
ゼリア新薬工業(ゼリア新薬)は2026年10月26日、スイスの子会社ティロッツ・ファーマ(Tillotts Pharma)が、ドイツの医薬品メーカーHaupt Pharma Wülfling(HPW)の全持分を取得して買収する契約を結んだと発表した[1]。HPWは主力の潰瘍性大腸炎治療薬「アサコール」の製造の大部分を担ってきた工場で、ゼリアは製造を自社グループ内に取り込む。
ゼリア新薬が買収するHPWの概要
発表によると、取引の概要は次のとおり[1]。
- 買い手:Tillotts Pharma AG(スイス、ゼリア新薬の100%子会社)
- 対象:Haupt Pharma Wülfling GmbH(独ニーダーザクセン州グローナウ)。医薬品の製造
- 売り手:医薬品の開発製造受託(CDMO)を手がける独Aenova Holding
- 取得割合:100%(取得価額は非開示)
- 契約日:2026年10月23日(スイス時間)。譲渡の実行は当局の承認などを経て2027年1月以降の予定
HPWの売上高は2023年12月期の約5101万ユーロから、2025年12月期には約4106万ユーロに減っている。総資産は約5567万ユーロ。ゼリアは、営業利益などは適時開示の軽微基準内だとして公表していない。
委託先の工場を自社のものに
ティロッツは消化器疾患に特化した製薬会社で、アサコールなどの医療用医薬品を世界約65か国で販売している。HPWは長年、そのアサコールの製造の大部分を受託してきた。ゼリアは買収の狙いについて、製造を内製化することで製造能力や生産計画、品質管理を直接管理できるようになり、長期的な安定供給の体制が強まると説明している[1]。固形製剤の開発・製造・包装や治験薬の扱いに慣れた従業員を迎え入れることも理由に挙げた。
前期は供給不足でアサコールが伸び悩む
安定供給を前面に出す背景には、前期の経験がある。ゼリアの2026年3月期決算短信によると、アサコールは国内市場の苦戦に加え、海外で製造委託先の生産設備の不具合によって製品の供給が不足し、第3四半期までは減収だった[2]。設備の復旧後に海外の販売が持ち直し、通期では増収となった。ゼリアは委託先の社名を明らかにしていないが、主力品の供給が外部の工場の稼働に左右されることが、業績のぶれとして表に出た形だ。
ゼリアの2026年3月期の連結売上高は891億円で、海外売上高比率は59.3%に達する[2]。今期は売上高950億円を見込み、その前提としてアサコールなど海外の主力品の好調を挙げている。
買収で増える負担と得るもの
製造を自社で抱えれば、工場の設備更新や人員の確保といった固定費を自ら負うことになる。HPWの売上高はこの3年で約2割減っており、アサコール以外の受託をどこまで維持できるかも課題になる。ゼリアは今後、HPWへの継続的な投資で製造能力と生産効率を高めるとしている。
業績への影響は精査中で、開示すべき事項があれば知らせるという。譲渡が実行される2027年1月以降、来期の業績予想にどう織り込むかが、買収の効果を測る最初の手がかりになる。
脚注
- ゼリア新薬工業「当社連結子会社によるHaupt Pharma Wülfling GmbHの持分取得(孫会社化)に関するお知らせ」(2026年10月26日) https://www.zeria.co.jp/media/release20261026.pdf
- ゼリア新薬工業「2026年3月期 決算短信」(2026年5月8日) https://www.zeria.co.jp/media/kessan202603_004.pdf

