肥料原料の備蓄、13件目を認定 りん安は2.5か月分

農林水産省は2026年10月23日、経済安全保障推進法に基づく肥料原料の備蓄計画として、サンアグロ(東京都中央区)のりん酸アンモニウム(りん安)の備蓄を認定したと発表した[1]。2023年に始まった認定は13件目となる[2]。

農水省によると、これでりん安の備蓄体制は年間需要量の2.5か月分になった[3]。国は2027年度までに3か月分を備蓄する目標を掲げており、りん安はまだ届いていない[3]。

肥料原料の備蓄計画、今回の認定の中身

  • 認定日:2026年10月23日[1]
  • 事業者:サンアグロ株式会社[1]
  • 備蓄する原料:りん酸アンモニウム。保管施設の整備は伴わない[1]
  • 位置づけ:5回目の公募による認定で、通し番号は13番[1]
  • 支援:認定により、安定供給確保支援法人の肥料経済研究所から保管料の助成を受けられる[1]

農水省はこれまで4回の公募で12件を認定していた[1]。認定済みの事業者には、全国農業協同組合連合会(全農)、ホクレン肥料、伊藤忠商事などが並び、うち4件は保管施設の整備も伴う[2]。塩化加里(塩化カリウム)は目標を達成したため、5回目の募集はりん安だけを対象に行われ、10月に終わった[2]。

りん安は中国に7割、塩化加里はカナダに8割

化学肥料の主な原料である尿素、りん安、塩化加里は、ほぼ全量を輸入に頼っている[3]。2024肥料年度(2024年7月〜2025年6月)の輸入相手国は次のとおりだ[3]。

原料 輸入量 主な輸入相手国
尿素 約26万トン マレーシア74%、ベトナム10%
りん安 約37万トン 中国72%、モロッコ21%
塩化加里 約23万トン カナダ78%、イスラエル7%、ヨルダン4%

資源が特定の地域に偏っているため、輸入相手国も偏る[3]。2021年秋以降は中国による輸出検査の厳格化やロシアのウクライナ侵略で輸入が滞り、代わりの国から調達する動きが出たと農水省は説明している[3]。肥料が2022年12月に経済安全保障推進法の「特定重要物資」に指定されたのも、こうした供給途絶のリスクを踏まえたものだ[2][3]。

中東情勢で尿素とりん安の価格が最高値

農水省が10月にまとめた資料では、2026年に入ってからの中東情勢の緊迫化が肥料原料の輸入価格にも及んだ[3]。尿素は国際価格の急騰で5月に輸入価格が最高値を更新し、その後は中東以外からの供給増で6月以降に大きく下がった[3]。りん安は、製造に使う硫黄の国際価格上昇や為替の影響で7月に最高値を更新した[3]。塩化加里は中東への依存が低く、比較的安定しているという[3]。

備蓄の支援には、2022年度補正予算で160億円が計上され、その後は2023年度に1億円、2024年度以降は毎年2600万円が計上されている[3]。助成の対象は備蓄にかかる保管料、保険料・金利相当額と、保管施設の整備費用だ[3]。

りん安の残り0.5か月分が課題

りん安は輸入の7割余りを1か国に頼り、価格も中東情勢の影響を受けて最高値を付けた。3か月分の備蓄は、輸入が止まったときに次の調達先を確保するまでの時間を稼ぐ仕組みであり、目標に0.5か月分届かない状態は、最も偏りの大きい原料で備えが薄いことを意味する。

今回の認定は施設整備を伴わず、既存の倉庫で保管する形だ[1]。期限の2027年度までに残る分を積み増すには、保管場所の確保と、価格が高い局面で在庫を持つ事業者の負担をどう抑えるかが条件になる。次の公募の時期と対象が、目標達成の見通しを測る材料になりそうだ。

脚注

  1. 農林水産省「経済安全保障推進法に基づく肥料原料の備蓄に係る供給確保計画の認定(サンアグロ株式会社)について」(2026年10月23日) https://www.maff.go.jp/j/press/nousan/sizai/261023.html
  2. 農林水産省「経済安全保障推進法に基づく肥料原料の国内備蓄について」 https://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/sizai/s_hiryo/221228.html
  3. 農林水産省 農産局技術普及課「肥料をめぐる情勢」(2026年10月) https://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/sizai/s_hiryo/attach/pdf/index-245.pdf
おすすめの記事