生活保護費の減額、最高裁が再び違法 4訴訟で原告勝訴

2013年から15年にかけて国が行った生活保護費の引き下げをめぐる訴訟で、最高裁判所第三小法廷(林道晴裁判長)は2026年10月23日、秋田、兵庫、佐賀、熊本の4件の訴訟について、減額は生活保護法に違反し違法とする判決を言い渡した[1][2][3][4]。いずれも裁判官全員一致の判断だった[1]。

秋田、兵庫、佐賀の3件は高裁で受給者側が敗訴していたが、最高裁は高裁判決を破棄し、自治体が出した保護費の減額決定を取り消した[1][2][3]。熊本の訴訟では、一審で勝訴した受給者側の判決が確定する形となった[4]。

生活保護の減額、最高裁が違法とした理由

判決文によると、国は2013年から3年かけて生活扶助の基準を改定した[1]。改定は、年齢や世帯人数、地域による基準の差を見直す「ゆがみ調整」と、物価の動きを反映する「デフレ調整」の二つからなり、減額幅の上限は10%とされた[1]。

このうちデフレ調整は、生活扶助で賄う品目に絞って計算し直した消費者物価指数の、2008年から2011年までの下落率(4.78%)をもとに、基準生活費を一律に4.78%減らすものだった[1]。

最高裁は、生活扶助の基準はそれまで一般世帯の消費の水準との均衡をみて改定されてきたと指摘した。そのうえで、物価変動率だけを直接の指標として基準を改定したことは、専門家による審議検討を経ておらず、専門的知見との整合性を欠くと判断した[1]。厚生労働大臣の判断の過程と手続には「過誤、欠落があった」として、裁量権の範囲を逸脱・濫用したと結論づけた[1]。

2025年6月の判決に続く判断

最高裁は2025年6月27日にも、同じ改定をめぐる別の訴訟で、デフレ調整に係る大臣の判断には過誤、欠落があったとして違法と判断していた[5]。今回の4件の判決も、同じ論理で受給者側の主張を認めた形だ。

4件の原告が住む地域と結論は次のとおり[1][2][3][4]。

  • 秋田(原審・仙台高裁秋田支部):高裁判決を破棄し、減額決定を取り消し
  • 兵庫:高裁判決を破棄し、減額決定を取り消し
  • 佐賀:高裁判決を破棄し、減額決定を取り消し
  • 熊本:高裁判決を破棄し、自治体側の控訴を棄却(一審判決が確定)

国はすでに差額の追加給付を開始

厚生労働省は2025年6月の判決を受け、専門家による委員会での議論を経て、同年11月21日に対応の方向性を公表した[5]。デフレ調整の改定率(マイナス4.78%)を、一般世帯の消費実態をもとに算定し直した「高さ調整」の改定率(マイナス2.49%)に置き換え、その差額を追加で給付する内容だ[5]。

追加給付は原告とそれ以外を区別せずに行い、現在保護を受けている世帯には2026年3月から自治体の準備が整い次第、順次支給されている[5]。原告には、減額がなかった場合(マイナス0%)との差額を特別給付金として上乗せする[5]。保護をすでに受けていない世帯は、当時保護を受けていた自治体に申し出る必要がある[5]。

「やり直し」の減額をどう評価するか

国の追加給付は、デフレ調整を取り消したうえで、別の方法で改めて2.49%の減額を行った形になっている[5]。原告側は減額そのものの取り消しを求めてきたため、全額の回復ではない点に不満が残る。今回の判決は、減額の手法を違法とする判断を最高裁が重ねて示したもので、同じ改定を争う訴訟の判断はこの枠組みに沿うことになる。

生活保護の基準は、最低賃金や就学援助など他の制度の目安にも使われる。基準を下げるときに、専門家の検討を経ずに一つの指標だけで決めた手続きが2度にわたって否定された意味は重い。次の基準見直しで、厚労省がどのような検証を経て改定率を決めるかが、制度への信頼を左右するだろう。

脚注

  1. 最高裁判所第三小法廷「令和6年(行ヒ)第339号 生活保護引下げ処分取消請求事件」判決(2026年10月23日、秋田) https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-97204.pdf
  2. 最高裁判所第三小法廷 判決(2026年10月23日、兵庫) https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-97206.pdf
  3. 最高裁判所第三小法廷 判決(2026年10月23日、佐賀) https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-97205.pdf
  4. 最高裁判所第三小法廷 判決(2026年10月23日、熊本) https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-97208.pdf
  5. 厚生労働省「平成25年生活扶助基準改定に関する最高裁判決への対応について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_68902.html
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