までにネットで広める場合、AIで作った旨を表示する義務も新たに設けられた[2]。指針案は、事業者がこの義務を守りやすくする機能を整えることも求めている[2]。
7月成立の改正法、大規模事業者に対策を義務付け
指針案のもとになったのは、2026年7月13日に成立した公職選挙法と情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)の改正法だ[2]。各会派の国会議員でつくる「選挙運動に関する各党協議会」の議論を踏まえ、議員立法として提出された[2]。
改正法は、総務大臣が指定した大規模事業者に対し、法令に違反する情報や虚偽の情報、事実をゆがめた情報など、選挙の公正を害するおそれのある情報による悪影響を軽減する措置を義務付けた[2]。あわせて、措置の実施状況を年1回公表することも求めている[2]。指針は、その措置の中身を具体的に示すもので、総務省は情プラ法の施行規則の改正案も同時に意見募集にかける[1]。
削除は求めず、判断は事業者に
一方で、指針案は表現の自由への配慮を繰り返し強調している。具体的にどの措置をとるかは事業者の判断に委ね、すべての措置の実施を求めるものではないとした[2]。個別の情報の削除も求めず、個々の投稿が偽情報かどうかを判断する義務も課さない[2]。
選挙の公正を害するおそれのある情報の具体例も、あえて示していない[2]。例を挙げると、それ以外の情報は問題ないと受け取られたり、事業者が過剰に削除したりしかねないためだという[2]。他の手段があるのに投稿の削除をみだりに行うことは「適切ではない」とも明記した[2]。
罰則があるのは、実施状況の公表義務に関わる部分だ。公表をしない事業者には総務大臣が勧告・命令でき、命令に違反した法人には1億円以下の罰金が科されうる[2]。措置の中身そのものは行政処分や罰則の対象にしないことが、国会審議で確認されている[2]。
統一地方選が最初の試金石に
改正法の施行は2027年3月1日で、翌4月には統一地方選挙が控える。施行後まもない大型の選挙で、各社が収益化の停止やAI画像の警告表示をどこまで実際に動かせるかが、最初に試される場になる。
指針案は事業者の自主性を重んじる設計で、効果は各社の取り組みと、年1回の公表の中身にかかってくる。何を基準に措置をとり、どれだけの投稿に対応したのかを利用者が比べられる形で示せるかどうかで、表現の自由と選挙の公正の両立が実際に機能するかが見えてくるだろう。意見は電子政府の窓口(e-Gov)などで受け付ける[1]。
脚注
- 総務省「選挙の公正に対する悪影響を軽減するための措置の適切かつ有効な実施に関する指針案等に対する意見募集」(2026年10月23日) https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu02_02000497.html
- 総務省「選挙の公正に対する悪影響を軽減するための措置の適切かつ有効な実施に関する指針(案)」(別紙1) https://www.soumu.go.jp/main_content/001097532.pdf

