
政府は2026年10月26日夕、首相官邸で第1回の「サイバーセキュリティに関する関係閣僚会議」を開いた[1]。企業などを狙ったサイバー攻撃で大規模な情報漏えいが相次いでいるためで、高市早苗首相は被害を受けた企業の支援拡充などを指示し、1週間程度をめどに緊急対策パッケージをまとめる方針を示した[1]。
会議の開催を発表した官房長官は同日午前の記者会見で、漏えいした情報の悪用による二次被害も起きているとして「深刻な事態」だと述べていた[2]。
サイバー攻撃対策、閣僚会議の顔ぶれ
官房長官の説明では、会議には首相と官房長官のほか、サイバー安全保障担当相、国家公安委員長、財務相兼金融担当相、総務相、経済産業相、国土交通相、防衛相が出席する予定とされた[2]。首相は会議で、相次ぐ攻撃による情報漏えい被害が多数生じているとして、政府の総力を挙げて対策を加速するよう求めた[1]。
首相の指示は5つの柱
首相が示した指示は、おおむね次の5つに分けられる[1]。
- 被害企業の支援:情報処理推進機構(IPA)や警察の相談窓口を広げ、民間団体や自治体とも連携する。初動から復旧まで民間の専門知識を使える仕組みを国家サイバー統括室と経済産業省で作る。中小企業向けの「サイバーセキュリティお助け隊」の体制を拡充する
- 情報の集約と発信:セキュリティ企業の参加を広げて分析力を高める。各閣僚が所管業界の被害企業から情報を集めて国家サイバー統括室に集約し、経営者・専門家・一般向けに脅威に応じた情報を出す
- 攻撃への対処:実態が分かった攻撃には、アクセス・無害化措置を含むあらゆる選択肢から戦略的に対処する。同盟国・同志国と連携して攻撃者の特定を進める
- 脆弱性の点検:高性能なAIを使う専門家による疑似攻撃でシステムの弱点を探す取り組みと、中小企業を含むサプライチェーン全体での攻撃観測網づくりを、IPAの知見を生かして早期に進める
- 政府システム:全閣僚が所管の情報システムをAIで脆弱性点検し、守りを固める
相次ぐ漏えいが背景に
10月には民間企業で大規模な漏えいの公表が続いた。カプコンは会員サービスへの不正アクセスで全世界1177万件の情報が漏えいしたと発表し[3]、ウェブサイト作成サービスやメール配信サービスへの攻撃では官公庁の問い合わせ情報にも被害が及んだ可能性がある(Studioとブラストメールへの不正アクセスに関する記事)。
自民党の国家サイバーセキュリティ戦略本部も10月23日、首相に対策の抜本強化を求める提言を申し入れていた(自民党の提言に関する記事)。10月1日には、重大な攻撃の兆しがあれば攻撃元のサーバーにアクセスして無害化できる能動的サイバー防御の運用が始まっている(能動的サイバー防御に関する記事)。
中小企業と取引網の守りが実効性を左右
今回の指示で目を引くのは、重要インフラに限らず「被害を受けた企業」全般を視野に入れた点だ。各閣僚に業界ごとの被害情報を集めさせる仕組みは、これまで個別の企業任せだった被害の実態を政府が把握する第一歩になる。
一方で、攻撃は守りの弱い取引先や委託先から入り込むことが多い。サプライチェーン全体の観測網や中小企業への支援を掲げても、人材や費用が足りない企業が実際に使える形にならなければ穴は残る。首相は財政措置を含めた検討も指示しており[1]、来週中にまとまる緊急対策パッケージに予算の裏付けと具体的な支援の規模が盛り込まれるかが、実効性を測る材料になる。
脚注
- 首相官邸「サイバーセキュリティに関する関係閣僚会議」(2026年10月26日) https://www.kantei.go.jp/jp/105/actions/202610/26kaigi_cyber.html
- 首相官邸「内閣官房長官記者会見 令和8年10月26日(月)午前」 https://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/202610/26_a.html
- カプコン「不正アクセスによるお客様情報漏えいのお詫びとお知らせ」(2026年10月22日) https://www.capcom.co.jp/ir/news/html/261022.html

