
米テレビ局のCNN、MS NOWと政治ニュースサイトのポリティコは現地時間9月21日、所属記者をホワイトハウスから締め出した措置は合衆国憲法が保障する報道の自由や適正な手続きを侵害しているとして、トランプ大統領らを首都ワシントンの連邦地裁に提訴した[1]。
記者証を無効化、敷地への立ち入りを拒否
発端は18日だった。訴状によると、トランプ大統領は同日、自身のSNSで3社の記者をホワイトハウスから「即時」締め出すと表明し、3社の報道を「フェイクニュース」だと非難した[1]。同じ日の大統領執務室での記者会見でも、特定の記事がきっかけではなく、過去2年間の報道の積み重ねだと説明したという[1]。3社の記者が使う通行証(ハードパス)は夜のうちに無効にされ、翌朝、ホワイトハウスに入ろうとした記者は立ち入りを拒まれ、記者証を取り上げられた[1]。
原告には3社のほか、各社のホワイトハウス担当記者3人も加わった。被告はトランプ氏のほか、チャン大統領補佐官(広報担当)、ワイルズ大統領首席補佐官、カラン・シークレットサービス長官だ[1]。訴状は、報道内容への見方を理由にした報復で修正第1条に反するうえ、事前の通知も反論の機会もなく記者証を取り消したのは修正第5条の適正手続き条項にも違反すると主張し、措置の一時差し止めを求めた[1]。
これに対し政権側は22日、裁判所に出した書面で、ホワイトハウスへの立ち入りは権利ではなく特権だと主張した[2]。3社が機密情報や機微な情報を報じるなど、立ち入りを認められた者に求められる職業上の水準を守らなかったとする書簡を各社に送り、25日までに反論する機会を与えたとして、差し止め請求の却下を求めた[2]。
2018年にも記者証の復活命令
審理を担当するのは連邦地裁のティモシー・ケリー判事だ[3]。同じ連邦地裁は2018年11月、CNNのジム・アコスタ記者の記者証を政権が停止した措置をめぐる訴訟で、記者証の復活を命じ、政権はこれに従っている[1]。
判事は記者証の返還を命令
ケリー判事は24日、3社の求めを認めて一時差し止め命令を出した[3]。トランプ氏本人を除く被告らに対し、9月18日ごろに取り消された3社の社員の記者証を直ちに返還・復活させるよう命じた。命令の効力は14日間で、その間に仮差し止めに向けた審理を急ぐとしている[3]。
判事は、記者証には憲法上保護される利益があり、事前の通知と反論の機会なしには取り消せないとした過去の連邦高裁判決に従う必要があるとして、少なくとも適正手続きの主張について原告が勝つ見込みがあると判断した[3]。政権側が挙げた国家安全保障上の理由についても、現時点の記録からは、それが実際の動機なのか、記者証の取り消しで安全保障が守られるのかに疑問を示した[3]。
「取材の場」を誰が決めるのか
2018年の訴訟は記者1人の記者証をめぐる争いだったが、今回は報道機関3社をまとめて締め出した点で規模が違う。ホワイトハウスの取材は限られた空間で行われるため、誰を入れるかにはある程度の裁量が伴う。しかし、その裁量が報道内容への評価で行使されれば、政権に好意的な報道だけが現場に残ることになりかねない。
今回の命令は14日間の一時的なもので、争いは仮差し止めの審理に移る。裁判所の判断は、大統領と報道の距離をどう保つかという、より大きな問いにつながる。
追記(2026年10月6日)命令後も入館を拒まれ、3社が申し立て
3社は命令が出た24日の朝、記者がホワイトハウスへの入館を拒まれ、シークレットサービスの係官に記者証を取り上げられたとして、政権側が命令に従っていないと裁判所に申し立て、即時の審理を求めた[4]。政権側は同日、ホワイトハウスで報道業務を担う責任者の宣誓供述書を裁判所に提出した[5]。命令の効力は14日間で、審理はその後も続く。
脚注
- 米連邦地裁(コロンビア特別区)Cable News Network, Inc. v. Trump, No. 1:26-cv-03287, Complaint for Declaratory and Injunctive Relief(訴状、2026年9月21日提出、英語。CourtListener掲載) https://storage.courtlistener.com/recap/gov.uscourts.dcd.296754/gov.uscourts.dcd.296754.1.0_1.pdf
- 同訴訟 Defendants' Opposition to Plaintiffs' Motion for a Temporary Restraining Order(政権側の答弁書、2026年9月22日提出、英語) https://storage.courtlistener.com/recap/gov.uscourts.dcd.296754/gov.uscourts.dcd.296754.16.0_2.pdf
- 同訴訟 Temporary Restraining Order(ティモシー・ケリー判事の一時差し止め命令、2026年9月24日、英語) https://storage.courtlistener.com/recap/gov.uscourts.dcd.296754/gov.uscourts.dcd.296754.24.0_3.pdf
- 同訴訟 Corrected Notice of Defendants' Non-Compliance with Temporary Restraining Order and Request for Immediate Hearing(原告の申し立て、2026年9月24日提出、英語) https://storage.courtlistener.com/recap/gov.uscourts.dcd.296754/gov.uscourts.dcd.296754.26.0.pdf
- 同訴訟 Declaration of Micah Stopperich(政権側の宣誓供述書、2026年9月24日提出、英語) https://storage.courtlistener.com/recap/gov.uscourts.dcd.296754/gov.uscourts.dcd.296754.28.0.pdf

