
政府は2026年10月29日、首相官邸で経済財政諮問会議を開き、予算編成の抜本見直しの具体化と、AIによる経済・社会の変革を見据えた政策づくりを議論した[1]。民間議員は、補正予算に恒常的に頼る運営から抜け出し、当初予算を中心とした計画的な予算運営に転換するよう提言した[2]。高市早苗首相は、議論を2027年度(令和9年度)予算編成の基本方針に反映するよう関係閣僚に指示した[1]。
諮問会議の予算編成改革、民間議員の主な提言
筒井義信、永濱利廣、南場智子、若田部昌澄の4人の民間議員が出した提言の柱は次のとおり[2]。
- 2027年度予算では、成長率や税収の見通し、歳出の規模、国債発行額などを示し、歳入・歳出の両面から財政の全体像を明らかにする
- 新規国債の発行額は、歳入・歳出の取り組みの結果として示す
- 成長投資は、年末にまとめる「日本成長戦略実行計画」と連動させ、複数年度の財政措置で民間が見通しを立てやすくする
- 継続的に必要な施策は当初予算で手当てし、補正予算は災害や予算編成後の情勢変化への対応などに絞る
- 基金にたまったお金の返納を進め、国庫債務負担行為(複数年度にわたる支出の約束)の活用を広げる
- 財務省は税収の見積もりと実績のずれを税目ごとに検証し、見積もりの精度と透明性を高める
外為特会の剰余金を「積極的に活用」
財源の面で目を引くのは、外国為替資金特別会計(外為特会)の扱いだ。提言は、今の為替水準を前提にすれば、為替の変動に備える余裕は当面十分にあるとして、外為特会の剰余金を財源として積極的に使うべきだとした[2]。
外為特会は、為替介入に備えて国が持つ外貨資産を管理する会計で、円安が進むと円換算での評価額や運用益が膨らむ。この剰余金を使う考え方は財源として期待される一方、為替が円高に振れれば余裕は縮む。提言も、一時的な収入と継続的な収入を分けて扱うよう求めており、恒常的な支出に充てる場合には慎重な線引きが必要になる。
首相、「当初予算中心」と税収見積もりの改善を指示
首相は会議のまとめで、城内経済財政担当相に対し、歳出だけでなく歳入も含めた財政の全体像を示すものとして予算編成の基本方針の策定を進めるよう求めた[1]。補正予算については、当初予算中心の運営に移る一方で、災害時や経済・物価情勢の変化に対応する場合の考え方をはっきりさせるよう指示した。
片山財務相には、内閣府と連携して税収見積もりの精度と透明性を高め、2027年度の予算編成に反映するよう求めた[1]。当初の見積もりを上回った税収が補正予算の財源に回る流れを改める狙いとみられる。
AI議題では「人工知能基本計画」の改定を指示
2つ目の議題のAIについて、民間議員は、官民でのAI活用による生産性の向上、雇用や人材育成への影響の継続的な把握、AIを使った攻撃を前提としたサイバーセキュリティの強化などを提案した[1]。
首相は古川大臣に、年末までにAIで変わった行政・産業・暮らしの具体像を示し、「人工知能基本計画」を改定するよう指示した[1]。サイバー攻撃の被害が国内企業で続いていることから、国民に向けて素早く情報を伝えることも求めた。城内大臣には、AIやロボットを生かした労働力確保の推進体制を人口に関する総合戦略に盛り込み、AIの影響を含む中長期の経済・社会のあり方の検討を来年の骨太方針に反映するよう指示した。
補正予算の扱いが、物価高対策と両立するか
補正予算への依存からの脱却は、財政の規律と透明性を高める点で筋の通った方向だ。ただ、政府は10月29日に燃料油補助の段階的縮小と冬の電気・ガス料金の支援を打ち出しており、当面の財源は予備費でまかなう[3]。物価高や中東情勢への対応が続くなかで、「情勢変化への対応」として補正予算を組む余地は残る。
提言自身も、補正予算に頼らないことは経済ショックの際に必要な財政対応をしないという意味ではないと断っている[2]。年末の2027年度予算案で、これまで補正で手当てしてきた施策をどれだけ当初予算に移せるかが、方針が実際に動くかどうかの分かれ目になる。
脚注
- 首相官邸「経済財政諮問会議」(2026年10月29日) https://www.kantei.go.jp/jp/105/actions/202610/29keizai.html
- 内閣府「予算編成の抜本見直しを実行に移すために~危機管理投資・成長投資の予見可能性と政策効果を高める予算運営~(有識者議員提出資料)」(2026年10月29日) https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2026/1029shiryo_01.pdf
- 首相官邸「中東情勢を踏まえた『緊急的激変緩和措置』の今後の対応についての高市内閣総理大臣記者会見」(2026年10月29日) https://www.kantei.go.jp/jp/105/statement/2026/1029kaiken.html

