
警察庁は2026年10月19日、ストーカー行為の規制の在り方を話し合う有識者検討会の初会合を開いた[1][4]。一定の加害者にGPS機器を装着させて被害者への接近を知らせる仕組みと、治療・カウンセリングの受診を義務づける仕組みの導入が主な論点になる[2]。
検討会は法学者や心理の専門家、弁護士、ストーカー事件の遺族ら8人で構成し、法務省や厚生労働省、最高裁判所の担当部局がオブザーバーとして加わる[3]。
ストーカー対策の現状、禁止命令は過去最多
警察庁が初会合に示した資料によると、2025年のストーカー事案の相談などは2万2881件で、前年から3314件(16.9%)増えた。都道府県公安委員会が出す禁止命令等は3037件と、前年から622件(25.8%)増えて過去最多になった[2]。
禁止命令等は、つきまといを繰り返すおそれがある人に対して出す、ストーカー規制法で最も重い行政措置だ。命令に違反してストーカー行為をすれば、2年以下の拘禁刑か200万円以下の罰金が科される[2]。
命令後も1割弱が再びつきまとい
ただ、命令だけでは止まらない加害者もいる。2022年7月から2025年6月までの3年間に禁止命令等を受けた6548人のうち、497人(約7.6%)が命令の期間中に同じ被害者へのつきまといを再び行っていた[2]。
警察は2024年3月から、禁止命令等を受けた全員に治療やカウンセリングを受けるよう働きかけている。しかし、2025年に受診などにつながったのは147人で、同じ年に命令を受けた3037人の5%に満たない[2]。被害者を守る手段も、110番の緊急通報装置やホテルへの一時避難が中心で、加害者が近づいてきたことに被害者が気づいてからでないと機能しないという課題がある。
池袋の事件が見直しの契機に
見直しのきっかけは、2026年3月に東京都豊島区の商業施設で起きた殺人事件だ。警察庁の資料によると、加害者は交際していた女性へのつきまといでストーカー行為罪で逮捕され、罰金刑を受けたうえ緊急の禁止命令等も受けていた。受診の働きかけも拒み、命令に違反して女性の勤務先に押しかけ、犯行に及んだ[2]。
政府は7月28日の犯罪対策閣僚会議で「詐欺及びストーカー被害拡大防止のための緊急対策」を決め、GPS機器の装着による接近通知と、受診の義務づけについて検討を進めるとした[2]。
ストーカー加害者へのGPS装着、本人の同意なしにどこまで縛れるか
検討会の論点は、制度の中身と同時に、その正当性にも及ぶ。資料には、治療やカウンセリングを本人の同意なく義務づけることの妥当性、義務に従わない場合の罰則、GPS装着を決める際に裁判所などの第三者機関を関与させる必要性、被害者保護と加害者の人権制約のバランスといった項目が並ぶ[2]。
GPS装着については、法務省が仮釈放中の性犯罪者などを対象に保護観察での活用を検討しており、その議論も参考にするとしている[2]。刑罰を終えた人や、刑事罰に至っていない人の行動をどこまで監視できるかは、刑事手続きの外での自由の制限になるだけに、慎重な線引きが要る。一方で、再発率7.6%という数字は、命令という「紙」だけでは守り切れない被害者がいることを示している。対象者を危険性の高い一部に絞り込む基準と、受け皿となる医療機関の確保を、検討会がどこまで具体的に示せるかが問われる。
脚注
- 警察庁「第1回 ストーカー行為等の規制等の在り方に関する有識者検討会 議事次第」(2026年10月19日) https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/stalker/1gijishidai.pdf
- 警察庁「ストーカー対策の現状と課題」(第1回検討会 資料3、2026年10月19日) https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/stalker/1shiryou3.pdf
- 警察庁「ストーカー行為等の規制等の在り方に関する有識者検討会 構成員一覧」(第1回検討会 資料2) https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/stalker/1shiryou2.pdf
- 警察庁「ストーカー総合対策・有識者検討会・調査研究」 https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/stalker/index.html

