
国土交通省は2026年10月23日、7月の熊本地震で工場の煙突が倒壊したことを受けて実施した全国調査の結果を公表した[1]。高さ60メートルを超える鉄筋コンクリート造の煙突は全国に444本あり、このうち180本(約4割)で損傷や劣化が確認された[1]。経済産業省は同日、業界団体を通じて所有者に応急的な補修を要請した[2]。
熊本地震で煙突が倒壊、全国調査へ
発端は、2026年7月28日に発生した熊本地震だ[2]。日本製紙八代工場の自家用火力発電設備の煙突が倒壊し、人的被害を伴う重大な事故となった[2]。
これを受けて国交省は、関係省庁を通じて、高さ60メートルを超える鉄筋コンクリート造の煙突を持つ事業所などに調査を依頼した[1]。ごみ焼却施設や製鉄所、製紙・セメント工場、発電所、下水処理場など、大型の煙突を持つ幅広い業種が対象になった[1]。
煙突の損傷・劣化、業種と地域の内訳
調査結果の全体像は次のとおり[3]。
- 対象の煙突:444本
- 損傷・劣化あり:180本(うち対策予定あり120本、対策予定なし60本)
- 損傷・劣化なし:256本
- 事業者が点検の実施に向けて調整中:8本
- 補強済み:183本、補強なし:261本
業種別に見ると、損傷・劣化が見つかった割合は業種によって大きく異なる[3]。
| 業種 | 煙突数 | 損傷・劣化あり | 割合(計算値) |
|---|---|---|---|
| 廃棄物処理 | 128 | 24 | 約19% |
| 製鉄 | 87 | 31 | 約36% |
| 製紙 | 61 | 36 | 約59% |
| 化学 | 56 | 25 | 約45% |
| セメント製造 | 44 | 29 | 約66% |
| 電気 | 30 | 13 | 約43% |
本数が最も多い廃棄物処理は損傷・劣化の割合が2割弱にとどまる一方、セメント製造は約3分の2、製紙は約6割に上った[3]。都道府県別では北海道(36本中21本)、兵庫県(35本中20本)、山口県(38本中16本)などで損傷・劣化の確認数が多かった[3]。
ひび割れの充填や頂部の切除、示された補修方法
国交省は、損傷・劣化が見つかった煙突の応急的な補修方法も示した[4]。主な例は次のとおりだ[4]。
- ひび割れ:溝を掘ってエポキシ系樹脂などを充填し、ひび割れが多い場合は耐食処理した補強バンドで締め付ける
- 鉄筋のさびや中性化:耐酸性・耐熱性の高いセメントモルタルを塗る
- 内側の保護材:付着した硫酸分を水を使わずに清掃してから補修し、腐食が激しければ取り替える
- 頂部の腐食が激しい場合:頂部を切除し、元の高さまでステンレス鋼の煙突を設置する
経産省は同日、電力安全課や製造産業局などの連名で、損傷・劣化が確認された煙突の所有者・管理者に、この方法を参考に応急的な補修を講じるよう要請した[5]。取り組みの状況は今後フォローアップするとしている[2]。国交省も、建築確認などを担う特定行政庁に補修方法を周知し、事業者からの相談に応じて指導するよう求める[1]。
「対策予定なし」60本の扱い
今回の数字で目を引くのは、損傷・劣化があると分かった180本のうち、3分の1にあたる60本で事業者が「対策予定なし」と答えている点だ[3]。補強済みの煙突も全体の4割ほどにとどまる[3]。
今回の要請は応急的な補修を求めるもので、期限は示されていない[5]。熊本地震の被災地では、事業者の再建を支える最大50億円の復興ファンドの設立も決まり、地震後の対応は復旧から再発防止へと広がっている。各省のフォローアップで、60本の扱いと補修の進み具合がどこまで明らかにされるかが、同じ事故を防げるかどうかを左右しそうだ。
脚注
- 国土交通省「令和8年熊本地震による被害を踏まえた煙突に関する調査結果を公表します」(2026年10月23日) https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_001163.html
- 経済産業省「国土交通省による煙突調査を踏まえた応急的な補修の要請について」(2026年10月23日) https://www.meti.go.jp/press/2026/10/20261023003.html
- 国土交通省「都道府県別・業種別煙突数」(別紙1、2026年10月23日) https://www.mlit.go.jp/report/press/content/002028119.pdf
- 国土交通省「損傷・劣化が確認された煙突の応急的な補修の実施方法」(別紙2、2026年10月23日) https://www.mlit.go.jp/report/press/content/002027973.pdf
- 経済産業省「損傷及び劣化が確認された煙突に対する応急的な補修について(要請)」(2026年10月23日) https://www.meti.go.jp/files/000006632.pdf

