
米グーグルは9月30日、新たな最先端AIモデル「Gemini 4 Argon(ジェミニ4アルゴン)」を発表した[1]。1回の応答で出力できる量の上限を、従来の6万4000トークンから100万トークンへ大幅に引き上げたのが特徴だ[1]。まずはサイバー防御を担う信頼できる組織に限って提供し、開発者や企業、一般の利用者には段階的に広げるという[1]。
Gemini 4 Argon、出力上限は100万トークン
トークンは、AIが文章を処理するときの単位だ。発表は、グーグル・ディープマインドの上級副社長で同社の最高AIアーキテクトを務めるコライ・カブクチュオール氏が、公式ブログで行った[1]。
出力上限が大きくなると、長いプログラムや大部の文書を、途中で区切らずに一度に生成できる。グーグルはArgonを、実際のソフトウェア開発、法務や金融といった企業の知的業務、サイバー防御など、長時間にわたる複雑な作業向けのモデルと位置づけている[1]。
同社が公表した主な評価結果は次のとおりだ。いずれもグーグル自身による発表値である[1]。
- ソフトウェア開発の評価「DeepSWE v1.1」:77.9%
- 脆弱性の修正を測る「CWE-bench v1」:68%
- 業務自動化の評価「AutomationBench」:51.3%
- 長い動画の理解を測る「LVBench」:91.7%
グーグルは、金融・コーディング・法務・税務の業務への影響を米国のGDPに占める比重で重み付けして測る「Vals Index」でArgonが首位になったとし、法務や金融の専門的な評価でも上位に立ったと説明している[1]。強みとして前面に出しているのは、長時間の開発作業や専門職の知的業務だ。
まずサイバー防御の担い手に限定提供
Argonは当初、グーグルの「Fairwind(フェアウインド)プログラム」を通じて、審査を経たサイバー防御の担い手に提供される[1]。同プログラムは9月2日に始まった政府や信頼できるパートナー向けの限定的な枠組みで、参加組織は、利用者を社内のセキュリティー担当などに限ることや、多要素認証の導入などの運用基準に同意する必要がある[2]。カブクチュオール氏は、この水準の能力を安全に世に出すには段階的な手法が必要だとしている[2]。
防御する側が能力を十分に使えるよう、このプログラムの参加者には、ほかの利用者に適用するサイバー分野の制限を外した形で提供する[1]。グーグルは不正利用を防ぐため、モデルの内部の動きや推論の過程を監視するという[1]。米政府が進める、公開前のモデルを自主的に提供して確認を受ける仕組みにも参加している[1]。
次の段階として、有料のAPI利用者と、上位プラン「Google AI Ultra」の契約者に提供を広げる予定だが、具体的な時期は示されていない[1]。
料金は導入期の割安価格から
API料金は、導入期の価格として100万トークンあたり入力2ドル、出力10ドルとした。キャッシュ(一度読み込んだ入力の再利用)は95%引きになる。導入期の後は、入力4ドル、出力20ドルに上がる[1]。
社内ではコード移行や効率化に
グーグルは社内での活用例も紹介した。量子計算のアルゴリズムの最適化で既存の手法を40%上回る成果を出したほか、データセンター全体で300TiB(テビバイト)以上のメモリーを空けられる改善点を見つけた。C言語やC++で書かれた80万行を超えるプログラムを、安全性の高い言語Rustに書き換える作業にも使ったという[1]。
「強いAI」をどう世に出すか
サイバー防御に役立つ能力は、裏を返せば攻撃にも使える。最も能力の高いモデルを、まず守る側に限って渡すという今回の手法は、AIの性能競争が「どう安全に配るか」の競争にも移りつつあることを示している。米国ではAI大手が政権と安全対策で合意する動きもあり、段階的な公開は業界の新しい作法になりつつある。
利用者の側にも課題は残る。100万トークンもの出力を一度に得られても、その中身を人が確かめる手間は消えない。AIが長い仕事を任されるほど、成果物の正しさをどう検証するかが重要になる。発表では国・地域ごとの提供時期は示されておらず、日本の企業や開発者がいつ使えるようになるのかも注目される。
脚注
- Google(The Keyword)「Gemini 4 Argon: our next era of frontier intelligence」(2026年9月30日) https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/gemini-models/gemini-4-argon/
- Unite.AI「Google Announces Gemini 4 Argon Frontier Model for Coding, Cyber Defense」 https://www.unite.ai/google-announces-gemini-4-argon-frontier-model-for-coding-cyber-defense/

