
高市早苗首相は2026年10月27日、首相官邸でバングラデシュのタレク・ラーマン首相と首脳会談を行った。両国協力の柱であるベンガル湾の産業開発構想「BIG-B」を新しい形で進めることを確認し、首相は共同記者発表で、今後5年間で日本企業による約1兆円の民間投資が見込まれると述べた[1]。海上保安能力を高めるため、政府開発援助(ODA)で巡視船を供与することも新たに決めた。
バングラデシュとの首脳会談で確認したこと
首相官邸が公表した共同記者発表での首相の発言によると、主な内容は次のとおり[1]。
- 「ベンガル湾産業成長地帯」構想(BIG-B)を、新たな戦略的協力イニシアチブ「繁栄を分かち合うBIG-B」として推進
- 新たな4本柱:連結性の強化/災害・地政学リスクへの備え/官民による経済成長機会の創出とルール整備/平和と安定のための協力
- 今後5年間で日本企業による約1兆円の民間投資を見込む
- 経済連携協定(EPA)の早期発効など投資環境の整備と、近い将来のビジネスミッション派遣
- ODAによる巡視船の供与を新たに決定。政府安全保障能力強化支援(OSA)や防衛協力も継続
ラーマン氏は2月の総選挙を経て発足した政権の首相で、今回は10月26日からの日程で来日した。会談後には首相主催の昼食会も開かれた。
BIG-Bを「繁栄を分かち合う」形に
BIG-Bは、ベンガル湾沿いの港湾や電力、道路を一体で整備し、産業の集積を進めるための日本の協力構想だ。今回の刷新では、インフラ整備に加えて「災害・地政学リスクへの備え」と「平和と安定のための協力」が柱に入った。経済協力だけでなく、サプライチェーンの強靱化や海洋の安全まで視野に入れた枠組みに広げたといえる。
首相は会見で、東南アジアと南アジアを結ぶバングラデシュの潜在性は日本経済にとって極めて重要だと強調した。日本は自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の実現に向けた重要なパートナーとして同国を位置づけている。
EPAと後発開発途上国からの卒業
経済面で当面の焦点になるのはEPAだ。両国は2月にEPAに署名し、政府は10月16日に国会承認を求めることを閣議決定している(日バングラデシュEPA、国会承認求め閣議決定)。首相が会見で「早期発効」に触れたのは、この承認手続きを念頭に置いたものだ。
バングラデシュは11月24日に国連の後発開発途上国(LDC)の分類から卒業する予定だ[2]。卒業すると、先進国が後発国向けに認めてきた関税の優遇を段階的に失う。EPAで関税の扱いを定めておくことは、同国に進出する日本企業にとっても輸出拠点としての条件を保つ意味がある。
投資1兆円の中身が問われる
今回示された約1兆円は、政府の資金ではなく日本企業による民間投資の見込みだ。実現するかどうかは、電力供給の安定や通関手続きなど、現地の投資環境がどこまで整うかに左右される。首相が表明したビジネスミッションの派遣時期や、EPAの国会審議の日程が、次の具体的な手がかりになる。
安全保障面では、ODAによる巡視船の供与とOSAの継続を並べた。海上保安能力の支援は経済協力と並ぶもう一つの軸として続きそうだ。
脚注
- 首相官邸「日・バングラデシュ首脳会談」(2026年10月27日) https://www.kantei.go.jp/jp/105/actions/202610/27bangladesh.html
- United Nations OHRLLS「LDC Category」 https://www.un.org/ohrlls/content/ldc-category

