
水産庁は2026年10月29日、国際原子力機関(IAEA)が東京電力福島第一原子力発電所のALPS処理水の海洋放出に関する追加的モニタリングの報告書を10月28日に公表したと発表した[1]。2025年9月に福島県いわき市の漁港で選んだ水産物を、日本とIAEA、第三国の分析機関がそれぞれ分析した結果をまとめたもので、放出が人や環境に与える放射線の影響は無視できるほどだとした2023年7月の包括報告書の結論と整合しているとしている。
ALPS処理水、IAEAの追加的モニタリングで何を調べたか
今回の報告書の対象は、2025年9月10日に行った試料の選定と分析だ[1]。
- 場所:福島県いわき市内の漁港で水揚げされた水産物
- 選んだ人:IAEA関係者と、IAEAが指名した韓国、スイス、中国、ニュージーランド、ロシアの分析機関の専門家
- 分析:日本の分析機関、IAEA、第三国の分析機関がそれぞれ個別に分析
水産庁は2025年8月の時点で、9月10日と12日にIAEAが福島県沖の水産物の試料採取や前処理、分析の状況を確認すると発表していた。このときはフランスの分析機関も参加すると説明していた[2]。
3つの枠組みで重ねる国際的な確認
IAEAによる日本の海域モニタリングの確認には、性格の違う3つの枠組みがある[2]。
- 福島第一原発事故に関わる海域モニタリングの分析機関間比較(ILC):2014年9月から実施
- ALPS処理水に関わる海域モニタリングのILC:2022年11月から、トリチウムなどの分析結果を比べる
- 追加的モニタリング:2024年9月に日本とIAEAが従来のモニタリングの拡充で一致したことを受けて実施
ILCは、同じ試料を複数の機関が分析して結果を比べ、測定方法が適切かを確かめる仕組みだ。IAEAは9月にも、2024年に行ったALPS処理水のILCの報告書を公表し、日本の分析機関が高い能力と信頼性を示していると報告していた[3]。今回の追加的モニタリングは、水揚げされた魚を第三国の専門家自身が選ぶ点に特徴がある。
中国やロシアの機関が加わる意味
追加的モニタリングに参加した第三国の機関には、ALPS処理水の放出に反発してきた中国も入っている。試料を選ぶ段階から中国やロシアの専門家が関わり、それぞれ独自に分析したうえで、IAEAが結論の整合を確認したことになる。日本の測定結果だけに頼らない形をとることで、結果の受け止めが政治的な立場に左右されにくくなる。
次の確認は2026年分の試料
今回公表されたのは2025年9月に選んだ試料の結果で、2025年2月にも追加的モニタリングが行われている[2]。ILCの報告書も2024年分が2026年9月に出たばかりで[3]、試料の採取から報告書の公表までには1年以上かかっている。各国の機関が同じ結論にそろう結果が積み重なるほど、福島県沖の水産物の安全性を海外に説明する材料は厚くなる。
脚注
- 水産庁「ALPS処理水の海洋放出に関する国際原子力機関(IAEA)の枠組みの下での追加的モニタリングの分析結果に関する報告書の公表」(2026年10月29日) https://www.jfa.maff.go.jp/j/press/kenkyu/261029.html
- 水産庁「国際原子力機関(IAEA)の枠組みの下で実施する水産物試料採取について」(2025年8月28日) https://www.jfa.maff.go.jp/j/press/kenkyu/250828.html
- 水産庁「国際原子力機関(IAEA)により実施されたALPS処理水に係る分析機関間比較(ILC)の報告書の公表」(2026年9月28日) https://www.jfa.maff.go.jp/j/press/kenkyu/260928_1.html

