Meta・NEC・住友電工が海底ケーブル「Petal」構築へ

米Meta(メタ)、NEC、住友電気工業の3社は9月22日、米国とフランスを結ぶ大西洋横断の光海底ケーブル「Petal(ペタル)」を共同で構築すると発表した[1]。1秒間にペタビット(1000テラビット)級のデータを送れる世界初の商用ペタビット級海底ケーブルとなる見込みで、2029年の運用開始を予定している[1][2]。

米仏7000キロを結ぶ海底ケーブル「Petal」

発表によると、Petalの総延長は約7000キロ。Metaがケーブルの所有者として運用を担い、NECがシステム全体の設計と構築、住友電工が光ファイバーの供給を担当する[1]。Metaによると、フランス側の陸揚げは仏通信大手オレンジが支援する[2]。

伝送容量は毎秒1ペタビットで、Metaは、現在最も進んだ大洋横断ケーブルの2倍にあたると説明している。世界の人口の75%が同時に音楽をストリーミング再生できるほどの規模だという[2]。

1本に2つの通り道、マルチコアファイバー

大容量化のカギは、1本の光ファイバーの中に光信号の通り道(コア)を2本設けた「2コアのマルチコアファイバー」だ。Petalは24対(48心)のファイバーのすべてにこれを採用し、コアの数では48対に相当する構成にする。3社が以前に共同で構築した、世界初の大洋横断24ファイバーペアのケーブル「Anjana」と比べ、伝送容量を2倍に高める[1]。

海底ケーブルの容量を増やすには、ファイバーの本数を増やすのが一般的だった。しかし、ケーブルの太さや、海底の中継器に送る電力には限りがある。Metaの技術ブログによると、Petalはマルチコアファイバーを使うことで、必要な電力を比例して増やすことなく容量を2倍にし、既存の給電の上限の範囲に収めた。中継器はおよそ100台が必要になるという[3]。

NECは中継器に省電力化と高密度実装の技術を取り入れ、片側の陸揚げ局からの給電だけでも稼働できるようにした。これにより、障害への強さ(レジリエンス)も高めるとしている[1]。住友電工は海底用のマルチコア光ファイバー「2C Z-PLUS Fiber ULL」を供給する[1]。

AI時代の通信需要と日本の技術

Metaによると、海底ケーブルは大陸間の通信の約99%を運ぶ、インターネットで最も重要な物理的インフラだ。同社はこれまでに20以上の海底ケーブル事業に投資しており、大規模な海底ケーブル構想「Project Waterworth」も進めている[2]。

発表文でMetaは、海底ケーブルなどデジタルインフラへの投資を続けており、それが利用者に質の高いサービスを提供するために不可欠だとの考えを示した。NECの担当幹部は、大洋横断ケーブルでペタビット級の容量を実現することを「世界の通信インフラの歴史における画期的な成果」と位置づけた[1]。

生成AIの普及で、データセンター同士が大陸をまたいでやり取りするデータの量は増え続けている。巨大IT企業が自ら海底ケーブルを持つ背景には、急増する自社の通信需要に合わせて容量を確保したいという事情がある。そこで、設計・敷設を担うNECと、光ファイバーを供給する住友電工という日本企業が中核を担う意味は大きい。株式市場もこれに反応し、住友電工株は24日に大幅に続伸した[4]。

守るべきインフラとしての海底ケーブル

海底ケーブルは、安全保障の観点からも注目を集めている。茂木敏充外相は9月23日、ニューヨークで開かれた海洋安全保障に関する外相会合で、海底ケーブルの防護に国際社会が共同で対処する必要性を強調した[5]。

1本のケーブルで運べるデータが増えるほど、そのケーブルが切れたときの影響も大きくなる。Petalが片側からの給電で動く設計を採ったのは、こうしたリスクへの備えでもある。大容量化と、切れにくく止まりにくい設計を両立できるか。2029年の運用開始に向け、日本の技術力が試される。

脚注

  1. NEC(Meta、NEC、住友電工の共同発表)「Meta、NEC、住友電工、世界初の商用ペタビット級光海底ケーブルシステム「Petal」の構築に向けて協業」(2026年9月22日) https://jpn.nec.com/press/202609/20260922_01.html
  2. Meta "Announcing Petal, a First-of-its-Kind Transoceanic Subsea Cable"(2026年9月) https://about.fb.com/news/2026/09/announcing-petal-meta-petabit-transoceanic-cable/
  3. Engineering at Meta "Inside Petal: Building the World's First Petabit-Class Transoceanic Subsea Cable"(2026年9月21日) https://engineering.fb.com/2026/09/21/connectivity/petal-petabit-transoceanic-subsea-cable/
  4. 財経新聞「住友電工 大幅続伸、メタなどと海底ケーブルシステム「Petal」の構築に向け協業」(2026年9月24日) https://www.zaikei.co.jp/article/20260924/870989.html
  5. 外務省「茂木外務大臣の「海洋の安全と安定の確保に向けた協力強化に関する外相会合」出席」(2026年9月23日) https://www.mofa.go.jp/mofaj/me_a/me2/pageit_000001_03221.html
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