第一三共決算、コア営業益47%増 がん新薬が伸長

製薬大手の第一三共は2026年10月30日、2027年3月期の中間決算(2026年4〜9月)を発表した[1]。売上収益は前年同期比19.7%増の1兆1672億円、本業のもうけを示すコア営業利益は46.9%増の2213億円だった。がん治療薬「エンハーツ」と「ダトロウェイ」の販売が欧米で伸び、円安も追い風になった。通期の業績予想は7月の公表値を据え置いた。

第一三共の中間決算、主な数字

決算短信に示された中間期の業績は次のとおり[1]。

  • 売上収益:1兆1672億円(前年同期比19.7%増)
  • コア営業利益:2213億円(46.9%増)
  • 営業利益:1937億円(34.4%増)
  • 親会社の所有者に帰属する中間利益:1515億円(15.8%増)

コア営業利益は、営業利益から製品に関する無形資産の償却費や事業再編の損益などを除いた指標で、同社は今期から定義を変えた[1]。営業利益の伸びがコア営業利益を下回ったのは、欧州のスペシャルティ事業の再編費用を計上したためだ。

がん製品の部門が54.8%増

部門別にみると、欧米でがん製品を販売するオンコロジービジネスユニットの売上収益が4226億円と、前年同期より54.8%増えた[1]。現地通貨ベースでは26億5200万ドルで、41.9%の増収だった。

エンハーツとダトロウェイは、がん細胞を狙う抗体に抗がん剤を結びつけた「抗体薬物複合体(ADC)」と呼ばれる薬だ。上期には、米国でエンハーツのHER2陽性の早期乳がんの術前・術後療法、欧州でHER2陽性の複数の固形がんを対象とした承認を得るなど、使える範囲が広がった[1]。

  • ジャパンビジネスユニット:2327億円(6.9%減)
  • オンコロジービジネスユニット:4226億円(54.8%増)
  • アメリカンリージェントユニット:779億円(19.5%減)
  • 第一三共ヘルスケアユニット:483億円(5.1%増)

国内のジャパンビジネスユニットは、エンハーツなどが伸びた一方、抗凝固薬「リクシアナ」などの減収で前年を下回った[1]。米国で鉄剤などを扱うアメリカンリージェントも減った。

円安の効果は売上で739億円

上期の平均為替レートは1ドル159円37銭、1ユーロ184円35銭と、前年同期よりそれぞれ13円、16円ほど円安だった[1]。為替による増収の効果は739億円、コア営業利益の増益効果は227億円にのぼった。円安がなかった場合でも売上は大きく伸びた計算だが、利益の伸びの3割ほどは為替によるものになる。

費用面では、アストラゼネカとの共同販売の利益配分が増え、販売費・一般管理費が26.3%増の4661億円に膨らんだ[1]。研究開発費も10.7%増の2401億円で、5つのADCの開発などへの投資を増やしている。

通期予想は据え置き、配当は22円増の100円

通期の業績予想は、売上収益2兆3400億円(前期比10.2%増)、コア営業利益3600億円(15.6%増)のまま変えなかった[1]。上期のコア営業利益は通期予想の6割強を稼いだ。

株主還元では、年間配当を前期より22円多い100円とする予定で、中間配当50円を決めた[1]。2026〜2030年度の中期経営計画では、配当を維持・増配し続ける「累進配当」を掲げている。

ADCへの集中、伸びと集中のリスク

今回の決算は、エンハーツを中心とするADCが同社の成長を支えていることを改めて示した。承認される病気の範囲が広がるほど販売は伸びるが、その分、少数の製品に業績を頼る構図も強まる。

上期に通期予想の6割強を稼ぎながら予想を据え置いたのは、下期の為替や販売費の動きを慎重に見ているためとみられる。国内では主力の抗凝固薬の減収が続いており、ADCの伸びでどこまで補えるかが、通期の着地を左右する。

脚注

  1. 第一三共「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔IFRS〕(連結)」(2026年10月30日) https://www.daiichisankyo.co.jp/files/investors/library/quarterly_result/2026/FY2026Q2_Financial_Results_J.pdf
おすすめの記事