カスハラ・就活セクハラ対策、1日から全事業主に義務

顧客などからの著しい迷惑行為である「カスタマーハラスメント(カスハラ)」への対策と、就職活動中の学生らへのセクシュアルハラスメント(就活セクハラ)の防止措置が、10月1日から事業主の義務になった[1][4]。企業の規模を問わず、従業員を1人でも雇うすべての事業主が対象だ[2]。2025年6月に成立した改正労働施策総合推進法と改正男女雇用機会均等法に基づく[3][4]。

カスハラの定義は「3つの要素」

厚生労働省によると、カスハラは次の3つの要素をすべて満たすものをいう[1]。

  • 顧客や取引の相手、施設の利用者など、事業に関係のある人が行う
  • 社会通念上許容される範囲を超えた言動である
  • それによって労働者の就業環境が害される

国の指針では、許されない言動の例として、理由のない要求や契約を大きく超えるサービスの要求、不当な損害賠償の要求といった「内容」の問題と、暴力や脅迫、土下座の強要、長時間の居座りやしつこい電話といった「手段・態様」の問題を挙げている[1]。正当な苦情や要望まで封じるものではない点にも注意が要る。

事業主に義務づけられるカスハラ対策

事業主には、次のような雇用管理上の措置が求められる[4]。

  • カスハラに対する方針を明確にし、従業員に周知・啓発する
  • 相談に応じ、適切に対応するための体制(相談窓口など)を整える
  • カスハラが起きたときに、事実を確認し、迅速かつ適切に対応する
  • 悪質な事案への対応方針をあらかじめ定めるなど、抑止のための措置をとる
  • 相談者のプライバシーを守り、相談を理由とした不利益な扱いを禁じる

義務に違反した事業主には、国が報告を求めたり、助言・指導・勧告をしたりでき、勧告に従わない場合は公表の対象にもなる[1][4]。

カスハラの相談は増えている

厚労省の2023年度の実態調査では、過去3年間に従業員から顧客などによる著しい迷惑行為の相談があった企業は27.9%で、前回の調査から8.4ポイント増えた。内容で最も多かったのは「継続的な、執拗な言動」(72.1%)だった[4]。

就活セクハラも防止の義務に

今回の改正では、セクハラ防止措置の対象が、社内の労働者から就職活動中の学生やインターンシップの参加者、転職活動中の応募者など「求職者等」にも広がった[3]。

企業には、就活セクハラを禁じる方針の明確化と周知、面接や面談のルールづくり、相談窓口の整備、起きたときの迅速な対応などが求められる。面談を複数人で行う、社員と学生の個人的なSNSでのやり取りを控えるといったルールも例として挙がっている[3]。厚労省の2023年度の調査では、就職活動中にセクハラを受けた経験のある学生は31.9%、インターンシップ中では30.1%にのぼった[3]。

現場を個人任せにしない仕組みを

接客の現場では、理不尽な要求にも「お客様だから」と耐えるよう求められる場面が少なくなかった。厚労省は、現場での対応を個人に任せない仕組みづくりが必要だと呼びかけている[4]。従業員が一人で抱え込まずに済む体制を整えることは、人手不足のなかで働き手を守り、離職を防ぐことにもつながる。

就活セクハラは、立場の弱い学生が内定への影響を恐れて声を上げにくいという構造的な問題を抱える。義務化は企業にとって負担でもあるが、働く人と、これから働く人を守る最低限のルールだ。方針を作って終わりにせず、実際に機能する窓口と対応を用意できるかが問われている。

脚注

  1. 厚生労働省「あかるい職場応援団 カスタマーハラスメント」 https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/harassment_list/customer-hara
  2. 日本橋法律特許事務所「カスハラ防止措置の義務化とは」 https://corporatelaw-nihombashi-law.jp/compass/labor-practice/harassment/mandatory-customer-harassment-prevention-measures/
  3. CHR「就活セクハラ防止措置とは?」 https://chr.co.jp/blog/syuukatsu-sekuhara/
  4. 厚生労働省「従業員を守るために ― カスタマーハラスメント対策の新ルール」(2026年8月20日) https://www.mhlw.go.jp/web_magazine/series/20260820.html
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