
茂木敏充外相は現地時間9月23日、国連総会に合わせてニューヨークで開かれた海洋安全保障に関する外相会合に出席し、ホルムズ海峡の自由で安全な航行の回復が極めて重要だと訴えた[1]。海峡の今後のあり方は、沿岸国だけでなく国際社会全体で議論すべきだとの考えも示した[1]。
53カ国・機関が参加した海洋安保の外相会合
外務省によると、会合の正式名称は「海洋の安全と安定の確保に向けた協力強化に関する外相会合」。日本に加え、エストニア、オランダ、フィリピン、カナダ、欧州連合(EU)、バーレーンが共催し、計53の国・機関から外相らが参加した[1]。
茂木氏は冒頭、日本が「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を推進しており、法の支配に基づく海洋秩序の維持・強化はその柱の一つだと説明した。国連海洋法条約に反映された国際法の順守が極めて重要だとして、東シナ海と南シナ海で力や威圧による一方的な現状変更の試みが続いていることに改めて反対した。南シナ海をめぐる2016年の仲裁判断から10年の節目にあたり、紛争当事国がこれに従う重要性も強調した[1]。
ホルムズ海峡に「いかなる追加的費用も受け入れられない」
中東情勢について、茂木氏はホルムズ海峡と紅海の入り口にあたるバブ・エル・マンデブ海峡で、自由で安全な航行を回復することが極めて重要だと述べた。そのうえでホルムズ海峡については「いかなる追加的費用も受け入れられない」と表明。海峡の今後のあり方について、沿岸国や利用国、国際海事機関(IMO)などを含む国際社会全体での議論が不可欠だと強調した[1]。
「追加的費用」という言葉は、海峡を通る船舶に費用を求める動きを念頭に置いたものとみられる。米国とイランは6月に戦闘の終結に向けた覚書に署名し、ホワイトハウスは海峡が自由な航行に再び開かれると説明していた[2]。一方、イランとオマーンは6月23日の共同声明で、両国外務省の合同作業部会を通じて、ホルムズ海峡の今後の航行管理や提供するサービス、それに伴う費用について合意を目指すとした[3]。通航に何らかの費用が課される余地が残るなかで、茂木氏の発言はこれにくぎを刺した格好だ。
外務省によると、参加国からはホルムズ・バブ・エル・マンデブ両海峡の航行回復や、国際社会全体でホルムズ海峡のあり方を議論していくことについて、多くの賛同が示された[1]。茂木氏はこのほか、黒海の自由な航行によるウクライナ産穀物の輸出確保や、海底ケーブルの防護に国際社会が共同で対処する必要性にも言及した[1]。
ホルムズ海峡の通航はなお正常化せず
茂木氏は8月17〜22日にもサウジアラビアとオマーンを訪れ、両国の要人とホルムズ海峡などの自由で安全な航行の確保に向けた連携を確認していた[4]。
日本は原油の大半を中東からの輸入に頼っており、その多くがホルムズ海峡を通る。サウジアラビアはペルシャ湾を通らずに紅海側へ原油を運ぶ東西パイプラインの復旧を急いでいるが、代替ルートには輸送量の限りがある。原油価格も高値圏が続いている。
「通航料」を前例にしないために
国際海峡の通航に沿岸国が独自の料金を課すことが認められれば、影響はホルムズ海峡にとどまらない。茂木氏が同じ場で東シナ海・南シナ海の問題と国連海洋法条約の順守を並べて語ったのは、中東の問題を「海洋秩序全体の問題」として位置づけ、各国の賛同を得やすくする狙いがあったとみられる。
一方で、呼びかけが実効性を持つかは別の問題だ。海峡の管理をめぐる話し合いは、当事国の米国とイラン、仲介するオマーンなどを中心に進む。利用国が発言力を持つには、今回のような多国間の枠組みで一致した立場を保ち続けることが欠かせない。53の国・機関が集まった今回の会合は、その土台づくりの第一歩と位置づけられる。
脚注
- 外務省「茂木外務大臣の「海洋の安全と安定の確保に向けた協力強化に関する外相会合」出席」(2026年9月23日) https://www.mofa.go.jp/mofaj/me_a/me2/pageit_000001_03221.html
- The White House "President Trump’s Iran Agreement Is America First in Action"(2026年6月19日) https://www.whitehouse.gov/releases/2026/06/president-trumps-iran-agreement-is-america-first-in-action/
- オマーン外務省 "Oman and the Islamic Republic of Iran issue a joint statement"(2026年6月23日) https://www.fm.gov.om/en/48943/
- 外務省「茂木外務大臣のサウジアラビア及びオマーン訪問(令和8年8月17日~22日)」 https://www.mofa.go.jp/mofaj/me_a/me2/pageit_000001_00002.html

